研究年報 第51号(2000) 和文要旨

*記載内容

 

タイトル
和文要旨
キーワード

 

Ⅰ 感染症等に関する調査研究

感染性胃腸炎患者における小型球形ウイルスの消長

 今回我々は病院内での小型球形ウイルス(SRSV)による集団感染例を経験し,SRSV感染患者5名(新生児4名及び1歳児1名)について3週間から1ヶ月半という長期間にわたり追跡調査を行うことができた.その結果,短くとも15日以上,長いものでは30日以上SRSVを排泄していた患者が確認され,長期間にわたりSRSV感染患者からウイルスが排泄されていることが明らかとなった.また,これらの患者は症状が消失した後でも感染源となりうる可能性が示唆された.
小型球形ウイルス,急性胃腸炎

  

都内におけるノーウォーク様ウイルスに起因した胃腸炎集団事例の発生状況(1997年11月〜2000年3月)
 1997年11月から2000年3月の間に都内において発生した胃腸炎集団発生413事例から得られた5,124件の材料についてノーウォーク様ウイルス(NLVs)の検索を行い,247事例1,465件からNLVsを検出した.近年のウイルス性胃腸炎集団発生においては,原因食品にカキを含まない事例が増加し,明らかな一峰性の患者発生を示さないなどヒトからヒトへの感染を示唆する事例が多かった.今後は,食中毒と感染症の両面からの原因解明がより一層重要となることが予測された.

ノーウォーク様ウイルス,胃腸炎,集団発生,遺伝子型

 

ワクチン接種後の高齢者におけるインフルエンザ抗体価の推移 (1997-1999年)
 1997から1999年の2シーズンにおける高齢者26名に対するインフルエンザワクチン接種後の抗体価推移を検討した.1997/98シーズンは,ワクチン接種前及び接種後,1998/99シーズンはワクチン接種前,1回目接種後及び2回目接種後に採血を行い,計128件の抗体価を調査した.ワクチン接種による抗体価の測定は,HI(赤血球凝集抑制)試験により求め,毎年のワクチン接種により40倍以上の抗体価を獲得する機会が増えることがわかった.また,標的抗原に対する近縁抗原の投与によっても抗体誘導が起きる交差性があることが明らかとなった.

インフルエンザウイルス, インフルエンザワクチン,高齢者, HI試験, HI抗体価

 

クラミジア トラコマチス抗体測定 酵素抗体法における不安定要因
 性感染症健康相談・検査事業に伴う検査項目の一つであるCT抗体検査をELISA法で行っているが,検体に不活化血清を用いると非特異反応により吸光度が不安定になり,正しい結果が得られないことが明らかになった.またLot差も大きいことから,固相抗原が異なる2社の試薬について血清の不活化がもたらす吸光度の変化について検討した.その結果,不活化血清を用いた場合,固相抗原に精製菌外膜蛋白を使用している試薬キットは,人工合成ポリペプチドを使用している試薬キットに比較して不安定であった.

酵素抗体法,不活化,クラミジア トラコマチス

 

東京都多摩地区における梅毒血清反応検査成績 (1978〜1999年)
 1978〜1999年の22年間に東京都多摩地区において健康人を対象として,実施された45,614例中1,017件(2.23%)が脂質抗原検査(スクリーニング検査:ガラス板法と,緒方法あるいはRPR法のいずれかによる組み合わせ)陽性例であった.このうちトレポネーマ抗原検査(確認検査:TPHA法,FTA-ABS法)陽性は639例(1.40%)であった.検査件数は年々減少を続け1999年には1978年の1/10にまで減少したが,確認試験陽性率は1978〜1999年までほぼ1〜約2%の間で推移し,潜在的な梅毒感染例は,減少していないことが明らかとなった.確認試験陽性例中77.2%(493例)は60才以上の高年齢者で占められた.

梅毒,脂質抗原試験,RPR法,TPHA法

  

Ⅱ 医薬品等に関する調査研究

いわゆる「合法ドラッグ」中に含有する医薬品成分の分析 −高速液体クロマトグラフィーによる塩酸ヨヒンビンの定量−
 いわゆる「合法ドラッグ」について医薬品成分の含有実態調査を行った.その結果,これらのなかに含有してはならない医薬品成分が検出された.そのなかから今回,ヨヒンビンの定性・定量分析法を作成した.確認試験はHPLC及びキャピラリー電気泳動で行った.定量法はHPLCを検討した結果,ODSカラムを用い,イオンペアー試薬(SDS)の添加量を6.0 g/Lとすることにより精度良く定量することができた.本法により市販されていた103製品を試験した結果,6製品からヨヒンビンが0.10 mg/個〜5.56 mg/個検出された.
いわゆる「合法ドラッグ」,ヨヒンビン,高速液体クロマトグラフィー,定性試験,定量試験,キャピラリー電気泳動

 

原料生薬に含まれる有害物質の実態調査(第3報) −薬用ニンジンについて−
 今回は生薬として比較的使用頻度の高い人参について調査を実施したが,ヒ素,重金属,放射能,カビ毒については特に問題のあるものは認められなかった.残留農薬については有機塩素系農薬のBHC,DDT,PCNB及びプロシミドンなどの殺虫剤や殺菌剤が検出された.特にプロシミドン及びPCNBの検出頻度が高く,また,ケニンジンではPCNBが35 ppmと比較的高濃度に検出された.しかし,いずれの農薬の検出量もADIから判断して,直ちに健康に影響を及ぼす量ではないと考えられる.
オタネニンジン,ニンジン,コウジン,生薬,漢方薬,重金属,放射能,カビ毒,残留農薬

 

三黄瀉心湯,茯苓飲・胃疾患に繁用される漢方方剤のH,K-ATPase活性に対する影響
 H,K-ATPaseは胃粘膜に特異的に存在し,プロトンポンプの役割を担う酵素である.この酵素の阻害剤が,消化性潰瘍の治療薬として最近用いられている.胃潰瘍をはじめ,種々の胃疾患に繁用される漢方方剤17種類のH,K-ATPase活性に対する影響を調べた.三黄瀉心湯,茯苓飲の阻害作用が強かった.構成生薬では,三黄瀉心湯のダイオウ,茯苓飲のブクリョウが,阻害作用に最も寄与していると考えられた.漢方方剤の胃潰瘍等胃に対する治癒機構の一つは,H,K-ATPase活性阻害であることが示唆された.
H,K-ATPアーゼ,阻害,漢方方剤,三黄瀉心湯,茯苓飲,ダイオウ,ブクリョウ

  

都内医薬品製造所のバリデーションに対する技術支援 −植物抽出液製剤(内用液剤)メーカーへの対応−
 生の薬用植物からの抽出物を内用液剤に製造しているメーカーに対しバリデーション支援を行った.原料薬用植物は天産物で成分含量の変動が不可避であるが,今回アントシアン成分の濃度を指標として原料の変動及び保存中の変化を調べた.その結果,年間のアントシアン含量の変動は5%程度で,安定した品質の製剤を製造するために,ほぼ問題はないことが検証された.原料抽出液及び製剤のいずれも10°C暗所で保存した場合,8ヶ月でわずかではあるが有意の減少を示した.今後,加速試験や長期の保存試験を行い,安定性の検討を行う必要がある.

