新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広がり、各地で独自の変異を繰り返した結果、世界中から様々な変異株が報告されています。現在新型コロナウイルスの遺伝子情報は主にGISAID Initiativeに登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも自由に利用することが可能となっています。
この表は2024年10月1日から2024年11月30日の間における各国のゲノム登録数の多い順になっています。流行中の亜型について最も多いものから順にそれぞれ主系統、第2系統、第3系統として掲載しました。 各国の新型コロナウイルスの流行状況を比較する事はできませんが、各国で流行している変異株の動向の、より精度の高い情報提供を行いたいと思います。(covSPECTRUMのデータによる)
・東京都は5月8日より定点医療機関当たりの患者報告数になりました。 (東京都感染症週報、東京都新型コロナウイルス感染症情報) ・ 東京都の変異株サーベイランス(ゲノム解析)東京都新型コロナウイルス感染症情報より 関連資料 ・最新の新型コロナウイルスの研究成果を含む2023年研究年報が先行公開されています。 ・2023年1月東京都のJN.1を含む新型コロナウイルスの全ゲノム解析結果(2月22日更新) ・当所における新型コロナウイルス変異株の検査体制について(BQ.1.1,XBB等への対応) ・新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (オミクロン株の電子顕微鏡写真追加) ・VeroE6/TMPRSS2細胞を使用したデルタ株の分離培養について ・主な亜系統の一覧表(BA.2.75、XBB等)更に下表に示した様にBA.2.86.1にはJN、BA.2.86.3にはJQと命名された子孫株が認定されました。赤字で記載されている系統は、3月1日以降に追加認定された系統です。
1) https://github.com/cov-lineages/pango-designation/blob/master/lineage_notes.txt Daniele Focosi博士のTwitterより世界規模の流行に伴い新型コロナウイルスの変異株の種類が増加し、病原性、感染性、ワクチンおよび治療法の効果等の観点から、VOC(懸念される変異株)、VOI(注目すべき変異株)、VUM(監視中の変異株)等のクラス分けが行われてきましたが、2023年3月15日WHO(世界保健機構)は声明を出し、オミクロン亜系統全てを独立した系統として評価し、VUM、VOI、またはVOCの指定対象としました。(変異株追跡ページ参照)
• 概要:JN.1は、2023年8月に初めて発見されたBA.2.86の子孫系統株で、2024年1月末までに94カ国で79107件のゲノム配列の報告があります。JN.1は現在、全世界で最も多く流行している変異株で、高い免疫回避の能力を持つと考えられています。
• リスク評価:JN.1による感染が急速に増加していますが、重症化のリスクが高い事を証明する報告はありません。現在の集団免疫やXBB.1.5によるブースター接種による免疫は、JN.1に対しても有効であると予想されています。
• 対策:WHOとその技術顧問グループは、JN.1の抗体回避や重症化に関する未知の危険を回避するために、各国に感染防御を優先的に実施することを推奨しています。また、JN.1の影響を考慮して、COVID-19ワクチンの組成を更新する必要があるかどうかを定期的に評価しています。
*BA.2.86は8月17日の指定時点で3株が確認されただけでしたが、30か所を超えるスパイク変異を持つ事を重く捉え今後の動向を注視する必要があると判断され監視対象(VUM)に認定されました。9月21日にはGISAIDには9か国から38株が登録されています。検出地域は、南アフリカ19株、デンマーク2株、イスラエル3株、英国3株、米国2株、カナダ1株、フランス2株、タイ5株、ルクセンブルク1株となっています。離れた地域から検出されており未だ疫学的関連性が不明である事、変異部位の多さによる免疫回避能力の点から今後の動向が注目されていましたが、11月21日にVOIに更新されました。
XBB.1.9.2の子孫株であるEG.5(XBB.1.9.2.5)系統の世界的流行に注目が集まっています。実際に流行しているのはEG.5.1で、これはEG.5遺伝子のS領域の52番目のアミノ酸であるグルタミンがヒスチジンに変異した系統です。(S:Q52H)
また新たにEG.5.1の遺伝子のorf1b部位の54番目のアミノ酸であるフェニルアラニンがアスパラギンに置換(orf1b:D54N)されたEG.5.1.1系統が6月に認定されています。covSPECTRUM
*6月21日に EG.5.1.1が定義されていましたがその後も様々な亜型が発見され、また系統名の数字が3桁を超えた場合、名前(アルファベット)を付け直すというパンゴ命名規則よってHK、JG、JJ、HVなどの子孫系統が生まれています。現在HV.1はこの1か月の間に世界で一番多く検出されている遺伝子型です。
cov-lineages/pango-designationのデータにより作成
今年に入ってからコロナウイルス患者は減少傾向にありました。日本でも入院患者数は減少し続けていましたが、現在も減少傾向にあります。
*ジョンホプキンス大学で行われていた世界の新型コロナウイルス患者の集計が3月で終了する事を受けてOur World in Data はWHOのデータに基づいた集計を行います。
出典:ourworldindata.org/covid-cases・2021年11月24日:新型コロナウイルス変異株の命名組織の一つであるパンゴ委員会はトーマス・ピーコック博士による提案#343「南アフリカに関連するスパイク蛋白変異を有するB.1.1系統株」について検討した結果、この株をB.1.1.529と命名し、同日WHOはこの株をVUM(監視中の変異株)に指定しました。
・11月26日:WHOはB.1.1.529株をVOC(懸念される変異株)に再指定しオミクロンと命名。
・12月7日:にパンゴ委員会に提案された「新たに特性解析された兄弟系統を組み込むためのB.1.1 .529の分割案#361」により亜型BA.1・BA.2が指定されました。
・12月9日:PangoNetworkに公開された「オミクロン系統B.1.1.529の更新」により、パンゴ委員会が世界中から集められたオミクロンと思われる遺伝子の解析結果から、これらに共通する先祖株をB.1.1.529系統と定め、子孫系統にあたるWHOのオミクロンに指定された系統を BA.1、それ以外の集団をBA.2と再定義しました。
参考:当所における新型コロナウイルス変異株の検査について(BA.2系統への対応)
・12月12日:提案された「B.1.1.529(オミクロン関連)の3番目の亜系統#367」について審議し、12月14日にBA.1にもBA.2にも当てはまらない株としてBA.3が定義されました。
・12月16日:パンゴ委員会、CDCではB.1.1.529と全てのBA系統(BA.1、BA.2、BA.3)を含めてオミクロン株とし、WHOもVOC指定株については全て子孫系統までを指定対象として定義しました。
・2022年1月8日:パンゴ委員会に提案された「潜在的に有益な突然変異を伴うオミクロン亜系統S:346K #360」により、アミノ酸変異S:R346Kを指標とする亜系統B.1.1が追加されました。
・2022年9月18日:提案された「S1領域に組換部位を持つBJ.1/BM.1.1.1 組換え株」について審議され、これはXBBとして定義されました。
以降の系統の認定情報についてはpango-designation/releases をご覧ください。