研究年報 第64号(2013) 和文要旨

 

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和文要旨
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総説

東京都における違法ドラッグの分析
 違法ドラッグとは,法律的な定義はないが,飲用や吸引等により多幸感や陶酔を高めるものとして販売されている製品を指す.東京都健康安全研究センターでは,薬物乱用防止を目的として平成8年度より福祉保健局健康安全部薬務課と共同で違法ドラッグの薬物分析調査を行っている.当研究科では規制薬物の検出を目的とした試験検査とともに,新規未規制薬物の構造決定・分析法の開発に取り組んでいる.本報では,指定薬物制度開始以前の平成15年度から開始後の平成23年度の9年間に実施した調査結果や作成した分析法を総括し,違法ドラッグの流行の推移や分析時の注意点について解説する.
 平成15-23年度の総検出薬物数は119種であった.検出の傾向としては指定薬物制度開始以前,亜硝酸エステル,トリプタミン系薬物,ピペラジン系薬物を多く検出していたが,開始後はカチノン系薬物,合成カンナビノイドが流通の中心となった.フェネチルアミン系薬物は規制後も流通が続いていた.制度が開始された平成17年度から平成21年度までは麻薬や指定薬物等の規制薬物を検出する事例はほとんどなかったが,平成22年度からは多発した. 
違法ドラッグ,分析ライブラリー,スクリーニング,麻薬,指定薬物,HPLC/PDA,GC/MS,NMR,構造異性体,単離精製

 

畜水産食品中の残留有機塩素系農薬
 東京都では健康危害の防止を目的に食品中の残留農薬等の監視を実施している.本稿では畜水産食品を対象に残留性の高い有機塩素系農薬の規制,分析法および残留実態について述べる.2000年から2004年に都内で入手した食肉,鶏卵,牛乳及びサケ類を対象に有機塩素系農薬の残留濃度を調査した結果,主にDDTが高い頻度で検出され,低濃度での残留が認められた.また,2006年のポジティブリスト制施行後,日常分析における有機塩素系農薬の残留では,食肉(筋肉)で定量限界を超えての検出は認められなかったが,魚介類等でDDT等の検出事例があった.2011年には,国内にて有機塩素系農薬に汚染された飼料を給与された牛の検体から基準を超えるBHCが検出された.このような基準違反があることから,今後も畜水産食品中の残留農薬の継続的な監視が必要である.
有機塩素系農薬,残留農薬,畜水産食品,DDT,BHC,食肉

 

論文Ⅰ 感染症等に関する研究

東京都内のHIV検査例における梅毒・クラミジア抗体検査成績
 東京都におけるHIV感染者の性感染症の罹患状況を掴むため, HIV・性感染症対策事業におけるHIV検査陰性例および陽性例について梅毒・クラミジア検査陽性率の比較を行った.
 その結果,HIV検査陰性例の梅毒・クラミジアの陽性率が特別区事業でそれぞれ1.6%,25.7%,南新宿検査・相談室のエイズ月間事業でそれぞれ4.2%,23.9%であったのに対し,HIV検査陽性例では特別区事業で21.6%,43.2%,エイズ月間事業では43.3%,63.3%と高い抗体陽性を示した.
 今回の調査から,HIV感染例では梅毒・クラミジア抗体陽性率が高く,それらとの密接な関連が示され,HIV感染症対策と同時に性感染症対策も重要である事が改めて示唆された.
HIV,梅毒,クラミジア,多重感染

 

論文Ⅱ 医薬品等に関する調査研究

向精神作用を有する薬物の分析調査について (平成24年度)
 平成24 年度に行った市販製品中における向精神作用を有する薬物の調査結果を報告する.薬物の機器分析は,主にフォトダイオードアレイ検出器付液体クロマトグラフィー(LC/PDA),電子イオン化質量分析計付ガスクロマトグラフィー(GC/EI-MS)を用い,必要に応じて核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定法及び単結晶X 線構造解析法にて構造解析を行った.調査した110 製品のうち,全ての製品から何らかの薬物が検出された.検出された薬物は,総数35 種の薬物が
検出され,そのうち新たに検出された薬物(新規検出薬物)は26 種,薬事法指定薬物9 種であった.
 市販製品の分析の結果,新規検出薬物はカチノン系薬物及びその他類似薬物が8 種(4-ethylmethcathinone, 4-methylbuphedrone, MPHP, α-PVT, 5-IAI, methiopropamine, ethylphenidate, AH-7921),カンナビノイド系薬物は18 種(AM2232, JWH-122-N-(4-pentenyl) analog, JWH-122-N-(5-hydroxypentyl) analog, EAM-2201, 4-methoxy-AM2201, UR-144, XLR-11, A-836339, APICA N-(5-fluoropentyl) analog, ADBICA, NNEI, APINACA N-(5-fluoropentyl) analog, AB-PINACA, ABFUBINACA,ADB-FUBINACA, PB-22, 5F-PB-22, BB-22)の併せて26 種であった.
特に,A-836339 は分子内に硫黄原子を含むカンナビノイド系薬物化合物としては初めての検出例で、その構造解析には単結晶X-線構造解析法が有用であった.
 違法ドラッグ,指定薬物,LC/PDA,GC/EI-MS,単結晶X-線構造解析.

