当センターでは変異株サーベイランス検査と並行して次世代シーケンサー(NGS)による新型コロナウイルス遺伝子の全領域について遺伝子解析を行い、都内流行株の遺伝子性状の確認と新たな変異株の出現を監視をしています。
系統樹はウイルスの進化(変化)の流れを示すものです。下の系統樹は東京都内で検出された新型コロナウイルスの全遺伝子領域(約3000塩基)について解析を行い、得られた塩基配列を元に作成しています。ここに掲載されているのは2020年1月から2021年8月までに得られたデータから抜粋して集計したもので、都内で検出された株には「Tokyo+番号」が付けてあります。
各分類上のグループに付けられたB.〇.〇.〇等のPango命名法による付番には、PangoNetworkゲノム病原体監視センター(Centre for Genomic Pathogen Surveillance)の作成したWebPangolin(Phylogenetic Assignment of Named Global Outbreak LINeages)を使用し、系統樹は遺伝子解析ソフトウエアMEGAを使用して作成しました。
注:この分類番号は、新しい株の出現によって変更になることがあります。
総解析ゲノム数が500以上と大量であるため、一部の型については三角形(▲)で省略表示しております。▲型の詳細な系統樹をご覧になりたい方は以下のリンクをクリックしてご参照ください。
△ 系統樹全体表示 ▲B.1.1型(B.1.1.214 B.1.1.284)▲R.1型(E484K変異株)▲B.1.1.7(アルファ株)▲デルタ株(AY亜型を含む) ▲B.1.1.529(オミクロン型)
系統樹の大きな三角形B.1.1に含まれるB.1.1.284と、B.1.1.214 は国内における第2波、第3波に大きく関わっていた株で、日本由来の株とされています。また、2021年1月中旬頃からR.1(E484K単独変異株)が検出されましたが、6月以降は検出されていません。(当センターにおける新型コロナウイルス変異株のスクリーニング検査結果について)
デルタ株については2021年11月から150種類以上のAY型区分が導入されより細かい分類が行えるようになりました。この変更はデルタ株の感染と蔓延を追跡する為に規定されたもので、各型の感染症的な差異を表すものではありません。
変異株の中でもVOC(Variant of Concern:懸念の変種)に分類される株は国際的に警戒すべきウイルスとされおり、WHO(世界保健機構)によって、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株(AY亜型を含む)の4種に新たにオミクロン株(B.1.1.529と亜型のBA系統を含む)が指定され、都内でも12月下旬頃からBA.1.1型による患者数の著しい増加が続いています。
オミクロン株のBA.2亜型について一部で「PCR検査で検出できない」等の報道がある様ですが、これは外国の一部で用いられている遺伝子の欠損部分を検知するタイプのPCR検査系を用いた場合にのみ起きる現象で、当所を含めた国内の主なPCR検査においては問題なく感知することができます。
・当センターにおける新型コロナウイルス変異株スクリーニング検査結果
・世界の新型コロナウイルス変異株の発生状況(毎週更新)
・VeroE6/TMPRSS2細胞を使用したデルタ株の分離培養について
研究年報 第72号(2021) コロナウイルスの研究成果を先行公開中
・都内の新型コロナウイルス施設内感染事例における次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析 ・東京都内で分離された新型コロナウイルスの次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析 ・東京都で検出された新型コロナウイルス変異株の分子系統樹解析outbreak.info:Location Trackerより
*これらのデータはあくまでゲノム解析を行った結果について集計しているものであり、患者発生件数や検査陽性数とは統計的母数が異なることにご留意下さい。