世界の新型コロナウイルス変異株流行状況(6月1日更新)

 新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広がり、各地で独自の変異を繰り返した結果、世界中から様々な変異株が報告されています。現在新型コロナウイルの遺伝子情報はGISAID Initiativeに登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも利用することが可能となっています。

 この表はGISAIDのデータを共有して多角的な疫学解析レポートの自動作成機能を行うOutbreak infoLocation Trackerによって公開されている国別の登録シーケンス数、過去約30~60日間の変異株検出データと、世界規模の情報公開サイトOur World in Dataより各国患者報告数の7日間移動平均値を参照して作成しました。また、補足データとしてSARS-CoV-2-InternationalcovSPECTRUMデータを参照しています。

表の並びは2023年5月21日における各国の一日当たりの新規患者報告数の多い順になっています。以前はVOC(懸念すべき変異株)の情報を記載していましたが、流行株のほとんどがオミクロン株になったためPango命名法に基づくオミクロン株のSublineages(亜型)とその元になる親系統を併記しています。 

 一週間の陽性患者数の数字の前の▲は減少を表しています。患者データの提出が遅れている国は、最近の患者発生数に集計日を併記しています。最近、患者報告を週に一度とする国も増えているため、報告が揃うのに時間を要するため集計日が遅れています。

・各国の流行型は直近約30日間に登録のあった中で一番多い亜型を記載しています。一般的に新たに出現した変異株の解析を最優先して行う傾向があるため、時期によっては必ずしもその国の流行株を表しているとは限らない事にご留意下さい。 

・東京都は5月8日より患者数の集計が週毎に変更され、集計方法が定点医療機関当たりの患者報告数となった事を受けて集計表を別に設けました。(東京都感染症週報

流行株とゲノム解析報告総数は Outbreak.info による

参考(XBB株における再附番系統名表)         (全XBB系統変異株表はこちら

関連資料
・新型コロナウイルス論文を含む研究年報第73号(2022)の一部が先行公開されしました
当所における新型コロナウイルス変異株の検査体制について(BQ.1.1,XBB等への対応)
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 オミクロン株の電子顕微鏡写真追加
VeroE6/TMPRSS2細胞を使用したデルタ株の分離培養について

5月21日付でWHOが変異株のリスク評価が更新されました

 世界規模の流行に伴い新型コロナウイルスの変異株の種類が増加し、病原性、感染性、ワクチンおよび治療法の効果等の観点から、VOC(懸念される変異株)、VOI(注目すべき変異株)、VUM(監視中の変異株)等のクラス分けが行われてきましたが、2022年2月以は降報告される新型コロナウイルスゲノムのほぼ100%をオミクロン株が占めるに至り、従来のシステムではすべてのオミクロン亜系をオミクロン株の一部として分類していたため、進化したオミクロンの子孫系統を親系統と分類する事は難しくなりました

2023年3月15日WHO(世界保健機構)は声明を出し、WHOの変異株定義を変更してオミクロン亜系統全てを独立した系統として評価し、VUM、VOI、またはVOCの指定対象としました。

この声明によってVOCとVOIの定義はより具体的なものなり、公衆衛生上の介入が必要な新亜系統の発生を迅速に検知できるようなりました。更新された定義については、WHOの変異株追跡ページをご覧ください。

今後、WHOはVOCにはギリシャ語のラベルを付与しますが、VOIには付与していません。現在はXBB.1.5とXBB.1.16がVOIに分類されています。現在VOCに該当する系統は指定されていませんが、WHO は、VOI と VOC の両方の定期的なリスク評価も引き続き行う事としています。 ( XBB.1.5 の最新のリスク評価XBB.1.16のリスク評価4月17日

監視中のオミクロン亜系統 2023年5月17日更新 (XBB.2.3の追加

 オミクロン株は現在も変異を続け、異なる変異を持つ子孫系統(亜型)を増やしており、その中の特定の系統が公衆衛生上のリスクを獲得する可能性も考えられます。その様な事態にに対応するため監視中のオミクロン亜系統(VUM)というカテゴリを追加し、下記の亜型を指定しました。しかし、従来の系統は、「その系統および全ての子孫系統を含む」とされていたため、実際の監視対象の範囲が不明瞭になってしまう問題がありました。

 2023年3月15日に公開されたVUMの定義から、パンゴ系統名や遺伝的特徴が明瞭に記載された理解しやすいものとなり、2023年3月30日以降はXBB.1.9.1、XBB.1.92が追加されました。5月8日版ではXBFが削除され、5月17日版にはXBB.2.3が追加されています。

新たに命名された監視中のオミクロン亜系統表(VUM) 6/1更新

 オミクロン株は現在更に多くの子孫系統に分枝し、新たな名称が与えられる系統が出てきました。これは、「系統を表す小数点が3桁を超えると新しいアルファベットが接頭詞として再附番される」というPango系統の命名規則によるものです。BL,CA,CJ系統はBA.2.75のBK,BF,BQの系統は全てBA.5系統のそれぞれ5.1.1、5.2.1、5.3.1の子孫系統となります。 下の表はWHOの指定する監視中のオミクロン亜系統(Omicron subvariants under monitoring)に指定されたものについて再附番された系統を表示しています。表示を見やすくするために附番された系統名のみ表示し、新たに指定されたものは赤字で示してあります。(全ての監視下の亜系統の表) ちなみに、現在オミクロン株で使用されているBA等の系統名もB.1.1.529から再附番されたもので、BA2B.1.1.529.2BA.5B.1.1.529.5から再附番された名称です