 

化粧品から検出されたホルマリン,防腐剤及び紫外線吸収剤の検査結果
(平成20~23 年度) 
 平成20年度から23年度に薬事監視員が搬入した化粧品596製品について,化粧品基準に定められたホルマリン,防腐剤13成分,紫外線吸収剤13成分を対象とした検査結果をまとめた.分析にはフォトダイオードアレイ検出器付高速液体クロマトグラフィーを用いた.配合禁止成分であるホルマリンは,ホルムアルデヒドとして検査し,9製品から検出した.防腐剤13成分については,パラオキシ安息香酸エステル類やフェノキシエタノールの検出頻度が高かった.化粧品基準に定められた最大配合量を超過した濃度の防腐剤を検出した化粧品は3製品であった.また,表示されていない防腐剤を検出した化粧品は35製品であった.紫外線吸収剤では,パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルの検出頻度が高かった.最大配合量を超過した濃度の紫外線吸収剤を検出した化粧品はなかった.表示されていない紫外線吸収剤を検出した化粧品は2製品であった.今後も,化粧品における検査結果を蓄積し,ホルマリンや防腐剤,紫外線吸収剤の使用実態の把握に努めたいと考えている. 

化粧品,ホルマリン,ホルムアルデヒド,防腐剤,紫外線吸収剤 

  

論文Ⅲ 食品等に関する調査研究

甲殻類に残留する4-ヘキシルレゾルシノールのLC/MSによる分析 

 4-ヘキシルレゾルシノール(4-HR)は,エビやカニなどの甲殻類に対して,カナダ,中国,EU などの諸外国で黒変防止目的に使用されている.しかし,わが国では食品添加物としての使用が許可されていない.今回,4-HR について既報(HPLC 法)の前処理用カートリッジカラム溶出液やLC の移動相を検討し,LC/MS による確認法を確立した.LC/MS法ではSCAN モード(m/z 50~300)でマススペクトル上,[M-H]-(m/z 193)が確認できた.さらに,LC/MS 法の試験溶液についてそのままHPLC でも分析できることを確認した.あらかじめ4-HR を検出しないことを確認した試料に0.01g/kg となるように4-HR 標準溶液を添加し,添加回収試験を行ったところ,SIR モード(m/z 193)及びHPLC 法で回収率80%以上,変動係数5%以下と良好な結果が得られた.なお,LC/MS 法での検出限界はSCAN モードで0.005 g/kg,SIRモードで0.001 g/kg,HPLC 法での定量限界は0.002 g/kg であった.本法を用いて,2012 年度に都内で購入したエビ27 試料及びカニ7 試料を分析したところ,4-HR を検出した試料はなかった.今回,4-HR を検出した試料はなかったが,同じ目的で添加される亜硫酸塩を使用している製品はあることから,引き続き調査を行っていく必要があると考える.  

4-ヘキシルレゾルシノール,液体クロマトグラフ/質量分析計,甲殻類,エビ,カニ,黒変,亜硫酸塩 

 

ウォーターサーバーの細菌学的調査 

 近年,水を宅配により販売し,専用の機器に設置して冷水あるいは温水として供給するいわゆるウォーターサーバー水が普及してきている.その一方で,保健所に寄せられるペットボトル水及びウォーターサーバー水の苦情件数は増加していることから,ウォーターサーバー水の細菌学的な衛生状況を明らかにすることを目的として,実態調査及び使用試験を行った.
 その結果,サーバー使用施設の実態調査において,リターナブル型サーバー未開封ボトル水の7検体中1検体から101cfu/mLオーダー,サーバー冷水口の水では27検体すべてから101~104cfu/mLオーダーの細菌が検出された.また,ワンウェイ常温型サーバーでは,冷水口の水の2検体から104~105 cfu/mLオーダーの細菌が検出されたが,ワンウェイ冷蔵方サーバーの冷水口の水の細菌数は7検体すべてが102 cfu/mL未満であった.
 リターナブル型サーバーの使用試験では,冷水口の水から経常的に101~105 cfu/mLオーダーの細菌が検出された.分離された菌株を16S rDNA塩基配列解析で調べたところ13属に分類され,Sphingomonas 属菌,Caulobacter 属菌,Methylobacterium 属菌が主要な細菌叢であり,腸球菌や緑膿菌は検出されなかった.未開封ボトル水やサーバー本体から検出される細菌と,冷水口の水から検出される細菌叢は共通していたことから,ウォーターサーバー水に混入した細菌は,主に未開封ボトル水やサーバー本体に由来するものと推察された.