バリデーション,植物抽出液剤,生薬製剤メーカー,製造管理,品質管理,ムラサキオモト

 

医薬部外品製造・輸入承認申請に関する審査の現状と問題点
 当科の平成6〜11年における医薬部外品の「規格及び試験法」及び「実測値」等の添付資料審査の各年の総検体数は,110〜310検体であり,年度により変動がみられたが増加傾向を示した.平成11年度の1件当たりの平均審査期間は5日間であり審査業務開始当初に比べて大幅に短期化した.この審査業務を行っている中で,単位の記載ミスなどの単純な誤りは改善されているが,染毛剤の性状における色調表現及び確認試験に頻用されたTLC分析法に問題が多く,製造・輸入業者の技術力の向上が望まれた.今後ともきめ細かな指導・助言が必要と考える.
医薬部外品,医薬部外品製造・輸入承認,染毛剤, 薬用歯みがき

 

エアゾル害虫忌避剤の成分分析
 エアゾル害虫忌避剤中の3有効成分,N,N-ジエチル-m-トルアミド(ETO),N-オクチル-ビシクロヘプテン・ジカルボキシイミド(OHI)及びイソシンコメロン酸ジノルマルプロピル(PIS)のガスクロマトグラフィーによる新分析法を作成した.本法はエアゾル内溶液を両端針付きテフロンチューブでメスバイアルに移し,重量を測定して内溶液の比重を求めた.またメスバイアル内溶液を針付きチューブでメスフラスコのエタノール中に導くことで希釈を効率的に行った.自家製エアゾルを用いた回収率測定は98〜101%を得た.市販のエアゾル6試料の検査結果はETOが1.1〜8.1%,OHIが0.1〜0.3%,PISが0.5〜1.1% であった.
エアゾール,虫よけ剤,N,N-ジエチル-m-トルアミド,N-オクチル-ビシクロ〔2,2,1〕ヘプテン・ジカルボキシイミド,イソシンコメロン酸ジノルマルプロピル,ガスクロマトグラフィー

 

シアン分析法の比較検討とめっき廃水への応用
 毒物及び劇物取締法によるめっき廃水中のシアンの規制はpH5で発生する遊離シアンが対象で,規制値は1L当り1 mgである.毒物劇物取締法施行令により規定された定量方法(公定法)の操作は多くの機器を使用し操作も繁雑で,結果が出るまでに長時間を要する.シアン流出時にはすばやい行政対応が要求されるため,多数の検体を能率良く処理する試験方法を種々検討し,前処理には固相抽出装置を,シアン検出にはイオンクロマトグラフを採用したシアン測定システムを開発した.
シアン化物イオン,めっき廃水,電気化学検出器,イオンクロマトグラフィー

 

Ⅲ 食品等に関する調査研究

食品添加物の一日摂取量調査 −サッカリンナトリウム,アスパルテーム,グリチルリチン酸及び遊離アミノ酸について−
 食品添加物の一日摂取量調査の一環として,平成9年度は加工食品中のサッカリンナトリウム(SA-Na)及びアスパルテーム(APM),10年度は加工食品中のグリチルリチン酸(GA)及び遊離アミノ酸,11年度は生鮮食品中のGA及び遊離アミノ酸を調査した.加工食品中の一日摂取量は,SA-Naでは2.88 mg,GAでは2.91 mg,遊離アミノ酸16種では3,616 mgで,そのうち28.3%がグルタミン酸であった.SA-Na及びAPMの摂取量はADIの各々1.03及び0.13%とわずかであった.生鮮食品中からは,GAは検出されず,遊離アミノ酸の合計は1,631 mgであった.
食品添加物,一日摂取量,マーケットバスケット方式,サッカリンナトリウム,アスパルテーム,グリチルリチン酸,アミノ酸

 

高速液体クロマトグラフィーによる食品中のステビア甘味成分の分析法
 HPLCによるステビア甘味成分のステビオシド(Stev.)及びレバウディオシドA(Reb. A)の分離定量法を検討した.試料溶液の前処理に透析法を用い,C18カートリッジでのクリーンアップを行うことにより,多くの食品に適用でき,操作が簡便かつ容易な分析法を確立した.添加回収試験の結果,回収率はふりかけを除きStev. 80.9~96.8%,Reb. A 81.1~96.6%,3回の繰り返し実験でのCV 値は5%以下と良好な結果が得られた.本法をステビア抽出物の添加表示のある市販食品18検体に適用したところ,Stev.が2.2~179.0 µg/g,Reb. Aが3.1~101.7 µg/g検出された.ふりかけ1検体はStev.及びReb. A共に検出されなかった.
天然甘味料,ステビオシド,レバウディオシドA,固相抽出,透析法,高速液体クロマトグラフィー

 

食品中のパラオキシ安息香酸エステル類の分析法
 食品中のパラオキシ安息香酸エステル類の分析法について検討した.パラオキシ安息香酸エステル類を,アセトニトリル‐イソプロパノール‐エタノール(2:1:1)混液に抽出し,次いで凍結操作により油脂分を除去し,さらにC18カートリッジにより精製してHPLC試験溶液を調製した.HPLCによる分離ではカラムにCosmosil 5C18-ARII,移動相にメタノール‐5 mmol/Lクエン酸緩衝液(6:4)混液を用いたが,夾雑ピークとの分離も十分であり,再現性も良好であった.本法により添加回収実験を行った結果,各エステル類の回収率は90.8~106%であった.

パラオキシ安息香酸エステル類,保存料,高速液体クロマトグラフィー

 

高速液体クロマトグラフィーによる市販食品中の天然着色料の分析
 天然着色料のHPLCによる分析法を検討した.その結果,天然着色料14種(アントシアニン系色素,ラック色素,クチナシ色素など)が,ODSカラムを用いた,フォトダイオード検出器付きHPLCにより,同一条件で分析された.天然着色料は,複数の色素成分で構成されるものが多く,今回の方法では,天然着色料14種のすべての色素成分を完全には分離できなかったが,それぞれの着色料に特有のクロマトグラムパターンとその吸収スペクトルから確認できた.本分析法を用い,市販食品中の着色料の分析を行い,良好な結果が得られた.
天然着色料,高速液体クロマトグラフィー,アントシアニン系色素,ラック色素,コチニール色素,クチナシ黄色素,ベニバナ黄色素,ウコン色素,ベニコウジ色素

 

