塗装工事中の室内やその周辺の空気には、塗料由来の化学物質が多く存在することが予想されるため、塗装作業中(事例1)と作業後(事例2)について、室内や周辺のVOC(揮発性有機化合物)濃度の実態調査を行った。
結論
1 塗料由来のVOCは、作業を行った室内だけでなく周辺にまで影響し、また、翌日にまで残ることが確認された。作業場所と放散期間について、十分に考慮する必要がある。
2 本調査の結果では、塗装後(事例2)より、塗装中(事例1)の方が、VOC濃度が低かった。その要因に、塗料の種類と換気条件があると推測された。
一般に、「水性塗料」を使用し、「換気条件を良くすること」で、VOC濃度は低くできる。
ただし、水性塗料に含まれるテキサノールや1-メチル-2-ピロリドンは健康被害との関連が疑われるため1)、添加されていない水性塗料を選ぶ必要がある。
事例1 塗装中の室内VOC濃度
塗装場所:室内(46m3)の壁(25.8m2) 塗料:水性塗料 換気:扉と窓2ヶ所を開放、機械換気無し 空気採取:塗装中に室内中央で採取 |
事例2 塗装後の周辺VOC濃度と経時変化
塗装場所:室内(18m3)の天井(7.5m2)と扉(5.9 m2) 塗料:ウレタン樹脂系塗料(結果から油性と推測) 換気:扉開放、換気口あり、機械換気あり 空気採取:塗装終了30分、4時間、23時間後に扉付近と周辺で採取 |
測定物質:塗料由来と考えられるVOC
(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、トリデカン、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、4-メチル-2-ペンタノン、2-プロパノール) 採取方法:サンプラーに室内空気を3〜4L、20〜35分間採取 分析:加熱脱着装置、ガスクロマトグラム/質量分析計で分析 |
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*1 実測値以外に、採取場所による濃度差から算出した推定値を含む *2 一般的に空気汚染の指標として使用される濃度値 |
参考文献:1)小林智、他:室内環境学会講演集、82-83、2007.