 

ウォーターサーバー,細菌数,16S rDNA塩基配列解析,PCR,Sphingomonas 属,Caulobacter 属,Methylobacterium 属 

 

食品の苦情事例(平成24年度) 
 平成24 年度に実施した一般食品苦情に関わる検査の中から顕著な事例4 件を選び報告する.(1)市場で購入したハマチを自宅で水煮にして食べたら,薬品臭がした.ガスクロマトグラフ質量分析計で分析した結果,p-ジクロロベンゼンが検出された.異臭の原因は,苦情品の近くに置かれた防虫剤又は衣料品などから気化したp-ジクロロベンゼンが苦情品に吸着した可能性が推察された.(2)輸入品のポリ袋入りオートミールを購入し,自宅で喫食したら,ミント臭を感じ口の
中や喉がしびれた.ガスクロマトグラフ質量分析計で分析した結果,メタクリル酸メチル,ヘキサナール,α-ピネン,β-ピネン,dl-リモネン及び1,8-シネオールが検出された.異臭の原因は,気化しやすい物質がオートミールの袋のそばに置かれたため,気化した異臭物質が包装のポリ袋を通過してオートミールに吸着した可能性が考えられた.(3)精肉店で購入した豚肉を自宅で調理し喫食したら,中からガラス様異物が出てきた.顕微鏡観察及び蛍光X線分析を行った結果,
異物は水晶の破片であると推察された.この水晶の破片の混入原因は不明であった.(4)コンビニエンスストアーで購入したキャベツ千切りパックを自宅で喫食したら,木片のような異物が出てきた.顕微鏡観察及び赤外分光光度計による検査を行った結果,異物はキャベツの芯の維管束(木部)であると推察された. 

 食品苦情,異物混入,異臭,p-ジクロロベンゼン,メタクリル酸メチル,精油成分,ガラス, 水晶,木片様異物

 

 食品中の特定原材料(卵,乳,小麦,そば,落花生,甲殻類)の検査結果-平成23~24年度-

 食物アレルギーによる健康危害未然防止のために食品へのアレルギー物質表示が義務化されているが,表示が適正に行われているか確認する目的で,平成23年度から平成24年度に行った検査結果を報告する.東京都内で製造または流通している食品のうち,平成23年度は卵を対象として22検体,乳を対象として4検体,小麦を対象として13検体,落花生を対象として2検体,えびおよびかにを対象として9検体,計50検体を検査した結果,ELISAによるスクリーニング試験でいずれも
陰性であった.平成24年度は卵を対象として17検体,乳を対象として15検体,小麦を対象として5検体,そばを対象として12検体,えびおよびかにを対象として9検体,計58検体を検査した.その結果,ELISAによるスクリーニング試験で卵およびそばを対象とした検査でそれぞれ1検体が陽性であり,これら以外の56検体はすべて陰性であった.陽性であった検体について,卵を対象とした検体はウエスタンブロットによる確認試験,そばを対象とした検体はPCRによる確認試験を行った結果,いずれも陽性であった.なお,これらの検体はどちらも原材料表示に検査対象となる特定原材料の記載はなかった.

 食物アレルギー,特定原材料,卵,乳,小麦,そば,落花生,えび,かに

 

化学物質及び自然毒による食中毒等事件例(平成24年) 

 平成24年に東京都内で発生した化学物質及び自然毒による食中毒及び有症苦情事例のうち,検査によって原因が明らかとなった7例を報告し,今後の食中毒等発生防止及び食中毒等発生時の迅速な検査の参考に供することとする.1.ソラニン類による食中毒1例:ジャガイモを喫食して舌の痺れ,吐き気などの症状を呈した事例で,ソラニン類についてHPLCによる分析を行った.その結果,残品からα-ソラニンを330 μg/g,α-チャコニンを440 μg/g検出し,ソラニン類による食中毒と断定された.2. 界面活性剤による食中毒2例:天ぷらを喫食して吐き気,味覚異常等の症状を呈した事例で,界面活性剤についてTLCによる分析を行った.その結果,いずれの事例も残品から界面活性剤を検出し,界面活性剤の混入による食中毒と断定された.3. ヒスタミンによる食中毒3例:アジやマグロの調理品を喫食して発疹や顔面紅潮などを呈した事例で,ヒスタミンについてTLCによる定性分析及びHPLCによる定量分析を行った.その結果,いずれの事例も残品等から360~670 mg/100 gのヒスタミンを検出し,いずれもヒスタミンによる食中毒と断定された.4. 有毒植物による有症苦情1例:植物の実を喫食して嘔吐,手のしびれなどの症状を呈した事例で,植物の鑑定を行った.その結果,残品は有毒植物のヨウシュヤマゴボウであることが判明し,有毒植物の実による有症苦情と推定された. 