アルミニウムシートを用いたTLCによる食品中のタール色素の検出
 食品中のタール色素の分析を目的に,アルミニウムシートを用いたTLC法を検討した.標準色素ではガラス板と比較して,順相及び逆相TLCともに許可色素12種と不許可色素8種のクロマトグラム上で差は見られなかった.食品から抽出した許可色素は,アルミニウムシート及びガラス板はともに逆相TLCでは再現性がよいが,順相TLCでは若干夾雑物の影響を受けた.しかし順相TLCは許可色素12種の分離が可能であり,スクリーニング法として有効であった.アルミニウムシートはGLP対応の食品中のタール色素の分析に使用できる.
アルミニウムシ−ト,ガラス板,逆相薄層クロマトグラフィー,順相薄層クロマトグラフィー,食用タール色素,不許可色素

 

生鮮野菜に使用されたリン酸の定量
 生鮮野菜に使用されたリン酸の迅速で精度の良い定量法として,家庭用の圧力鍋を用いて加熱発色させる分析法について検討を行った.野菜の水浸漬液5 mlを試験管に採り,発色試液2 mlを加え軽く蓋をして,あらかじめ500 mlの水を入れておいた圧力鍋で6~7分間,すなわち圧力鍋の蓋から水蒸気が吹き出してから1~2分間加熱することにより,ばらつきの少ない安定した発色の得られることがわかった.リン酸の検出された野菜を使用し,本法と従来法と比較した結果,両者の値は良く一致した.
リン酸,野菜,漂白,吸光度測定法,定量分析

 

高速液体クロマトグラフィーによる農産物及びその加工品中の臭素分析法
 各種農産物及びその加工品の臭素分析法として,前処理用カートリッジカラムで精製した後,陰イオン交換樹脂カラムを用いたHPLCによる簡便な方法を作成した.本法の利点は特殊な装置が不要で,有機溶媒をほとんど使用しない点であり,回収率も80.0%以上で行政検査に十分適用できることがわかった.また,12種87試料の農産物及びその加工品に適用したところ,とうもろこし,いちご,くりなどから臭素が検出された.特に基準値のないくりから43.2 ppmの臭素を検出した.今回調査した試料はいずれも基準値以下であった.
臭素,臭化物,農産物,高速液体クロマトグラフィー,陰イオン交換樹脂カラム

 

国内産野菜・果実類中の残留農薬実態調査 −平成11年度−

 1999年4月から2000年3月までに都内に入荷した野菜・果実類18種81検体について,慣行栽培品及び無・減農薬栽培品の残留農薬実態調査を行った.慣行栽培野菜・果実類からは有機リン系農薬,有機塩素系農薬,カーバメイト系農薬及びその他の農薬16種類が15種32検体から痕跡~0.42 ppm検出された.無・減農薬栽培野菜からは,有機リン系農薬,有機塩素系農薬及びカーバメイト系農薬6種類が4種5検体から0.01~0.36 ppm検出された.いずれも残留農薬基準及び登録保留基準を超えたものはなく,喫食上特に問題となるものはなかった.

残留農薬,野菜,果実,有機リン系農薬,有機塩素系農薬,カーバメイト系農薬,殺虫剤,殺菌剤,有機栽培

 

輸入農産物中の残留農薬実態調査(有機塩素系農薬,N-メチルカーバメイト系農薬及びその他) −平成11年度−
 1999年4月から2000年3月に都内で購入した輸入生鮮農作物等72種238作物について残留農薬の実態調査を行った.有機塩素系農薬では,5種類の殺虫剤及び3種類の殺菌剤が痕跡~1.6 ppm検出された.カーバメイト系では,2種類の殺虫剤及び1種類の除草剤が0.01~0.45 ppm検出された.その他の農薬では,3種類の殺菌剤及び1種類の除草剤が痕跡~6.3 ppm検出された.検出された農薬は地域による差はなく,農産物の種類に由来することが分かった.いずれも残留農薬基準を超えるものはなく,喫食上特に問題はないと考える.
残留農薬,輸入農産物,有機塩素系農薬,カーバメイト系農薬,殺虫剤,殺菌剤,除草剤,収穫後使用

 

輸入農産物中の残留農薬実態調査(有機リン系農薬及び含窒素系農薬) −平成11年度−
 1999年4月から2000年3月に都内の市場等で購入した輸入生鮮農産物等72種238作物について,有機リン系農薬及び含窒素系農薬の残留実態調査を行った.その結果,9種類の有機リン系殺虫剤(クロルピリホス,エチオン,メチダチオンなど)が20作物から痕跡~0.82 ppm検出された.含窒素系農薬では3種類の殺菌剤(ビテルタノール,トリアジメホンなど)が3作物から痕跡~0.03 ppm検出された.いずれも食品衛生法残留農薬基準値,登録保留基準値,国際残留農薬基準値あるいは各国の残留農薬基準値以下であった.
残留農薬,輸入農産物,有機リン系農薬,含窒素系農薬,収穫後使用

 

既存公定試験法を応用した農産物中のフェンプロパトリンの分析
 既存公定試験法を応用した農作物中のフェンプロパトリンの分析法について検討した.公定試験法のうちBHC,DDT,エンドリン,ジコホール等試験法の応用を試みたところ,12種の農作物を用いた添加回収試験で回収率は74.8~99.0%と良好で,また定量を妨害するようなピークも認められなかった.よって本試験法を利用することでフェンプロパトリンを含めた10種の農薬を同時に分析することができ,分析の省力化を図ることができた.
フェンプロパトリン,農薬,農作物,ガスクロマトグラフィー(ECD),公定試験法

 

国内産野菜中の残留農薬実態調査 −平成8年度~平成11年度−
 平成8年4月から12年3月までに多摩地域で流通していた野菜20種162検体,同地域で生産流通されていた野菜35種97検体,及び冷凍野菜9種20検体の残留農薬の実態調査を行った.有機塩素系農薬11種が16種42検体,同代謝物1種が痕跡~1.57 ppmの範囲で検出された.また有機リン系農薬8種が10種14検体から痕跡~0.51 ppm,含窒素系農薬2種が3種3検体から0.01 ppm~0.15 ppm検出された.いずれも食品衛生法の残留基準値を超えることはなく,通常の喫食には問題がないことが示唆された.
残留農薬,野菜,有機リン系農薬,有機塩素系農薬,カーバメイト系農薬,含窒素系農薬,殺虫剤,殺菌剤,除草剤

 

GC/MS及びHPLCによる野菜中に残留するDDTとdicofolの分析
 野菜中のo,p’-DDT,p,p’-DDT及びdicofolの分析法についてGC/MSとHPLCにより検討した.DDTの測定は試料に内部標準物質として重水素体を加えたGC/MS-SIMにより分析を行った結果,マトリックスの影響を補正でき,分析精度が向上した.HPLCによりDDTとdicofol及びそれらの代謝物が,カラムZorbax C8,移動相メタノ−ル-水-酢酸 (80:20:0.2),検出波長230 nmを用いて分離できた.GC/MSでは熱分解により正確な測定が困難であったdicofolが定量でき,良好な回収率であった.本法を用いて,枝豆やいんげんから内分泌かく乱物質の疑いがあるDDTやdicofolが検出された.

