平成15年度講演会報告

ぜん息・アレルギーを抱える親子へのメッセージ ~こころとからだの両方から考える~

講師
 小田島 安平 氏 (昭和大学病院小児科 助教授)
 松嵜 くみ子 氏 (昭和大学病院小児科 臨床心理士)

日時・会場
 平成16年1月28日(水曜日)東京都児童会館 ホール

 

小田島先生の講演

 はじめに、小田島先生から、ぜん息という病気を理解するために、気管支の状態や治療の原則などの基礎知識をお話していただきました。

 ぜん息の場合の気管支は、上皮がはがれ落ちて炎症を起こしている状態。ここにいろいろな刺激が加わると、痰が出たり気管支がむくんで狭くなったりして、ゼーゼー、ヒューヒューする。

ぜん息の治療の基本は3本柱

 1. 環境整備
 2. 薬
 3. 鍛錬や腹式呼吸、理学療法

 今回の講演会では、ぜん息発作を起こさないようにするための環境整備に関することを中心に、症例や研究のスライドをもとに、お話がありました。
 また、寝室の掃除や寝具の管理と同様に、タバコの問題も重要であると強調されました。原則は禁煙、家族の誰かが吸うときは屋外で。換気扇の下でも、煙は動くものなので、発作の原因になります。
 ぜん息の人の9割がダニのアレルギーと言われています。対策のためにはまず敵(ダニ)を知ること!

 

ダニの好む条件

 1. 快適な温度とたっぷりの湿度
 2. 餌(私達が落とすフケや食べ物のカス、カビなど)
 3. すみか(ほこりなど)

 

寝具の管理のポイントは・・・

 布団を干すときは、干してすぐに軽くたたくことがポイント。たたくことで表面にダニを浮かせ、日光でそのダニを殺す。ひっくり返して両面を同様にする。そして最後に掃除機で表面のダニの死骸を吸うことが大事。布団に掃除機をかけるときは、専用ノズルを使うと良い。
 布団の丸洗いクリーニングは効果的。布団の素材は、洗濯しやすい化繊綿のものが良い。
 寝具に防ダニカバー、防ダニシーツを使うのも有効。

 最後に、ぜん息発作が起きたときは、外気を吸って腹式呼吸をして痰を出すこと、そしてあわてずに紅茶などを飲むと良い、とのお話がありました。

 

松嵜先生の講演

 次に松嵜先生から、アレルギーに関する心理面のお話をしていただきました

 まず、『アレルギーの病気はこころの問題』言われることがありますが、答えは『いいえ』です。
 ダニ・タバコ・食物・運動・天候・疲労・風邪など、アレルギー症状を起こす関連因子のほんの一部にすぎないということです。
 しかし、治療上、心理面のサポートが役立つことがあります。
 交感神経優位のとき = 何かに熱中しているとき、楽しいとき = アレルギーが起こりにくい
 副交感神経優位のとき = つまらないと感じているとき、どうせだめだと思っているとき = アレルギーが起こりやすい
 「またアレルギーが起こるかもしれない」という不安が、ぜん息発作を呼び起こす悪循環。対処能力を高めよう。
 例えば、腹式呼吸や水かぶりなどの心身の鍛錬で、少しくらいのアレルゲンなら反応しにくい体に。
 上手に医療にかかることも大事。
 『わかっているけどできないこと』を行動に移すコツは、子どもに命令・評価するのではなく、情報を与えて、自分で選ばせること、そしてちょっとした変化を自分で確認できるようにすること。
 「自分にできる!」という気持ちが高まると、セルフケアも順調に。このとき、具体的で実現可能な目標を立てることがコツ。

 

質問と回答

後半は、講師の先生方に、参加者のみなさんから事前にいただいた質問と、会場からの質問に答えていただきました  

 吸入ステロイド薬に関する最近の考え方や、食物アレルギーとぜん息との関連、アレルギーをもつ思春期の子どもへの対応など、途切れることなく、熱心な質問が寄せられました。

 

ぜん息・アレルギーを抱える親子へのメッセージ

最後にお二人の先生方から、ぜん息・アレルギーを抱える親子へのメッセージをいただきました  

小田島先生から…

 「ぜん息とのつきあいは山もあれば谷もあるが、必ず良くなるのでひとつずつステップを登っていってください」

松嵜先生から…

 「現状維持を目標に、余裕があれば新しいことをやってみるくらいで、がんばりすぎないでいきましょう」

 当日は193名の参加がありました。たくさんのご参加、ありがとうございました。

 

アンケートのご意見を一部紹介すると・・・

 「日常生活に活かせるアドバイスが多かったので、また参加したい」
 「子ども自身が治療の主体となるため、情報提供や自己決定の大切さが分かった」
 「質問コーナーでは、母親の立場に立った回答が聞けてうれしかった」
 「次回は薬のことを中心に聞きたい」 など

 

お問い合わせ

このページの担当は 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 環境情報係 です。

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