 化学性食中毒,ジャガイモ,ソラニン,界面活性剤,アジ,マグロ,ヒスタミン,ヨウシュヤマゴボウ

 

 食品中の放射性物質の検査結果
(平成24 年4 月~平成25 年3 月)
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故後の放射性物質による食品汚染に関連して,平成24年月1日に食品中の放射性セシウムの新たな基準値が設定された.本報では,新たな基準値に基づき,平成24年4月から平成25年3月における都内流通食品について実施した放射性物質の検査結果を報告する.検査は,ゲルマニウム半導体核種分析装置及びヨウ化ナトリウム(タリウム)シンチレーションスペクトロメータを用いて実施した.測定対象核種はI-131,Cs-134,Cs-137とした.国産の牛乳117検体,飲料水51検体,乳児用食品30検体,一般食品525検体及び輸入の一般食品100検体の合計823検体について検査した.その結果,放射性ヨウ素はいずれからも検出されなかった.放射性セシウムは,国産品の牛乳3検体,一般食品3検体,輸入の一般食品2検体から検出され,それぞれ3.4~4.6 Bq/kg,10~95 Bq/kg,13~48 Bq/kg,であった.しかし放射性セシウムの基準値を超えるものはなかった.本検査結果から,国産品は生産地での適切な管理を受けて流通していることが推察された. 
 放射性物質,核種分析,ヨウ素,セシウム,ゲルマニウム半導体核種分析装置,ヨウ化ナトリウム(タリウム)シンチレーションスペクトロメータ,食品

 

 食品としての利用を認められた医薬品成分(ガンマアミノ酪酸,クルクミン,
カルニチン)を含有する健康食品の実態調査について
 医薬品成分を含有する健康食品は,小売店やインターネットを通じて手軽に購入できる.しかし,健康食品中の医薬品成分の含有量は不明であり,健康食品の過剰摂取による健康被害の発生が懸念されている.そこで健康食品による健康被害の未然防止に役立つ資料を得る目的で,ガンマアミノ酪酸,クルクミン,カルニチンを含有する各健康食品について含有量を調査した.ガンマアミノ酪酸19 製品はアミノ酸自動分析装置で,クルクミン21 製品とカルニチン22 製品は,高速液体クロマトグラフィーで分析した.その結果,製品の1 日摂取目安量あたりの含有量はガンマアミノ酪酸で8.0~140mg,クルクミンで6.3~280 mg, カルニチンで49~1,100 mg であった.また,表示値に対する分析値の割合はガンマアミノ酪酸で80~131%,クルクミンで20~136%,カルニチンで79~145%であった.本研究によってこれら医薬品成分の含有実態を知ることができた.
 健康食品,食品,医薬品成分,実態調査,含有量,摂取量,健康被害,ガンマアミノ酪酸,クルクミン,カルニチン

 

 輸入農産物中の残留農薬実態調査(野菜・その他)- 平成24年度 -

  平成24年4月から平成25年3月に東京都内に流通していた輸入農産物の野菜,きのこ,穀類及び豆類,45種167作物について残留実態調査を行った.その結果,20種52作物(検出率31%)から殺虫剤(アセタミプリド,ビフェントリン,ブプロフェジン等)及び殺菌剤(アゾキシストロビン,ボスカリド,キャプタン等)合わせて41種類の農薬(有機リン系農薬3種類,有機塩素系農薬7種類,カルバメート系農薬2種類,ピレスロイド系農薬5種類,含窒素系及びその他の農薬24種類)が,痕跡(0.01 ppm未満)~0.48 ppm検出された.このうちジフェノコナゾールが,西洋わさびから0.04 ppm,また,未成熟えんどうから0.02 ppm各々検出され,これらは一律基準値(0.01 ppm)を超えたため食品衛生法違反となった.日常的な摂取量に換算すると,これらの残留量はジフェノコナゾールに設定された通常の喫食においてヒトの健康へ影響を及ぼすものではないとされる一日摂取許容量(ADI)の,それぞれ1/260と1/680程度であった.

 残留農薬,輸入農産物,野菜,きのこ,穀類,豆類,殺虫剤,殺菌剤,残留基準値,一律基準値

 

輸入農産物中の残留農薬実態調査(果実類)-平成24年度- 
  平成24 年4 月から平成25 年3 月に都内に流通していた輸入農産物のうち,果実類21 種121 作物について残留農薬実態調査を行った.その結果,20 種69 作物(検出率57.0%)から殺虫剤,殺菌剤,除草剤及び共力剤合わせて51 種類の農薬(有機リン系殺虫剤7 種類(クロルピリホス,マラチオン他),カルバメート系殺虫剤2 種類(カルバリル,メソミル),有機塩素系農薬5 種類(イプロジオン,キャプタン他),ピレスロイド系殺虫剤7 種類(シペルメトリン,ビフェントリン他),含窒素系殺虫剤7 種類(イミダクロプリド,クロチアニジン他),含窒素系殺菌剤20
種類(イマザリル,チアベンダゾール他),含窒素系除草剤2 種類(シマジン,ブロマシル),その他共力剤1 種類(ピペロニルブトキシド))が痕跡(0.01 ppm 未満)~2.4 ppm 検出された.このうちメキシコ産ブルーベリーからビフェントリンが一律基準値(0.01 ppm)を超えて0.11 ppm 検出され,食品衛生法違反となった.日常的な果実摂取量に換算すると,この残留量は一日摂取許容量(ADI)に対して1/50 程度であった.この他に食品衛生法の残留農薬基準値を超えて検出されたものはなかったが,ベリー類,ぶどう,おうとう等からは,ひとつの作物から複数の農薬が検出される傾向が見られた.一度に複数の農薬を摂取することになるため,食の安全性確保の観点から今後も継続的に調査し,注視していく必要があると思われた. 
 残留農薬,輸入農産物,果実,殺虫剤,殺菌剤,除草剤,農薬共力剤,残留基準値,一律基準値