残留農薬,野菜,内分泌かく乱化学物質,DDT,ジコホール,安定同位体標準物質,ガスクロマトグラフ/質量分析計,高速液体クロマトグラフィ−,フォトダイオードアレイ検出器

 

輸入ウナギ加工品中における有機塩素系農薬の残留実態調査
 近年,輸入量が増加しているウナギ加工品(蒲焼き)中の有機塩素系農薬について残留実態調査を実施した.その結果,α-,β-,γ-,δ-HCH,p,p’-DDE,p,p’-DDD,p,p’-DDT,ディルドリン,アルドリンが検出された.総体的に中国産の試料は他の生産国の試料に比べて検出される農薬の種類が多く,検出率及び検出濃度も高かった.その中には,γ-HCHが顕著に高く検出された試料(脂肪中濃度で5.34 ppm)もあった.これらの結果は,生産国における農薬の使用実態や養殖環境に由来するものと考えられ,今後も継続的な調査が必要である.
ウナギ加工品,有機塩素系農薬,残留

 

東京湾産アサリの有機塩素系農薬残留実態 −平成6年度~平成11年度−
 平成6年度から平成11年度までの6年間,東京湾等の定点(9地点)で採取した,アサリ,海水等中の有機塩素系農薬について残留実態を調査した.アサリ及び海水等から総DDT,総クロルデン,オキサジアゾン,クロルピリホスなどが検出された.その検出濃度は大きな変化なく経年推移し,ほとんどが検出限界に近い濃度であった.しかし,検出された化学物質の多くが,内分泌かく乱作用が疑われている物質であったことから,今後ともモニタリングを継続して行う必要があると考える.
有機塩素系農薬,アサリ,東京湾,内分泌かく乱化学物質,ガスクロマトグラフ/質量分析計,選択イオン検出

 

玄米と精米中のカドミウム,銅,ヒ素の含有濃度比較
 同一試料を玄米と精米について各々48検体分析したところ,精米の方が玄米より濃度が低く,精米/玄米の濃度比の中央値はカドミウム0.92,銅0.83,ヒ素0.73であった.回帰分析の結果,相関係数及び回帰直線は,カドミウムr=0.97,y=0.85x,銅r=0.79,y=0.80x,ヒ素r=0.80,y=0.58xであった.精米のカドミウム濃度は玄米の約90%であることが明らかとなり,従来の「精米されたものは0.9 ppm未満であれば,玄米において1.0 ppm未満であったものとして取り扱って差し支えない」との扱いは概ね妥当と考えられた.

米,玄米,精米,汚染,カドミウム,銅,ヒ素,許容基準,濃度分布,農用地汚染

 

輸入魚醤油の衛生化学的調査(第2報) −有害元素等−
 輸入及び国産魚醤油中の元素含有量の調査を行ったところ,イカの内蔵を原料とした「いしる」から比較的高濃度のCd,Cu及びZnが検出された.これらは原料であるイカの肝臓に蓄積されていたものが,魚醤油中に移行したものと推定されたが,調味料として少量摂取する限りにおいては問題ないと思われる.また,輸入品からは比較的高濃度のMgも検出されたが,その大部分は製造原料である食塩に由来するものと思われる.その他,As,Pb,Mn,Fe,Caについても調査を行ったが,特に問題となるような試料は認められなかった.
魚醤油,調味料,ヒ素,カドミウム,鉛,銅,亜鉛,鉄,マンガン,マグネシウム,カルシウム

  

HPLC-ECDによる缶入り茶飲料中のビスフェノールAの分析
 缶入り茶飲料中のビスフェノールA(BPA)のHPLC-ECDによる分析について検討した.試料をジエチルエーテルで抽出した後,Sep-Pak NH2カートリッジによりクリーンアップし,HPLCで定量した.検出限界は1.0 ng/gだった.本法を用いて市販の缶入り茶飲料24銘柄を分析したところ,9銘柄からBPAを1.0~82.5 ng/g検出した.内面コーティングの材質をFT-IRにより鑑別したところ,缶胴部分のコーティングがエポキシ系樹脂のものでBPAの検出率が高く,ポリエチレンテレフタレートのものでは検出限界以下だった.
ビスフェノールA,電気化学検出器,缶入り茶飲料,エポキシ樹脂,塩化ビニル樹脂,ポリエチレンテレフタレート

 

化学物質及び自然毒による食中毒等事件例(第17報) −平成11年−
 平成11年に発生した化学物質及び自然毒による食中毒等の事例のうち,①ブリ照り焼きを喫食し,顔面紅潮,口の腫れ,頭痛,動悸,下痢等の症状を呈し,原因物質としてヒスタミンが疑われた事例.②ウルメイワシの干物を喫食し,めまい,悪心,吐き気,嘔吐,下痢等の症状を呈したヒスタミンによる有症苦情事例.③ヒョウタンを喫食して,嘔吐,下痢等の症状を呈した植物性自然毒による食中毒事例.④洗剤が混入したワインにより,喉の痛み,手の痺れ,倦怠感等の症状を呈した有症苦情事例.以上4事例について報告した.
化学性食中毒,ヒスタミン,ヒョウタン,ククルビタシン,洗剤,界面活性剤

 

輸入食品中の放射能濃度(第9報) −平成11年度−
 チェルノブイリ原発事故による放射能汚染食品の実態調査のため,平成11年度に都内で流通していた輸入食品等297試料について放射能を調査した.放射能濃度が50 Bq/kgを超えて検出された試料は11試料(3.7%)であり,暫定限度値370 Bq/kgを超えて検出されたものはなかった.放射能濃度が50 Bq/kgを超えて検出された試料はトルコ産の紅茶が60~100 Bq/kg であり,イタリア産のポルチーニ(ヤマドリタケ)3試料が78 ~88 Bq/kg,フランス産のモリーユ(アミガサタケ)が57 Bq/kg及びピエ・ド・ムトン(カノシタ)が53 Bq/kgであった。
チェルノブイリ原発事故,放射能汚染,輸入食品,調査,セシウム,キノコ,紅茶,NaI(Tl)シンチレーションディテクタ

 

食品から異物として検出される毛の判別
 食品中への毛髪混入事例は多く,消費者も不快,不安に感じ,小売店やメーカー,保健所等に苦情として持ち込まれる.そこで,ヒト,ネズミ等11種15動物の毛について,実体顕微鏡,マイクロCCDカメラ及び電子顕微鏡を用いて,外観,小皮紋理及び断面を観察し,各動物の毛の特徴を表にまとめた.また,この表に基づき,味噌,食パン及びシューマイ等の苦情例における毛の観察をしたところ,ネズミ及び人の毛であることがわかった.
毛,走査型電子顕微鏡,顕微鏡写真,ネズミ,小皮紋理,髄質,異物