XBBと組換え系統

 「X」で始まる名前は遺伝子組換えによって発生した系統に付ける事がPango系統の命名規則の命名規則に定められており、このことからBJ.1/BM.1.1.1の組換え株にXBBの名前が付けられました。 下の図はXBBウイルスの遺伝子構造を図示したものですが、スパイク領域で2種類のウイルスの組換えが起きています。
XBB1.5は、XBB系統のSpike領域の486番目にあるアミノ酸、フェニルアラニンがプロリンに変化する変異(S:F486P変異)を持つ系統です。元々免疫回避能力が高いとされるXBB系統に感染力が高くなるとされるこの変異が加わることで現在世界的な流行が起こっています。
 XBBの子孫系統が命名されましたがPango命名規則により接頭語にXが付いていませんEMEKELEG系統がそれに当たりますが組み換え系統XBBとしての特徴を維持していると考えられます。
 
・【参考】監視下の亜系統株の命名関係表 (2023年4月14日更新) 
・ pango-designation/lineage_notes.txt

  世界のオミクロン変異株と亜系統の発生状況について

 世界で流行する新型コロナウイルスの99%以上がオミクロン株となりました。しかしオミクロン株にも様々な亜型が存在しそれらが出現と消滅を繰り返しながら現在も流行を続けています。

 近年では世界の多くの国で広くワクチン接種が行われていることから、ウイルスの感染力だけでなく免疫回避能力(ワクチン効果減弱)の高さが流行の重要なファクターなると考えられ、表面抗原の一種Sタンパク上の変異に注目が集まっています。

2022年の4月以降S蛋白のL452部位の遺伝子変異を持つ亜型が増加し特に同部位がL→Rに変化したBA.5,とその子孫株は現在280を超える亜系統が登録され、その数は今も増加しており動向が注目されています。 WHOではBA.5の亜系統を含む6つの亜系統を監視中のVOC亜系統(VOC-LUM)と指定し、各国に注意と監視を呼びかけています。(下記、変異株の分類の変更について参照

 最近報告される新系統は、様々な系統に属する既存のウイルスがS蛋白上のL452、R346、F486、N460、K444部位の変異を取り込む事が多く、これらの変異によるウイルスの免疫回避能力(ワクチン効果減弱)の増加が旧系統との置換や新たな流行の一因となる事が示唆されています。

Daniele Focosi, MD, PhD, の Twitterより 
 

世界の新型コロナウイルスの流行状況について

年末から特に欧州,北米を中心に新型コロナウイルス患者が急増しました。この今までの流行株では見られない程の急激な患者数の増加はオミクロン株によるものでした。この世界的流行は7月22日をピークに減少を続けてていましたが、ヨーロッパ圏では9月から10月上旬増加を続けましたが、それ以降減少に転じました。しかし、中国におい12月26日をピークとする大規模な感染爆発が見られましたが、現在では世界的な減少傾向が続いています。

*ジョンホプキンス大学で行われていた世界の新型コロナウイルス患者の集計が3月で終了する事を受けてOur World in Data WHOのデータに基づいた集計を行います。

 出典:ourworldindata.org/covid-cases

コロナウイルスによる死亡者数の変遷を表すグラフです。患者数の増加により世界における死亡者数も大幅な増加が見られましたが、2022年2月10日をピークに世界的な減少傾向が続いていました。しかし8月の流行期を終えた後、年末に向けて世界的に死者数は増加傾向にありましたが、中国の報告による大きなピークの後は減少傾向にあります。

出典: ourworldindata

 

オミクロン株の最初の発見と認定について

11月24日:新型コロナウイルス変異株の命名組織の一つであるパンゴ委員会トーマス・ピーコック博士による提案#343「南アフリカに関連するスパイク蛋白変異を有するB.1.1系統株」について検討した結果、この株をB.1.1.529と命名し、同日WHOはこの株をVUM(監視中の変異株)に指定しました。

11月26日:WHOはB.1.1.529株をVOC(懸念される変異株)に再指定オミクロンと命名。

12月7日:にパンゴ委員会に提案された「新たに特性解析された兄弟系統を組み込むためのB.1.1 .529の分割案#361」により亜型BA.1・BA.2が指定されました。

12月9日PangoNetworkに公開された「オミクロン系統B.1.1.529の更新」により、パンゴ委員会が世界中から集められたオミクロンと思われる遺伝子の解析結果から、これらに共通する先祖株をB.1.1.529系統と定め、子孫系統にあたるWHOのオミクロンに指定された系統を BA.1、それ以外の集団をBA.2と再定義しました。