 

国内産野菜・果実類中の残留農薬実態調査   ― 平成24年度 ― 

  平成24年4月から平成25年3月に東京都内に流通していた国内産農産物30種43作物について残留農薬実態調査を行った.その結果15種21作物(検出率49%)から29種類の農薬(殺虫剤16種類,殺菌剤12種類及び除草剤1種類)が痕跡(0.01 ppm未満)~0.39 ppm検出された.食品衛生法の残留基準値及び一律基準値(0.01 ppm)を超えたものはなかった.今後も継続的な調査を実施し、検出農薬の動向を注視していく必要があると考えられた。 

残留農薬,国内産農産物,野菜,果実,殺虫剤,殺菌剤,除草剤,残留基準値,一律基準値 

 

 味噌に混入するダニ類等の実態調査
   平成22年度に東京都が行った食品の製品調査で,味噌からダニ類が検出された.このため,筆者らは都内で販売されている味噌についてダニ類の汚染実態を調査した.調査は,平成23年4月から平成25年2月まで行った.40検体中19検体(47.5%)からダニ類を検出し,15検体(37.5%)から節足動物破片を検出した.検出されたダニ類のほとんどがサトウダニであった.味噌の製造に金属製容器を使用してダニ類が検出されたのは,11検体中1検体(9.1%),木製容
器では17検体中12検体(70.6%)であった.今回の調査から,現在でも味噌からダニ類は高率に検出されること,また木製容器を使用している味噌からダニ類の検出率が高いことが分かった.しかし,検出された総ダニ数では肉眼での確認は困難な数であることから,低温保管を行えばダニ類の繁殖が抑えられ,苦情になる懸念は少ないものと考えられた.一方,肉眼での確認が可能な節足動物破片も見られたことに対しては,節足動物が混入しないような製造工程の管理が望ましいと考えられた.
 味噌,ダニ類,サトウダニ

 

論文Ⅳ 生活環境に関する調査研究

 酸化触媒式DPFの有無によるディーゼル排出ガス中有機酸濃度の比較
 東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県の一都三県は,2003年に粒子状物質(PM)の排出量によるディーゼル車の走行規制を開始し,排出基準を満たさない車両には排気微粒子除去装置(DPF)の装着が義務付けられた.DPFはPM除去を主な目的としているが,今日汎用されているDPFは,酸化触媒を組み合わせ,排出ガスの浄化機能を持たせた酸化触媒式DPFである.そこで,この酸化触媒式DPFの装着による排出ガスの成分変化を調査するため,小型ディーゼルエンジン(排気量
309cc)の排出ガスについて,揮発性有機化合物,アルデヒド類,有機酸類の計81物質を分析し,酸化触媒式DPFの有無による比較を行った.DPF非装着で濃度が高かったのはホルムアルデヒド,アセトアルデヒドであったが,DPF装着では酢酸,ギ酸が高かった.物質群別では,DPF装着によりアルデヒド類は約1/50に減少し,有機酸は約3倍に増加した.また,実際に市中を走行している2台のディーゼル車(2 tトラック,平成17年度新長期規制適合車)について,40 km/hで走行中の排出ガスを採取し,同様の分析を行ったところ,主な排出物質は2台ともに酢酸,ギ酸であり,物質群別では有機酸が全体の60%以上を占めていた.以上の結果から,小型ディーゼルエンジン,ディーゼル車ともに,酸化触媒式DPFを装着した場合は,触媒により排出ガスが酸化され,有機酸が主要な成分となることが明らかとなった. 
 ディーゼル排気微粒子除去装置(DPF),酸化触媒,排出ガス,ギ酸,酢酸

 

環境水中における1,2,3-トリクロロベンゼンの分析方法の検討及び実態調査 

 平成24年3月5日付の厚生労働省健康局水道課長通知「「水道水質管理計画の策定に当たっての留意事項について」の一部改正について」において, 1,2,3-トリクロロベンゼン(1,2,3-TCB)が新たに要検討項目に追加された.そこで,1,2,3-TCBについて,パージ&トラップ-質量分析計付ガスクロマトグラフ(P&T-GC/MS法)による分析方法を検討し,パージ時間が8~10分で低濃度(0.1 μg/L未満)の分析が可能であることが分かった.また,水道法の検査項目である22成分の揮発性有機化合物(VOC)との同時分析が可能か検討したところ,1,2,3-TCBの濃度が0.1~10 μg/Lではパージ時間4分で同濃度レベルのVOCとの同時分析が可能であり,今後の検体を分析していく上で、効率的な分析方法を確立できた.しかし,パージ時間を8~10分とした場合は,濃度5 μg/L以上でVOCのピーク形状が悪化する等の影響が認められたため,低濃度の1,2,3-TCBを分析する場合には,パージ時間8~10分で単独に分析を行うのが望ましいことが分かった.1,2,3-TCBの単独分析法を用いて多摩水系の河川水11地点及び多摩地区の飲用井戸(塩素消毒あり
:71地点、塩素消毒なし:14地点)の実態調査を行った結果,すべての調査地点で,濃度は定量下限値の0.04 μg/L未満であった. 
 1,2,3-トリクロロベンゼン,揮発性有機化合物(VOC),GC/MS,パージ時間,多摩川水系,飲用井戸