 

健康食品(ドリンク類)のビタミン含量
 健康食品として販売されているドリンク類からのビタミン摂取量を把握するために調査を行った.15検体の試料について,水溶性ビタミン,脂溶性ビタミンの含量を測定した.ビタミンの分析は主として高速液体クロマトグラフィー及び微生物学的定量法によった.これら試料のビタミン含量と,日本人の栄養所要量で策定された許容上限摂取量の値を比較したところ,1試料のナイアシン含有量がその値を超えていた.それ以外のビタミンについては,いずれの試料も許容上限摂取量以下であった.
健康食品,ドリンク,ビタミン,水溶性ビタミン,脂溶性ビタミン

 

即席めんの脂質及び脂肪酸組成
 市販即席めん51製品について,脂質及び脂肪酸組成の分析を行った.その結果,一食あたりの脂質含量の平均値は,ノンフライめんでは6.8 g,油揚げめんでは17.4 gであった.油揚げ製品中の脂肪酸は,飽和脂肪酸であるパルミチン酸(C16:0)と一価不飽和脂肪酸のオレイン酸(C18:1)が各々約40%を占めており,その脂肪酸組成は,パーム油に類似していた.飽和脂肪酸量は,油揚げめんでは一食あたり7~8 g含有しており,過剰摂取を避けるために,製品に対する表示が望まれる.
即席めん,油揚げめん,脂質含量,飽和脂肪酸,脂肪酸組成

 

天然添加物中のチアベンダゾール及びイマザリルの分析
 天然添加物の着色料,酸化防止剤等についてチアベンダゾール(TBZ)及びイマザリル(IMZ)の調査を行った.調査を行うにあたり,試験法の検討を行い,天然添加物の形状及び性状に対応した3種の抽出法を作成した.抽出液は,液−液分配により精製して試験溶液を調製し,HPLCにより分析した.本法による回収率及び変動係数はTBZで70.8~84.5%,3.9~9.8%であり,IMZで62.4~75.3%,3.5~13.4%であった.本法を用いて市販の天然添加物及びその製剤の調査を行ったところ,20品目69製品からTBZ及びIMZはいずれも検出されなかった.
天然添加物,チアベンダゾール,イマザリル,高速液体クロマトグラフィー

 

天然添加物中の重金属及びヒ素含有量
 天然添加物中の重金属及びヒ素の含有量を調査する目的で,甘味料など6用途の天然添加物17品目47製品について硫化ナトリウムによる重金属の一括試験を行ったほか,鉛,カドミウム,クロム,水銀,ヒ素を定量した.重金属試験の結果,コウリャン色素とカテキンに銅が多く含まれている製品があることがわかったが,添加物として使用されることを考慮すれば,それらの銅の量は食品衛生上問題ないと考えられた.また,5元素の含有量を第7版食品添加物公定書及び国際規格の規格値と比較したが,衛生行政上問題となるものはなかった.
重金属,鉛,カドミウム,クロム,水銀,ヒ素,天然添加物

 

天然保存料ペクチン分解物に関する衛生化学的研究
 変異原性陽性ペクチン分解物について変異原性物質の究明と成分分析法の改良を行った.変異原性はS9無添加で観察され,加熱により増加し,スーパーオキシドディスムターゼ,システイン,亜硫酸水素ナトリウムを加えることにより減少した.ペクチン分解物より分取された変異原性物質は化学分析により極性の強い中性又は両性物質で,製造時におけるメイラード反応物質であると推定された.ペクチン分解物中のガラクチュロン酸を3,5-ジメチルフェノール法で分析したところ,中性糖の影響を受けず定量できた.
ペクチン分解物,変異原性,エームス試験,サルモネラ,オリゴガラクチュロン酸,高速液体クロマトグラフィー,天然保存料

 

ポリカーボネート製ほ乳びんからのビスフェノールAの 溶出に及ぼすアルカリ性洗浄剤の影響
 塩素系消毒液,酸素系漂白洗浄剤及び食器洗浄機用洗浄剤の3種類のアルカリ性洗浄剤が,ポリカーボネート製ほ乳びんからのビスフェノールA(BPA)溶出に及ぼす影響について検討を行った.その結果,塩素系消毒液は影響を及ぼさなかったが,酸素系漂白洗浄剤及び食器洗浄機用洗浄剤はほ乳びん表面に付着,加熱乾燥することによりBPAの溶出量を増加させた.とりわけアルカリ性の強い洗浄剤が付着状態で高温乾燥された場合には,高濃度のBPAが溶出することが判明した.このことから,アルカリ性洗浄剤の使用はさけるべきと考えられた.
ポリカーボネート,ビスフェノールA,ほ乳びん,アルカリ性洗浄剤,溶出試験

 

Ⅳ 生活環境に関する調査研究

室内空気中化学物質濃度と不快な症状に関する調査結果
 1997年7月〜1999年6月に東京近郊の住宅49軒で,室内空気中ホルムアルデヒド及び揮発性有機化合物10種の濃度を測定し,同時に健康に関するアンケートを行った.室内に居て起こる不快な症状の有無により「症状あり家屋」群(n=19)と「症状なし家屋」群(n=30)に分けて解析を行ったところ,ホルムアルデヒド,トルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレン及びブタノールの6物質は,「症状あり家屋」群の方が「症状なし家屋」群に比べて有意に高かった.また,これらの6物質の濃度と症状の頻度との間に有意な正の相関がみられ,症状との関連が示唆された.
ホルムアルデヒド,揮発性有機化合物,室内空気,アンケート調査, 健康上の苦情

 

室内空気汚染発生源の推定 −建材からのスチレン,ブタノールの発生量−

 健康被害のあった住宅の室内空気中化学物質濃度を測定したところ,ホルムアルデヒド及びスチレン,ブタノール等が高濃度であった.床表面付近の揮発性有機化合物(VOC)測定の結果,ブタノールはフローリング床上で,また,スチレンは畳下の補修材上で極めて高濃度であった.建材からのVOC発生速度の測定実験により,ブタノールは主として接着剤から,スチレンは主としてスチロールシート及びスタイロ畳から発生していることが推定された.

