ビル管理技術者が行うべき業務 – 建築物衛生のページ
令和3年4月19日更新
建築物環境衛生管理技術者の職務と役割
ビル管理技術者の職務は、「特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるように監督する」こと、言いかえれば、環境衛生上の維持管理に関する業務を全般的に監督することです。その職務の範囲には、特定建築物が管理基準に従って維持管理されているかどうかを監督することはもちろん、照明や騒音防止など、その他の環境衛生に関する事項の維持管理についても含まれます。
具体的には、次のようなことがあげられます。
維持管理業務計画の立案
- 年間または長期にわたる衛生的環境の確保のための総合計画
- 衛生的環境の確保に関する個別計画
- 空調設備の整備計画
- 給排水設備の整備計画
- 空気環境等の測定計画
- 水質検査実施計画
- 清掃及びゴミ処理の実施計画
- ねずみ衛生害虫の点検防除計画
- 設備、機器等の整備、改修に関する計画(必要経費の検討を含む)
- 現場技術者に対する講習会、研修会等の企画
維持管理業務の全般的実施
- 帳簿書類(年間管理計画、ビル管理日誌、機械運転の整備日誌等)の整備
- 計画に基づく施設管理、清掃、ゴミ処理、ねずみ、衛生害虫の点検等実施状況の監督
- 建築物の安全管理に関する確認
- 設備等の点検、整備担当者に対する技術指導
- 営繕工事の発注及び工事監督
環境衛生上の維持管理に関する測定または検査の実施とその評価
- 空気環境等の測定実施、データの評価と活用
- 換気量、換気回数、外気導入量、居室利用形態等の点検
- 給水栓末端の残留塩素濃度測定、水質基準に基づく水質検査の実施
- 空調、給排水、ボイラー等、各種機器の整備及び能力の検証
- 照明、騒音、その他の環境衛生上必要な調査の実施とその評価
- その他施設の総合的点検と問題点の把握
是正措置
- 帳簿書類の様式の改正及び記載方法の改善
- 居室利用形態の是正
- 室内空気環境や飲料水の水質などの問題点の改善
- 清掃、ゴミ処理等の処理方式の改善
- 設備・機器等の老朽化、能力低下への対応策の検討及び改善案の作成
- 所有者などに対する意見具申(改善案の提示)
上記のような職務がありますが、この職務を遂行するためにビル管理技術者は次のことを心がけておく必要があります。
- 技術管理の目標、範囲、管理基準等を常に正確に把握しておくこと
- 室内環境衛生に関連のある各種の環境要素の衛生的意義を理解しておくこと
- ビルの建築構造、機械設備の機能等を熟知しておくこと
- 管理基準の衛生学的な意義、測定機器の機能、測定結果に対する評価、結果に対する措置等に関する一連の知識を十分に心得ておくこと
建築物衛生管理技術者は日常管理等のデータを積み重ねながら、管理基準を遵守する自主管理体制を推進していかなくてはなりません。そして、所有者、管理者、使用者の三者による緊密な連絡調整をとりながら、必要に応じて利用者に対する衛生教育を行い、衛生的な環境の確保を図っていくことが仕事なのです。
建築物環境衛生管理技術者に求められる視点
建築物環境衛生管理技術者の職務と役割を理解した上で、管理技術者に求められる視点とは、環境衛生上の維持管理に関する測定または検査の実施とその評価です。
具体的には空気環境測定や水質検査、空調設備の管理、貯水槽・排水槽等の管理、清掃・ゴミ処理、ねずみ・衛生害虫の点検・防除等を実施し、それらのデータを評価することです。その結果、何らかの問題点があれば是正措置を講ずることになります。
東京都福祉保健局健康安全研究センター建築物監視指導課ビル衛生検査担当の立入検査における「帳簿書類等の審査」及び「設備の点検」の結果、指摘の多い項目について、視点(チェックポイント)を具体的に挙げました。
- 帳簿書類等の審査
- 年間管理計画
- 環境衛生上必要な項目が記載されているか。特に平成14年の政省令改正(平成15年4月施行)により追加された加湿装置、排水受け、冷却塔などの空気調和設備の点検・清掃、中央式給湯設備や雑用水設備の点検・清掃・水質検査などの項目を確認する。
- 計画に基づき進行管理を行っているか。
- 空調管理
- 空気環境の測定方法(概評、グラフ化、外気測定時間、粉じん計較正記録等)は適切か。
- 居室を代表する場所で在室時に測定を実施しているか。