 

図書館及び保育園における室内空気中化学物質濃度の実態調査
 -アルデヒド類,VOC類及びTVOCについて- 

 本研究は,子供の生活環境における各種有害化学物質濃度の実態把握と低減化に貢献することを目的に,図書館3施設及び保育園3施設の室内空気中における61種の化学物質濃度と総揮発性有機化合物(TVOC)の濃度を測定した.試料は,休館日の図書館及び開園日の保育園において,室内空気を捕集管に30分間採取した.当該採取時には,あわせて簡易モニター(FTVR-01)によるTVOC濃度の測定も行った.調査の結果,指針値を超えた物質はなかったが,トルエン換算によるTVOC値(TVOCt)は図書館1施設で暫定目標値を超えていた.高濃度に検出された物質は,図書
館で2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H),保育園でエタノールであった.2E1Hは図書が,エタノールは消毒用エタノールの使用が,それぞれ発生源になった可能性が考えられた.また,新築の図書館の室内空気について,竣工直後から16ヶ月後まで経時的に調査した結果,竣工直後では,特にアルカン類及びケトン類の濃度が高いことが判明した.また,FTVR-01による測定で得られたTVOC値(TVOCd)は,TVOCtとの間に有意な相関が見られたが,6割以上の室内でTVOCtよりも大きな値を示した.これは,FTVR-01がエタノール及びホルムアルデヒドのような高揮発性物質も検知したことが一因と考えられ,この機器は,室内空気中に存在する多種の化学物質量の測定に有用であると考えられた. 

 室内空気,総揮発性有機化合物,2-エチル-1-ヘキサノール,図書館,保育園

 

都内の放射線量の推移とモニタリングポスト異常値対応 
 2011年3月の東日本大震災によって発生した福島原発事故を受けて,都では都内7地点のモニタリングポスト(MP)で空間放射線量率の測定を実施し,ホームページ上で公開している.測定結果に対する都民の関心は高く,線量率が上昇した場合には原発事故との関連性についての問い合わせも寄せられる.今回,原発事故が発生した2011年3月から2013年2月までの2年間のモニタリングポスト測定データの集計解析を行い,都内の放射線量の推移についてまとめた.また,しばしば検出された放射線量率の一時的な上昇の原因について,原発事故との関連性の検討ならびに原因究明を行った.新宿MPの2011年3月中の空間放射線量率の推移において,事故直後の3月15日に数値が急上昇した原因はキセノン133を主とする気体状の放射性プルームの新宿MP付近の通過とガンマ線スペクトル解析結果から考えられた.また,3月20日から22日にかけての線量率上昇は,降雨によりセシウム134と137が降下したことが原因と考えられた.空間放射線量率は多摩地区で低く区部で高い傾向があり,原因はセシウム134及び137の降下量の違いによると推察された.2011年6月~2013年3月までの調査期間で,空間放射線量率が一時的に上昇し,原因究明の解析を行った回数は61回で,原因は降雨が50回で最も多く,解析したすべての事例は福島原発事故以外の原因と考えられた.  
 モニタリングポスト,都内,空間放射線量率,ガンマ線スペクトル,キセノン133,ヨウ素131,セシウム134,セシウム137

 

東京都健康安全研究センターにおける環境放射能調査の概要及び降水中の全ベータ放射能の推移 

 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故により,大量の放射性物質が環境中に放出された.都では環境放射能調査を実施し,結果を国に報告すると共に東京都健康安全研究センターのホームページで公開している.調査結果への都民の関心は高く,現在だけではなく原発事故以前の状況への問い合わせも多い.今回,これまでの結果や報告書及び当センターに蓄積された資料をもとに,現在までの当センターにおける環境放射能調査の概要及び降水中の全ベータ放射能調査結果をまとめた.
 東京都立衛生研究所(現.東京都健康安全研究センター)は1957年より科学技術庁の委託事業として環境放射能調査に参加しており,測定項目,調査対象品目,調査回数及び調査地点は若干変遷しているものの,全ベータ放射能,空間放射線量率及び核種分析の調査を継続して実施している.非常時の事例では,チェルノブイリ原子力発電所事故,3回にわたる北朝鮮核実験及び福島第一原子力発電所事故発生時において,監視体制及び対策を強化し,空間放射線量率,全ベータ放射能または核種分析の結果を連日国へ報告すると共に,福島第一原子力発電所事故の際はホームペ
ージにおいても結果を公表した.
 降水中の全ベータ放射能は,中国の大気圏内核実験が原因と思われるピークが6回観察され,チェルノブイリ原子力発電所事故においては1986年5月4日から放射能濃度の上昇が認められ,5月6日をピークとしてその後は急激に減少した.今後,月間降下物の核種分析結果についてもまとめることにより,福島原発事故による汚染状況と今後の経年的な推移並びにその環境影響を評価が可能であると考えられる. 