室内空気,揮発性有機化合物,発生源,スチレン,ブタノール

 

住宅及びビルにおける揮発性有機化合物濃度の日内変動
 室内空気中揮発性有機化合物(VOC)濃度の日内変動を知るため,住宅とビルにおいて調査を行った.室内空気は自動サンプリング装置を用いて,約50 mL/minの流量で1時間毎に24時間まで採取した.捕集管にはステンレス加熱脱着チューブを用い,GC/MSで分析した.約40種のVOC濃度を測定した結果,窓開け換気や空調システムの稼動状況と濃度変動とが密接に関連していることが明らかとなった.以上より,換気や活動に関連した濃度変動を測定することは,VOCが人体に与える影響を正確に把握するために役立つと考えられた.
アクティブサンプリング,揮発性有機化合物,日内変動,室内空気

 

室内空気中VOC濃度の推奨値及び要監視濃度の提案
 多数の住宅室内揮発性有機化合物(VOC)濃度を統計的に解析することにより,これ以下であることが望ましい濃度の範囲すなわち「推奨値」及び早急に改善することが望ましい「要監視濃度」を推定した.「推奨値」は,本来大多数の住宅が収まるべき濃度範囲すなわち中央値の2倍程度,また「要監視濃度」は異常に高濃度な住宅が増加し始める90パーセンタイル値に設定した.本結果は,最近の東京及び近郊での通常の住まい方による24時間平均値のデータから得られたもので異なった測定条件で計測されたケースにそのまま適用できない.また,健康影響を直接考慮したものではない.
室内空気,揮発性有機化合物,推奨値

 

微生物熱量計による抗カビ薬剤TBZ及びBCMの 最小生育阻止濃度(MIC)の測定
 代表的な抗カビ剤であるTBZとBCMのクロコウジカビに対する活性を微生物熱量計により評価した.薬剤濃度が上昇するにつれてカビの菌糸成長に伴う発熱量が増殖サーモグラムの時間的遅れとして観察された.そこで,増殖速度と最小生育阻害濃度(MIC)を高橋らの非拮抗阻害モデルから計算した.TBZとBCMの抗カビ活性曲線は,熱量計から得られたパラメーターに基づいて描かれ,目視法によるMICに一致した.本法が各種の抗カビ剤の活性評価に高い精度をもつことがわかる.
熱量計,抗カビ活性,TBZ,BCM,クロコウジカビ,拮抗阻害モデル,最小生育阻害濃度

  

E-スクリーンアッセイにおける播種細胞数の影響
 24ウェルプレートを用いたE-スクリーンアッセイにおける最適な実験条件を見出す目的で,播種細胞数によるMCF-7細胞のエストロジェン作用物質に対する増殖パターンを比較検討した.11日間培養した細胞を1ウェル当たり10,000,20,000,40,000及び60,000個播種し,17β-エストラジオール及びビスフェノールAについてE-スクリーンアッセイを実施した.その結果,40,000細胞を播種した場合に高い細胞増殖活性及び試験物質を含まないホルモンフリーコントロールに対して高い最高増殖細胞比が得られた.今回の実験結果から,24ウェルプレートを用いたE-スクリーンアッセイでは40,000細胞を播種すべきであることが示唆された.
E-スクリーンアッセイ,MCF-7細胞,播種細胞数, 17β-エストラジオール,ビスフェノールA

 

水試料からのレジオネラ属菌検出方法の改良 −濃縮試料の酸処理条件の検討−
 本研究は,レジオネラ属菌試験方法において,試料水中のレジオネラ属菌以外の微生物を死滅させるために行う,酸処理液の濃度と処理時間について検討したものである.処理条件の検討は,レジオネラ属菌とその他の細菌が共に高濃度に生息している稼働中の循環式浴槽水を用いて行った.  その結果,試料水に生息しているレジオネラ属菌に与える損傷を最小限にし,レジオネラ属菌以外の細菌類を最大限死滅させる酸処理条件は,0.2M KCl溶液(pH 2.2)で3〜5分間処理することであると判明した.
生活用水, レジオネラ属菌, 培養方法, 酸処理液

 

水道水並びに各種の環境水からの原虫類の検出状況(平成11年度)
 平成11年度に調査した浄水25試料及び水道原水25試料並びに下水処理水を逆浸透膜ろ過した再生水9試料及び修景用水9試料のすべてで原虫類は不検出であった.しかし糞便汚染指標微生物数から判断して,島嶼の水道原水では原虫が検出される可能性が指摘された.多摩川河川水では下水等による汚濁の進んだ下流の1試料でクリプトスポリジウムが20 L中に1個検出され,下流の4地点すべてからジアルジアが1〜24個/20 Lの範囲で検出された.また,ジアルジアの指標微生物としてウェルシュ菌芽胞が有望である可能性が示唆された.
原虫,クリプトスポリジウム,ジアルジア,水道水,水道原水,河川水,糞便汚染指標微生物,ウェルシュ菌芽胞

 

携帯用浄水器の浄水性能評価実験
 被災時に個人レベルで使用することを目的として開発され市販されている浄水器の浄水性能について,精製水,浴槽水及び河川水を用いて評価実験を行った.その結果,菌体よりも小さい孔径のフィルターを使用した浄水器は大腸菌を完璧に除去できること,菌体より大きい孔径のフィルター及びフィルター以外のろ過材を使用した浄水器は大腸菌が漏出すること,ポリオウイルスを完全には除去できないことが判明した.また,現行の飲料水水質基準を満たす浄水性能は確認できなかった.
生活用水,浄水器,大腸菌,ウイルス,大腸菌群

 

水及び底質中の2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールの分析法の検討
 2-tert-ブチル-4-メトキシフェノ−ル(BMP)は食品,プラスチック類の酸化防止剤として広く用いられている.BMPについて水及び底質試料からの分析法の開発を行った.水試料はヘキサンで抽出し,ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)で測定を行い,回収率90%以上,変動係数2.09〜4.34%であった.また底質試料は水蒸気蒸留した後ヘキサン抽出し,グラファイトカ−ボンカ−トリッジカラムで精製した後,GC/MSで測定を行い,回収率70%以上,変動係数4.81%であった.水及び底質試料におけるBMPについて満足できる試験法を作製するがことできた.
2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール,tert-ブチルヒドロキシアニソ−ル,酸化防止剤,ガスクロマトグラフ/質量分析法

 

水中農薬の自動固相抽出−HPLC法による分析
 規制農薬の多成分一斉分析の前処理には,固相抽出法もしくは溶媒抽出法が採用されており,これまでこの前処理法を利用して,得られた抽出液をHPLCで分析した例が数多く報告されている.しかし,これらの方法は,抽出操作に熟練を必要とし,更には人為的誤差が大きいという欠点がある.本法は,この固相抽出操作を自動化するとともに,HPLCによる分析までの行程を自動切り換えバルブを介してオンライン化することにより,分析行程の完全自動化を目的とする手法である.今回,本法の有効性について河川水を用いて分析法の検討を行った.
農薬,高速液体クロマトグラフィ−,固相抽出

 

多摩地域における地下水中のヒ素の実態調査
 多摩地域の井戸水(960検体)を対象にヒ素の濃度調査を行った結果,8.9%の井戸水から0.001〜0.011 mg/Lのヒ素が検出されたが,ほとんどが水道水質基準値0.01 mg/L以下であった.浅井戸よりも深井戸の方が検出率が高かった.比較的高濃度のヒ素が検出された6地点の井戸水について経月変化を観察したところ,冬期にヒ素濃度が比較的高くなる傾向にあった.その井戸水中のヒ素の存在形態を測定した結果,3価と5価の無機ヒ素のみが検出され,有機態ヒ素であるメチルアルソン酸,ジメチルアルシン酸は検出されなかった.
ヒ素,ヒ酸,亜ヒ酸,ジメチルアルシン酸,メチルアルソン酸,地下水,多摩地区,誘導結合プラズマ質量分析計

