世界の新型コロナウイルス変異株流行状況 ( データの更新:3月27日 )

 新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広がり、各地で独自の変異を繰り返した結果、世界中から様々な変異株が報告されています。現在新型コロナウイルスの遺伝子情報は主にGISAID Initiativeに登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも自由に利用することが可能となっています。

 この表は2024年1月20日から2024年2月20日の間における各国のゲノム登録数の多い順になっています。流行中の亜型について最も多いものから順にそれぞれ主系統、第2系統、第3系統として掲載しました。 各国の新型コロナウイルスの流行状況を比較する事はできませんが、各国で流行している変異株の動向の、より精度の高い情報提供を行いたいと思います。covSPECTRUMのデータによる)

・東京都は5月8日より定点医療機関当たりの患者報告数になりました。(東京都感染症週報
 
  
      covSPECTRUMのデータを基に集計            国毎入院患者Our World in Dataより転載
 
・ 東京都の変異株サーベイランス(速報)*最新のモニタリング項目の分析についてより
*:この速報値は全ゲノム解析によるものではなく変異株スクリーニング法によるものです
 
関連資料
最新の新型コロナウイルスの研究成果を含む2023年研究年報先行公開されています。
2023年1月東京都のJN.1を含む新型コロナウイルスの全ゲノム解析結果2月22日更新
当所における新型コロナウイルス変異株の検査体制について(BQ.1.1,XBB等への対応)
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (オミクロン株の電子顕微鏡写真追加
VeroE6/TMPRSS2細胞を使用したデルタ株の分離培養について
主な亜系統の一覧表(BA.2.75、XBB等)
 

JN.1子孫株について(2月15日更新)

GISAIDのTracking of hCoV-19 VariantsにBA.2.86の世界の流行状況が更新されています。この系統は9月1日にGIT-Hub上のパンゴ命名会議室のRapid identification of BA.2.86 branches #2236に分類が指定されています。その後も子孫系統は増え現在BA.2.86.5まで登録されています。中でもJN.1系統は現在世界で急激に検出数が増加している系統で、BA.2.86のスパイク部分の455番目のアミノ酸がL(ロイシン)からS(セリン)に変化する事により、高い免疫回避能力を確保しているとの報告1)があります。また、JN.1系統から派生した組換株も報告されておりその動向が注目されています。

 更に下表に示した様にBA.2.86.1にはJN、BA.2.86.3にはJQと命名された子孫株が認定されました。赤字で記載されている系統は、3月1日以降に追加認定された系統です。

 1)Fast evolution of SARS-CoV-2 BA.2·86 to JN.1 under heavy immune pressure
     The Lancet Infectious Diseases Published Online December 15, 2023 
 Daniele Focosi博士のTwitterより
 

2月9日付で注目の亜系統(VOI) JN.1リスク評価が更新されました

 世界規模の流行に伴い新型コロナウイルスの変異株の種類が増加し、病原性、感染性、ワクチンおよび治療法の効果等の観点から、VOC(懸念される変異株)、VOI(注目すべき変異株)、VUM(監視中の変異株)等のクラス分けが行われてきましたが、2023年3月15日WHO(世界保健機構)は声明を出し、オミクロン亜系統全てを独立した系統として評価し、VUM、VOI、またはVOCの指定対象としました。(変異株追跡ページ参照)

2月9日に更新されたJN.1に関する最新のWHOのリスク評価報告書の概要は以下の通りです。

概要:JN.1は、2023年8月に初めて発見されたBA.2.86の子孫系統株で、2024年1月末までに94カ国で79107件のゲノム配列の報告があります。JN.1は現在、全世界で最も多く流行している変異株で、高い免疫回避の能力を持つと考えられています。

リスク評価:JN.1による感染が急速に増加していますが、重症化のリスクが高い事を証明する報告はありません。現在の集団免疫やXBB.1.5によるブースター接種による免疫は、JN.1に対しても有効であると予想されています。

対策:WHOとその技術顧問グループは、JN.1の抗体回避や重症化に関する未知の危険を回避するために、各国に感染防御を優先的に実施することを推奨しています。また、JN.1の影響を考慮して、COVID-19ワクチンの組成を更新する必要があるかどうかを定期的に評価しています。

 

BA.2.86株について

*BA.2.86は8月17日の指定時点で3株が確認されただけでしたが、30か所を超えるスパイク変異を持つ事を重く捉え今後の動向を注視する必要があると判断され監視対象(VUM)に認定されました。9月21日にはGISAIDには9か国から38株が登録されています。検出地域は、南アフリカ19株、デンマーク2株、イスラエル3株、英国3株、米国2株、カナダ1株、フランス2株、タイ5株、ルクセンブルク1株となっています。離れた地域から検出されており未だ疫学的関連性が不明である事、変異部位の多さによる免疫回避能力の点から今後の動向が注目されていましたが、11月21日にVOIに更新されました。 

VOIに指定されたEG.5系統の世界的流行とその系統株について(12月28日更新)

 XBB.1.9.2の子孫株であるEG.5(XBB.1.9.2.5)系統の世界的流行に注目が集まっています。実際に流行しているのはEG.5.1で、これはEG.5遺伝子のS領域の52番目のアミノ酸であるグルタミンがヒスチジンに変異した系統です。(S:Q52H)