環境放射能,大気圏内核実験,チェルノブイリ原子力発電所事故,北朝鮮地下核実験,福島第一原子力発電所事故,降水,全ベータ放射能,ゲルマニウム半導体検出器,核種分析,放射化学分析 

 

 水道原水・浄水における原虫類並びに糞便汚染指標細菌についての調査結果
(平成19年度~平成24年度)

 平成19年度~24年度に採取された水道原水92件,浄水93件について,原虫類並びに糞便汚染指標菌の実態調査を行った.その結果,原虫類については,原水1件でジアルジア(1個/10 L)が検出されたものの,クリプトスポリジウムは全ての原水及び浄水で検出されなかった.また,糞便汚染指標菌については,原水では検出されたが,浄水では大腸菌群が1件で検出されたものの,クリプトスポリジウム汚染のおそれの指標菌である大腸菌は全てで不検出であった。このことから、適
切な浄水処理が行われていることが示された. 

 クリプトスポリジウム,ジアルジア,原水,浄水,糞便汚染指標菌

 

東京都内の冷却塔水におけるレジオネラ属菌の生息実態調査
(平成24年度) 

 国内でのレジオネラ属菌(Legionella spp.)感染事例は浴槽水に起因するものが最も多いが,海外の事例を考慮すると,国内でも冷却塔水を原因とする感染事例が潜んでいる可能性が考えられる.このような実態をふまえて平成24年度の冷却塔水のレジオネラ属菌の生息実態調査結果を報告する.
 冷却塔水220件中93件(42.3%)からレジオネラ属菌が検出された.レジオネラ症防止指針の指針値100 CFU/100mLを超えたものが64件(29.1%)あり,最大検出菌数は91,000 CFU/100mL であった.
 分離されたLegionella spp.133 株のうち,L .pneumophila は122 株あり,血清群別ではSG(sero group)1 が70 株,SG7 が24 株,SG13 が14 株,SG5 が8 株の順で多く,浴槽水での検出頻度の高い血清群とは分布が異なっていた.また,L. pneumophila 以外の11 株中,L. rubrilucens が1 株,L. feeleii が3 株同定され,免疫血清反応で陰性だった7
株はすべて遺伝子検査(LAMP 法)で陽性となりLegionella spp.と同定された.
 また,都内2 施設の特定建築物の冷却塔4 基について,稼働期間中に定期的にレジオネラ属菌調査を行ったところ,新築のA 施設の冷却塔2 基からは調査期間中1 度もレジオネラ属菌は検出されなかったが,B 施設の冷却塔B-1 で最大検出菌数220 CFU/100mL,菌種は常にL. pneumophila SG1 を検出し,冷却塔B-2 では最大810 CFU/100mL 検出された.菌種はL. pneumophila SG13 およびL. feeleii が検出されており,市販の抗血清等では同定が難しいものであった.
 本調査の結果,およそ半数の冷却塔からレジオネラ属菌が検出されていること,市販の抗血清で同定が難しい菌種が検出されていることから,今後も継続して調査が必要である.  
 レジオネラ属菌,冷却塔水,血清群

 

論文Ⅴ 生体影響に関する調査研究

多層カーボンナノチューブの腹腔内投与によるマウス胎仔および母体への影響
 多層カーボンナノチューブの安全性試験の一環として,マウスを用いた催奇形性試験を行った.多層カーボンナノチューブを2%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁して,0.0(対照群),0.2,1.0,5.0 mg/kg体重(実験1)あるいは,0.0(対照群),2.0,3.0,4.0 mg/kg体重(実験2)を,妊娠9日のCD1(ICR)マウス母体に腹腔内投与し,妊娠18日に,妊娠に関する指標と,胎仔および母体への影響を検査した.実験1の5.0 mg/kg群で,妊娠18日の母体あたり生存胎仔数が減少し,母体あたりの早期死胚数が上昇し,生存していた胎仔26例中2例に,四肢の減形成が見られた.また,5.0 mg/kg群の母体の脾臓重量が増加し,白血球数,特に好中球数および好酸球数が有意に上昇した.実験2の4.0mg/kg群で,生存胎仔数が減少し,早期死胚数が増加した.実験2の全ての投与群の雌雄の生存胎仔平均重量が低下した.3.0 mg/kg群と4.0 mg/kg群で外表奇形(四肢減形成,無尾・短尾)の発現が増加し,全ての投与群で骨格奇形(脊
椎癒合・不整,肋骨癒合・不整,指骨の欠損,指骨の過多)の発現が増加した.また,実験2の全ての投与群で,母体の脾臓重量が増加し,白血球数,特に好中球数および好酸球数が増加していた.多層カーボンナノチューブは,2.0 mg/kg体重以上の腹腔内投与で母体の脾臓重量の増加や白血球数の増加をもたらすとともに,胎仔においては著しい催奇形性を示した.多層カーボンナノチューブの母体免疫系への影響による胎仔毒性発現,あるいは,多層カーボンナノチューブの胎盤通過性や胎児/仔への移行などの作用機序についての検討が必要であると考えられる.  
多層カーボンナノチューブ,マウス,腹腔内投与,胎仔,早期死胚,四肢減形成,脊椎癒合,白血球数,好中球数,好酸球数,脾臓