 

ミネラルウォーター中のフタル酸エステル類と無機成分
 著者らはミネラルウォーター中のフタル酸エステル(PAE)13種類と無機成分10種類を調査した.その結果,PAE類ではミネラルウォーター中のD-n-BPは15件中2件,DEHPは15件中1件検出され,それ以外のPAE類は不検出であった.ガラス瓶では容器の栓の内側に張り付けてあるフィルムからDEHPが,またポリ瓶では栓自身からD-n-BPが溶出していた.一方,無機成分濃度はラベル表示とほぼ同じであった.外国産ミネラルウォーターにはSO4,Ca,Mg濃度が特に高い製品もあったが,国内産ミネラルウォーターと同濃度の製品もあった.
ミネラルウォーター,フタル酸エステル,無機成分

 

Ⅴ 毒性に関する調査研究

マウスを用いた混餌法及び混水法による食用赤色2号の2世代毒性試験

 食用色素である食用赤色2号(アマランス)をマウスに混餌法により,0 (対照群),0.03,0.09,0.27%,混水法により0(対照群),0.025,0.075,0.225%,親世代の5週齢から次世代の離乳まで投与し,繁殖及び行動発達に関する項目を測定した.食用赤色2号は出生時の一腹仔数,一腹仔重量及び性比にほとんど影響を及ぼさなかった.また,授乳期間中の平均仔体重にも食用赤色2号の影響は見られなかった.行動発達に関する項目では4日齢の遊泳試験と14日齢の嗅覚性指向反応が雌雄ともに投与群で用量相関的に抑制された.

食用赤色2号,アマランス,生殖毒性,行動発達,マウス

 

発芽抑制剤クロルプロファム(CIPC)のマウスにおける亜慢性毒性試験
 馬鈴薯の発芽抑制剤および農業用除草剤として使われるクロルプロファムを,餌に混ぜて,雌雄のマウスに13週間与えた.クロルプロファムを食べた雌雄のマウスでは,酸素運搬能のないメトヘモグロビンが増加した.脾臓・骨髄の病理学変化から,傷ついた赤血球の分解とそれに伴う造血の促進が起きていることが示された.また,クロルプロファムを食べた雌雄のマウスでは,肝臓の肥大とそれに伴う病理学変化が観察された.クロルプロファムは,餌に混ぜて13週間投与すると(混餌亜慢性投与で),マウスに血液毒性と軽度の肝毒性を起こすことが示唆された.

クロルプロファム,発芽抑制剤,除草剤,亜慢性毒性,血液毒性,マウス

  

六味丸のラット膀胱腫瘍に対する抗腫瘍作用及び転移抑制作用の検討

 漢方方剤,六味丸の抗腫瘍作用・転移抑制作用を調べる目的で,高転移性膀胱腫瘍株を移植したラットに六味丸を0.4, 1.2, 3.6%の濃度で添加した飼料を投与した.腫瘍増殖,腫瘍重量,平均生存日数,肺・リンパ節転移率,肺結節数などの成績に六味丸投与の影響はみられなかった.六味丸には本実験に用いたラット膀胱腫瘍に対して抗腫瘍性・転移抑制作用はないものと考えられる.

漢方薬,六味丸,抗腫瘍作用,転移抑制作用,ラット膀胱腫瘍

  

十全大補湯のラット膀胱腫瘍に対する抗腫瘍作用及び抗癌剤との併用によるその増強効果の検討

 十全大補湯の抗腫瘍作用・転移抑制作用を検討するため,膀胱腫瘍株を移植したラットに,十全大補湯3.2%添加飼料を移植前投与,移植後投与,また移植前より継続投与したが,どの投与法においても抗腫瘍作用・転移抑制作用は認められなかった.十全大補湯とシスプラチンとの併用実験では,十全大補湯の抗腫瘍作用への増強効果は明らかでなかったが,シスプラチンの副作用を軽減させる効果が示唆された.

漢方薬,十全大補湯,抗腫瘍作用, 転移抑制作用,ラット膀胱腫瘍,シスプラチン

  

十全大補湯のF344ラットによる104週間投与試験

 F344ラット雌雄,1群各20匹を用い,十全大補湯を0(対照),0.2,0.8及び3.2%の濃度で添加した餌料を104週間摂取させた.一般状態,生存率,体重,摂餌・摂水量及び血液学的及び血清生化学的検査結果,臓器重量には各投与群で対照群と比べ差はなかった.組織学的に様々な非腫瘍性及び腫瘍性病変が対照群と投与群で認められた.いずれも自然発生病変としてF344ラットで見られる病変と同様の変化で,これらの病変の程度や発現率は投与群と対照群で差はなかった.以上のことから長期投与による十全大補湯の障害作用や発癌作用はないものと考えられた.さらに組織学的に,自然発生病変である慢性腎症の程度が雌雄ともに対照群に比べ投与群で弱い例が多かった.十全大補湯にはラット慢性腎症の発現を抑制または軽減作用の可能性があることが示唆された.

十全大補湯,漢方薬,F344ラット,104週間投与試験

  

全胚培養法を用いた天然添加物のマウス胚子に及ぼす影響IV チャ抽出物

 妊娠8日にマウス胚子を摘出し,チャ抽出物(TE)の0(対照),31.25,62.5,125 µg/mlを24時間暴露後(妊娠10日),胚子の発育を観察した.卵黄嚢径,胚子体節数及び胚子の型において対照群と処置群の間で有意差を認めなかった.しかしながら,卵黄嚢血液循環の不良な胚子の増加及び平均心拍数の低下が125 µg/ml投与群で認められた.また同じ投与群で第一鰓弓発育不全の胚子が1例みられた.これらの結果は実験に用いた高濃度のTE投与はマウス胚子の発育に影響するがマウス胚子に対する催奇形作用はないことを示唆している.

マウス,全胚培養,天然添加物,チャ抽出物

  

ラック色素のF344ラットによる長期投与試験

 ラック色素の長期反復投与による生体への影響を調べる目的でラットを用いた添加飼料による投与試験を行った.実験は雌雄1群,20匹を用い,ラック色素を0(対照),0.313,1.25,5.0%の濃度で添加した飼料を78週間摂取させた.投与に関連した変化として雌雄5.0%群で耳下腺重量が,また雌5.0%群で顎下腺重量が増加した.組織学的に投与に関連して耳下腺の肥大及び自然発生病変である腎の石灰沈着の程度が認められた.一般症状,体重,生存率,血液学的及び血清生化学検査結果,唾液腺及び腎以外の臓器の重量及び組織学的観察結果には投与に関連した変化は認められなかった.