 また新たにEG.5.1の遺伝子のorf1b部位の54番目のアミノ酸であるフェニルアラニンがアスパラギンに置換(orf1b:D54N)されたEG.5.1.1系統が6月に認定されています。covSPECTRUM

6月21日に EG.5.1.1が定義されていましたがその後も様々な亜型が発見され、また系統名の数字が3桁を超えた場合、名前(アルファベット)を付け直すというパンゴ命名規則よってHK、JG、JJ、HVなどの子孫系統が生まれています。現在HV.1はこの1か月の間に世界で一番多く検出されている遺伝子型です。

cov-lineages/pango-designationのデータにより作成

監視中のオミクロン(VUM)と系統名の再附番名称表 2/2更新

 オミクロン株は現在更に多くの子孫系統に分枝し、新たな名称が与えられる系統が出てきました。これは、「系統を表す小数点が3桁を超えると新しいアルファベットが接頭詞として再附番される」というPango系統の命名規則によるものです。
 
 下の表はWHOの指定する監視中のオミクロン亜系統に指定されたものについて再附番された系統を表示しています。表示を見やすくするために附番された系統名のみ表示し、新たに指定されたものは赤字で示してあります。(今までの監視下の亜系統の表
 ちなみに、現在オミクロン株で使用されているBA等の系統名もB.1.1.529から再附番されたもので、BA2はB.1.1.529.2、BA.5はB.1.1.529.5から再附番された名称です。
 
XBBと組換え系統
 「X」で始まる名前は遺伝子組換えによって発生した系統に付ける事がPango系統の命名規則に定められており、このことからBJ.1/BM.1.1.1の組換え株にXBBの名前が付けられました。下の図はXBBウイルスの遺伝子構造を図示したものですが、スパイク領域で2種類のウイルスの組換えが起きています。
*XBB1.5は、XBB系統のSpike領域の486番目にあるアミノ酸、フェニルアラニンがプロリンに変化する変異(S:F486P変異)を持つ系統です。元々免疫回避能力が高いとされるXBB系統に感染力が高くなるとされるこの変異が加わることで現在世界的な流行が起こっています。
 
 近年では世界の多くの国で広くワクチン接種が行われていることから、ウイルスの感染力だけでなく免疫回避能力(ワクチン効果減弱)の高さが流行の重要なファクターになると考えられ、表面抗原の一種Sタンパク上の変異に注目が集まっています。
 
・【参考】監視下の亜系統株の命名関係表 (2023年9月21日更新) 
・ pango-designation/lineage_notes.txt
 

世界の新型コロナウイルスの流行状況について(入院患者数より集計)

今年に入ってからコロナウイルス患者は減少傾向にありました。日本でも入院患者数は減少し続けていましたが、現在も減少傾向にあります。

*ジョンホプキンス大学で行われていた世界の新型コロナウイルス患者の集計が3月で終了する事を受けてOur World in Data WHOのデータに基づいた集計を行います。

 出典:ourworldindata.org/covid-cases
 

オミクロン株の最初の発見と認定について

2021年11月24日:新型コロナウイルス変異株の命名組織の一つであるパンゴ委員会トーマス・ピーコック博士による提案#343「南アフリカに関連するスパイク蛋白変異を有するB.1.1系統株」について検討した結果、この株をB.1.1.529と命名し、同日WHOはこの株をVUM(監視中の変異株)に指定しました。

11月26日:WHOはB.1.1.529株をVOC(懸念される変異株)に再指定オミクロンと命名。

12月7日:にパンゴ委員会に提案された「新たに特性解析された兄弟系統を組み込むためのB.1.1 .529の分割案#361」により亜型BA.1・BA.2が指定されました。

12月9日PangoNetworkに公開された「オミクロン系統B.1.1.529の更新」により、パンゴ委員会が世界中から集められたオミクロンと思われる遺伝子の解析結果から、これらに共通する先祖株をB.1.1.529系統と定め、子孫系統にあたるWHOのオミクロンに指定された系統を BA.1、それ以外の集団をBA.2と再定義しました。

参考:当所における新型コロナウイルス変異株の検査について(BA.2系統への対応)

12月12日:提案された「B.1.1.529(オミクロン関連)の3番目の亜系統#367」について審議し、12月14日にBA.1にもBA.2にも当てはまらない株としてBA.3が定義されました。

12月16日パンゴ委員会、CDCではB.1.1.529と全てのBA系統(BA.1、BA.2、BA.3)を含めてオミクロン株とし、WHOもVOC指定株については全て子孫系統までを指定対象として定義しました。

20221月8日:パンゴ委員会に提案された「潜在的に有益な突然変異を伴うオミクロン亜系統S:346K #360」により、アミノ酸変異S:R346Kを指標とする亜系統B.1.1が追加されました。

2022年9月18日:提案された「S1領域に組換部位を持つBJ.1/BM.1.1.1 組換え株」について審議され、これはXBBとして定義されました。

以降の系統の認定情報についてはpango-designation/releases をご覧ください。

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