参考:当所における新型コロナウイルス変異株の検査について(BA.2系統への対応)

12月12日:提案された「B.1.1.529(オミクロン関連)の3番目の亜系統#367」について審議し、12月14日にBA.1にもBA.2にも当てはまらない株としてBA.3が定義されました。

12月16日パンゴ委員会、CDCではB.1.1.529と全てのBA系統(BA.1、BA.2、BA.3)を含めてオミクロン株とし、WHOもVOC指定株については全て子孫系統までを指定対象として定義しました。

1月8日:パンゴ委員会に提案された「潜在的に有益な突然変異を伴うオミクロン亜系統S:346K #360」により、アミノ酸変異S:R346Kを指標とする亜系統B.1.1が追加されました。

2月17日パンゴ-指定 v1.2.128によりBA.1に新たに以下の系統が新たに追加されることが発表されました。これらの系統は各国の研究者から出された提案によって決定されたものではないことから、これらはデルタ株におけるAY系統の様に様々な地域流行やクラスターを監視するためにパンゴ命名委員会が現在の株を細分化して監視するために設けたカテゴリーと思われます。

 ・ BA.1.2 と61種類の指定配列を追加   (マヨットとレユニオンの系統)
 ・ BA.1.3 と198種類の指定配列を追加    (カナダ系統)
 ・ BA.1.4 と183種類の指定配列を追加    (フランス系統)
 ・ BA.1.5 と191種類の指定配列を追加    (イギリス系統)
 ・ BA.1.6 と253種類の指定配列を追加   (カナダおよびシントマールテン系統)
 ・ BA.1.7 と473種類の指定配列を追加    (イギリス系統)
 ・ BA.1.8 と356種類の指定配列を追加    (ヨーロッパ系統)
 ・ BA.1.9 と309種類の指定配列を追加    (ブラジル系統)
 ・ BA.1.10 と1252種類の指定配列を追加  (イギリス系統)
 ・ BA.1.11 と0種類の指定配列を追加     (系統再割当ての為廃番)
 ・ BA.1.12 と1862種類の指定配列を追加  (イギリス系統)
 ・ BA.1.13 と1522種類の指定配列を追加  (ヨーロッパ系統)
 ・ BA.1.13.1 と1536種類の指定配列を追加 (インドネシア系統)
 ・ BA.1.14 と4539種類の指定配列を追加  (ブラジルおよびその他の国の系統)
 ・ BA.1.15 と35942種類の指定配列を追加 (アメリカおよびその他の国の系統)
 ・ BA.1.15.1 と20043種類の指定配列を追加(イギリス系統)

2月23日パンゴ指定v1.2.130によりBA.1に新たに下記の系統が追加されました。

 ・BA.1.16と7687の指定配列    (イギリス系統)
 ・BA.1.16.1と63の指定配      (タイ、インドネシア、カンボジア系統)
 ・BA.1.17と8434指定配列     (ヨーロッパ系統)
 ・BA.1.17.1と309の指定配列   (オーストリア系統)
 ・BA.1.1.1と6023指定配列    (ヨーロッパ系統)
 ・BC.1と1000の指定配列     (指定v1.2.131にて削除
 ・BA.1.1.2と6244の指定配列   (日本系統
 ・BA.1.1.3と291の指定配列     (スイス系統)
 ・BA.1.1.4と791の指定配列     (イギリス系統)
 ・BA.1.1.5と106の指定配列     (韓国系統)
 ・BA.1.1.6と352の指定配列     (カナダ系統)
 ・BA.1.1.7と233の指定配列     (インドとその他の国の系統)
 ・BA.1.1.8と381の指定配列     (米国系統)
 ・BA.1.1.9と228の指定配列     (ニュージーランド系統)
 ・BA.1.1.10と1146の指定配列   (カナダ系統)
 ・BA.1.1.11と1990の指定配列   (ヨーロッパ系統)
 ・BA.1.1.12と1929の指定配列   (イギリス系統)
 ・BA.1.1.13と4146の新指定配列  (イギリス系統)
 ・BA.1.1.14と6395指定配列      (ヨーロッパ系統)
 ・BA.1.1.15と6343の指定配列   (ヨーロッパ、オーストラリア系統)
 ・BA.1.1.16と1020の指定配列   (カナダ、アメリカ系統)

・2月26日パンゴ指定1.2.131により下記の系統が追加されました

 ・BA.2.1と532の指定配列    (イギリス系統)
 ・BA.2.2と68の指定配列     (香港系統#430
 ・BA.2.3と1938年の指定配列   (フィリピンとその他の国の系統)

以降の約2000系統の認定情報についてはpango-designation/releases をご覧ください。

新たに認定される系統株に対する各集計サイトの対応には時間差がかかります。

東京都環境放射線測定サイト東京都感染症情報センター東京都健康安全研究センターサイト
〒169-0073
東京都新宿区百人町3丁目24番1号
tel. 03-3363-3231
e-mail. tmiph<at>section.metro.tokyo.jp
※<at>を@に置き換えてメールをお送りください。問い合わせ先の詳細については、こちらをご覧ください。
本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2023 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.