サル痘の世界的流行について
サル痘は4類感染症に指定される、ウイルス性の発疹性疾患。
これまでアフリカでの発生がほとんどであったが、2022年5月以降、欧米を中心にサル痘の感染が拡大している。
【以下、WHOにより発出されたFact sheet(Monkeypox 2022.5.19)の内容を抜粋】
病原体
- サル痘ウイルスは、ポックスウイルス科の二本鎖DNAウイルス。
- 遺伝子的に西アフリカ系統群とコンゴ盆地系統群の二系統に分かれ、コンゴ盆地系統群はより感染力が強く重篤になりやすい(今回の流行株は西アフリカ系群)。
自然宿主
- 正確なリザーバー(自然宿主)や感染環は未解明。
- 感受性を持つ動物種は、アフリカに生息するげっ歯類や霊長類など。
これまでのアウトブレイク事例
- 1970年のコンゴ民主共和国で初めてのヒト症例が確認された。
- 1970年以来、中央アフリカと西アフリカを中心に患者が発生していた。
- アフリカ以外で初めて感染が確認されたのは、2003年のアメリカ合衆国で、サル痘に感染したペットとの接触が原因と考えられた。
- 2022年5月には、複数の非流行国で症例が確認されている。
感染経路
動物からヒトへの感染:
- 感染動物の血液や体液、病変への接触感染。
- 感染動物の肉などの摂食も危険因子となる可能性がある。
ヒトからヒトへの感染:
- 飛沫感染、接触感染、垂直感染が考えられる。
- 性的感染が起こるかは現時点で不明。
症状
- 潜伏期:5~21日(通常は6~13日)。
- 症状は侵襲期と発疹期に分かれ、通常2~4週間で症状が治まる。
侵襲期:発熱、頭痛、リンパ節腫脹、背部痛、筋肉痛、無力感。
発疹期:発熱後1~3日以内に発疹が起こる。
- 発疹は体幹よりも顔面や四肢に集中する傾向にある。
- 合併症は、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜感染に伴う失明や二次感染など。
- 致死率は0~11%といわれており、近年では3~6%。(小児や免疫不全患者で重症化しやすい。)
診断
- 他の発疹性疾患(水痘、麻しん、細菌性皮膚感染症、疥癬、梅毒、薬物アレルギーなど)との鑑別が重要。
- サル痘は感染初期のリンパ節腫脹が特徴的で、水痘や痘そう(天然痘)との鑑別の材料となる。
- 皮膚病変を用いたPCRによる診断が最適な臨床検査法とされている。
治療薬・ワクチン
治療薬:
- 痘そうのために開発された抗ウイルス剤のテコビリマットが存在するが、広く流通していない。
ワクチン:
予防
①ヒトからヒトへの感染リスクを低減させる
- アウトブレイクを発生させないために、サーベイランスと症例の迅速な特定が重要。
- 感染リスクの高い医療従事者、家族は標準的な感染予防対策を行う。
- 2022年5月のサル痘クラスターは現時点で非定型的である。
→感染源の特定など詳細な調査が必要。
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(22)00228-6/fulltext
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7123e1.htm
https://www.gov.uk/guidance/de-isolation-and-discharge-of-monkeypox-infected-patients-interim-guidance
リンク集
国内のサイト
・厚生労働省 サル痘について
・国立感染症研究所 サル痘とは
・国立感染症研究所 病原体検出マニュアル「サル痘」第1版(令和4年6月)
・厚生労働省検疫所(FORTH)海外感染症発生情報
海外のサイト
・WHO サル痘 ファクトシート
・CDC(アメリカ疾病管理予防センター)サル痘
・ECDC(欧州疾病予防管理センター) サル痘