 

多層カーボンナノチューブの気管内投与によるマウス胎仔および母体への影響
 多層カーボンナノチューブの安全性評価の一環として,ヒトでの暴露形態に近いと思われる気管内曝露による催奇形性試験をマウスにおいて実施した.多層カーボンナノチューブを2%カルボキシメチルセルロースナトリウム/りん酸緩衝生理食塩水に懸濁して,0.0(対照群),3.0,4.0,あるいは5.0 mg/kg体重を,妊娠9日のマウス母体に単回気管内投与し,妊娠18日に,妊娠に関する指標と,胎仔および母体への影響を検査した.5.0 mg/kg群で生存胎仔総重量および生存胎仔平均重量(雌雄)が減少した.4.0 および5.0 mg/kg群で,四肢減形成,無尾・短尾などの外表奇形と,脊椎癒合・不整,肋骨の癒合・不整,指骨の欠損,指骨の過多などの骨格奇形の発現が増加した.5.0 mg/kg群の母体の肺重量が有意に増加し,4.0および5.0 mg/kg群の母体の白血球数,特に好中球数が有意に増加していた.多層カーボンナノチューブは,4.0 mg/kg体重以上の気管内投与で,母体の白血球数を増加をもたらすとともに,胎仔においては著しい催奇形性を示した.多層カーボンナノチューブの催奇形性の作用機序の解明には,母体免疫系への影響による胎仔毒性発現,あるいは,多層カーボンナノチューブの胎盤通過性や胎児/仔への移行などの検討が必要であると考えられる.
多層カーボンナノチューブ,マウス,気管内投与,胎仔,早期死胚,四肢減形成,脊椎癒合,白血球数,好酸球数

 

論文Ⅵ 公衆衛生に関する調査研究

日本における全がんと白血病による死亡の歴史的・地域的状況

 全がんによる死亡者総数の80%を含む年齢域は,1934-36年には男女とも概ね40歳代から70歳代であったが,漸次高齢化し,2007-09年には男子で60-89歳,女子では60-95歳になっている.死亡年齢の高齢化と同時に死亡者は増加し,近年では,地域差はあまり見られなくなっている.1934-36年と1959-61年の奈良,1934-36年,1986-88年および2007-09年の大阪,1986-88年と2007-09年の福岡において,他の地域と比較して全がんの平均死亡率比が高いことがわかった.
 白血病による死亡者総数の80%を含む年齢域は,1934-36年には男女とも概ね0歳から50歳代であったが,漸次高齢化し,2007-09年には男子で54-89歳,女子では60-95歳になっている.1934-36年,1959-61年,2007-09年の九州・沖縄地方において,他の地域と比較して白血病の平均死亡率比が高いことがわかった.

がん,白血病,地域比較,死亡率比,平均死亡率比,日本,人口動態統計

 

論文Ⅶ 精度管理に関する調査研究

平成24年度 東京都水道水質外部精度管理調査結果について
-シアン及び1,2-ジクロロエチレン-

 東京都では,「東京都水道水質管理計画」に基づき,東京都健康安全研究センターが中心となり,水道事業者及び厚生労働大臣の登録を受けた水道水質検査機関を対象とした外部精度管理を実施している.本稿においては,平成24年度に実施したシアン(シアン化物イオン及び塩化シアン)と1,2-ジクロロエチレン(シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2-ジクロロエチレン)に関する外部精度管理の概要を報告する.シアンでは,参加34機関のうち2機関が判定基準外となった.この内1機関が判定基準外となった原因は不適切な検量線であったが,他の1機関の原因は不明であった.原因が判明した機関に対して提案した改善策は,適切な濃度範囲の検量線の使用であった.一方,1,2-ジクロロエチレンでは,参加37機関のうち2機関が判定基準外となった.これら2機関が判定基準外となった原因は,検査結果の転記ミス,チェック体制の不備,機器の不具合による分析精度の低下であった.これらに対して提案した改善策は,チェック体制の改善,機器の安定性確認の徹底,定期的なメンテナンス,SOP を遵守した適正な検査であった. 
外部精度管理,水道水,シアン化物イオン,塩化シアン,シス-1,2-ジクロロエチレン,トランス-1,2-ジクロロエチレン

 

 

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