ラック色素, 食品添加物, F344ラット, 78週間投与試験

  

ラック色素投与時のラット耳下腺組織における微細構造の観察

 ラットを用いた13週間のラック色素の毒性試験で,耳下腺の肥大が認められた.今回,耳下腺の肥大を解明する目的で,電子顕微鏡による微細構造の変化について検討を加えた.ラック色素は,5%の固形飼料を2週間及び4週間,飲水と共に自由に摂取させた.2週間及び4週間摂餌群ともに終末部の膨化した腺房細胞で,分泌顆粒の増加や大型化が観察された.顆粒の蓄積には大差を認めないが,増加し大型化した顆粒の間に細胞内小器官の残存がみられた.また,核小体の肥大が散見された.分泌顆粒の内容物の電子密度は,対照と比べ明調化していた.耳下腺の肥大は,腺房細胞の分泌顆粒の異常を伴っていることが示された.

ラック色素,耳下腺,ラット,電子顕微鏡観察

 

Ⅵ 公衆衛生情報に関する調査研究

保健所における運動実践教室の健康づくりに及ぼす効果
 平成8年度から11年度に東京都多摩地区の保健所で実施した運動実践指導教室受講の女性70名を対象に,栄養の指導と運動実践が骨粗鬆症予防及び生活習慣の改善にどのように貢献できるかを,対象者を高コレステロール血症,高血圧等の疾病群に分類し,Wilcoxon signed-ranks test及びPaired t-testによる解析を行った.食事からのエネルギー摂取量は減少した。タンパク質,脂質,カルシウムの摂取量は変化しなかった.摂取食品数が増加し,ビタミンA,ビタミンC摂取量も増加した.食塩は有意に減少した.高血圧群では収縮期血圧,拡張期血圧ともに低下した.総コレステロールは低下した.尿中及び血清中骨代謝マーカーは上昇した.運動能力の反応時間は短縮し,上体おこしは回数が増加した.本教室は高コレステロール血症及び高血圧の改善に有効であった.
運動実践指導教室,栄養指導,生活習慣病,高コレステロール血症,高血圧,骨代謝マーカー,尿中デオキシピリジノリン,栄養摂取量,中高年女性

 

日本における事故死の精密分析
 平成9年における不慮の事故による死者は,男子24,984名,女子13,941名であり,男子では約55%,女子では75%を60歳以上が占める.交通事故を除いた事故でみると,男子では死亡者の約60%を60歳以上が占め,女子ではそれが85%に達することが明らかとなった.平均死亡率比で1995〜1997年の事故死を分析すると,大都市・大都市近郊で事故死が少ないことが分かった.事故死を細分し窒息死・転倒転落死・溺死等に分けて見てみると,大きな地域差が観測された.これが,今後の事故死の改善への一つのヒントになるものと考えられる.
人口動態統計,事故死,SAGE,世代マップ,死亡率比,年齢調整死亡率

 

衛生研究所の情報連携
 インターネットを利用した国立研究機関と地方衛生研究所の情報連携について,ソフトとハードの両面から考察した.衛生研究所がWWWサーバを用い,各自の得意分野の情報を住民に提供すると共に,地方衛生研究所全国協議会などが各研究所の情報を集約し,情報の所在案内を行うことが必要であることが明らかとなった.インターネットを利用して研究所が地域住民に情報提供するのに要する経費は,提供形態に応じ約10〜120万円/年である.どのような情報提供形態をとるかは,研究所の判断に委ねられるべきであろう.
地方衛生研究所,インターネット,メーリングリスト,WWWサーバ,IP接続

 

地方衛生研究所Webサイトの構築
 近年,インタ−ネットの普及が急速に進み,国立試験研究機関はもとより,地方衛生研究所でも25の機関でWebサイトが開設され,WWWサーバを利用したホームページによる情報提供が始まっている.そこで,地方衛生研究所間のネットワークを進めるため,ドメインネーム(chieiken.gr.jp)を取得し,DNSサーバ,WWW(World Wide Web)サーバ,メールサーバで構成されるWebサイトを構築した.地方衛生研究所の情報提供を効果的に行うための具体的な方策を検証し,地衛研間や国研との連携をより緊密にすることを目的に,ホームページを作成し,メーリングリストの運用を行った.
衛生研究所,保健情報,公衆衛生情報,インタ−ネット,Webサーバ,ホームページ

 

毒劇物・危険物管理システムの構築
 毒劇物・危険物試薬の請求・発注・納品管理を支援するシステムを構築した.研究部門で入力した薬品類購入依頼データを元に,用度係で発注・納品処理を行う.契約によって緒手続きや帳票が異なるため,事務部門(用度係)における事務作業が繁雑になっているが,このシステムを利用することで,その作業量の軽減化に貢献できた.また研究部門へ毒物・劇物・危険物毎に納品日順に納入薬品類一覧を通知することが可能となり,在庫管理の一助となった.
毒劇物,危険物,発注システム,データベース管理システム

 

東京都衛生検査所精度管理調査におけるHBs抗原検査の1995〜1999年の結果
 東京都内の登録衛生検査所を対象として,HBs抗原検査の精度管理調査を5年間実施した.検査法としては,RIA,イムノクロマトグラフィ,RPHA等の7法が用いられていたが,検査法によって検査結果に相違がみられた.特にRPHAなどの検出感度の低い検査法を採用している施設では,誤った判定がみられた.また,同じ検査法でも試薬によって検査結果に違いがあった.今後,検出感度の高い検査法を採用し,判定困難な場合は確認を行うこと,さらに,判定基準を確立して判定の過ちを防ぐ必要のあることが判った.
衛生検査所,外部精度管理調査,HBs抗原検査

 

平成11年度東京都食品衛生検査施設GLP内部点検調査報告
 平成11年度の東京都食品衛生検査施設に対する信頼性確保部門の業務として,衛生研究所22,市場衛生検査所16,食肉衛生検査所2,食品環境指導センター2,東京都保健所12の合計54施設を対象に,GLP内部点検を実施した.各施設とも昨年度に比べGLPの推進に一層の理解と努力がみられ,13施設において改善措置の要請が必要なかった.改善措置が必要とされた施設においても,ほとんどの場合が書類についての記入や訂正方法の不備であり,これらの点でなお一層の注意,努力が必要とされるが,全般的には良好と判断された.
適正検査基準,内部点検,信頼性確保部門

 

東京都環境放射線測定サイト東京都感染症情報センター東京都健康安全研究センターサイト
〒169-0073
東京都新宿区百人町3丁目24番1号
tel. 03-3363-3231
e-mail. tmiph<at>section.metro.tokyo.jp
※<at>を@に置き換えてメールをお送りください。問い合わせ先の詳細については、こちらをご覧ください。
本ホームページに関わる著作権は東京都健康安全研究センターに帰属します
© 2022 Tokyo Metropolitan Institute of Public Health. All rights reserved.