- 機器の整備は十分か。外気の二酸化炭素濃度が300ppm以下であったり、冬期、加湿を行っていないのに相対湿度が40%以上になっていないか。
- 空気環境が常に不適な場所について、その原因を把握しているか。また、不適な場所の改善計画はあるか。
- 排水受け(ドレンパン)について、1月以内ごとに1回点検し、必要に応じて清掃を行っているか。
- 加湿装置について、使用開始時及び開始後、1月以内ごとに1回、点検を行っているか。また、1年以内ごとに1回、清掃を行っているか。
- 冷却塔について、使用開始時及び開始後、1月以内ごとに1回、点検を行っているか。また、1年以内ごとに1回、冷却塔及び冷却水管の清掃を行っているか。
- 飲料水(湯)管理
- 貯水(湯)槽清掃報告書について、清掃従事者全員の検便実施記録が添付されているか。清掃・消毒方法・簡易水質検査は適切に行われているか。(貯湯槽についても清掃記録を確認する。)
- 残留塩素等の検査を末端給水(湯)栓において、毎日(給湯は7日以内に1回)、始業前(10時頃まで)に行っているか。残留塩素濃度(給湯温度)は数値を記入しているか。
- 飲料水(中央式給湯を含む)の水質検査を系統ごとに実施しているか。
- 水質が不適であった場合の措置は適切か。
- 飲料水貯水槽等維持管理状況報告書を作成しているか。
- 雑用水
- 雑用水の水質検査(残留塩素等は7日以内に1回、大腸菌等は2月以内に1回)及び貯水槽等の点検・清掃を行っているか。
- 排水管理
- 排水槽の清掃を4月以内ごとに1回行い、記録を保存しているか。
- 排水槽ごとに槽内外及びポンプ、厨房グリース阻集器等の付帯設備を定期的に点検しているか。
- 清掃等
- ねずみ・こん虫等の防除
- 給湯室、厨房、排水槽、廃棄物保管場所等でねずみ・こん虫等の生息状況を毎月点検しているか。
- 薬剤による防除を行う場合には、医薬品、医薬部外品を使用しているか、また、使用場所ごとに薬剤名、使用濃度、使用量、使用方法を明記しているか。
- 防除後の適当な時期に効果判定を行っているか。
- 図面類
- 設備を更新した際に系統図、機器表等も更新されているか。
- 設備の点検
- 空調管理
- 排気口や冷却塔が、当該ビルや隣接ビルの外気取入口に悪影響を与えていないか。
- 空調機周囲または空調機械室が物置化していないか。
- フィルタやコイル、排水受け、加湿装置、冷却塔などは汚れていないか。
- 還気口や排気口を塞いでいないか。トイレや給湯室の排気は適正か。
- 厨房グリースフィルタは適正に機能しているか。フードなどが油まみれになっていないか。
- 空気環境測定(二酸化炭素、相対湿度等)結果は良好か。
- 飲料水(湯)管理
- 飲料水(湯)は、末端給水(湯)栓の残留塩素が基準値以上、または55℃以上に保持されているか。
- 貯水槽の上部に給水管以外の配管が設置されていないか。
- 貯水槽は安全に点検できるか。貯水槽の周囲の点検スペースが物置になっていないか。
- オーバーフロー管・通気管の防虫網は破損していないか。
- 貯水槽の吐水口空間・排水口空間が確保されているか。
- 飲用系から補給を受けている飲用以外の水槽(冷却塔、膨張水槽、消防用補助水槽、雑用水受水槽、消防水槽等)の吐水口空間は確保されているか。
- 地中埋設型散水栓が水没していないか。給水栓にゴムホースを付けたまま水の入ったバケツの中に放置していないか。
- 雑用水管理
- 使用用途は適正か。
- 誤飲防止対策は十分か。
- 残留塩素が基準値以上検出されるか。塩素消毒設備は設置されているか。
- 給水末端に検水栓は設置されているか。
- 排水管理
- 排水槽や湧水槽にチョウバエ、ユスリカなどが発生していないか。浮遊物(スカム)や悪臭の発生はないか。
- 厨房に3槽式以上の適正な機能(網かご、仕切り板、排水管)のグリース阻集器が設置されているか。厨房グリース阻集器の網かごと浮いた油脂は毎日、掃除しているか。詰まり、悪臭、浮遊物、沈殿物は著しくないか
- 清掃等・廃棄物等
- 廃棄物保管場所の他に再利用物保管場所も設置されているか。
- 廃棄物・再利用物(缶、ビン、ペットボトル)の保管状況は適切か。
- ねずみ・こん虫等の防除
- 厨房、食品庫、廃棄物・再利用物保管場所等は防虫・防そ構造になっているか。
- 食料品、食品庫の管理を衛生的に行っているか。