研究年報 第69号(2018) 和文要旨

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タイトル
和文要旨
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総説

遺伝子組換え食品の現状および検査状況
 東京都では遺伝子組換え食品の表示および安全性未審査遺伝子組換え食品の混入を監視するため,継続的に遺伝子 組換え食品の検査を行っている.ここでは,遺伝子組換え食品の現状とともに,平成27年4月から平成29年3月までに当センターで実施した遺伝子組換え食品検査結果について報告する.安全性未審査のため国内で流通が認められてい ない遺伝子組換えトウモロコシ(CBH351, Bt10),コメ(63Bt, NNBt, CpTI),パパイヤ(PRSV-YK, PRSV-SC, PRSV-HN)の検査を行った結果,これらの遺伝子組換え作物は検出されなかった.また,安全性審査済み遺伝子組換え食品に関しては,ダイズ穀粒・加工食品およびトウモロコシ穀粒・加工食品について検査を行った結果,意図しない混入率の基準(5%)を超えるものはなかった.
遺伝子組換え食品,安全性審査,表示制度,PCR,リアルタイムPCR,トウモロコシ,コメ,パパイヤ, ダイズ,加工食品

 

事業報告

国内流行が危惧される感染症の検査および分子疫学解析に関する研究
 東京都健康安全研究センターの重点研究の一つとして2015年度から2017年度の3箇年で実施した,「国内流行が危惧される感染症の検査および分子疫学解析に関する研究」の概要を報告する.本研究では,国内発生事例の病原体を含めた特徴の解析,モニタリング調査(デングウイルス,蚊,狂犬病ウイルス)の実施と,そのための効率的な検査手法の開発・検討,次世代シーケンス(NGS)解析を用いた大規模遺伝子データの解析を中心に検討を行った. 主な成果として,蚊媒介性疾患の患者検体からデングウイルスを中心としたウイルスを検出する手法の開発と解析法を確立した.衛生昆虫の調査では,遺伝子配列を解析する手法と種特異プライマーによるPCR法を用い,同定法を確立した.狂犬病ウイルスRNAの安定化剤入りチューブによる輸送法と新たに構築したリアルタイムPCR 試薬の有用性を確認した.三類感染症起因菌である赤痢菌は高頻度に薬剤耐性を持っており,赤痢菌の反復配列多型解析法(MLVA)による解析はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)より詳細に分類された.NGSを用いた病原性細菌の網羅的探索法により新たな食中毒起因菌種を同定し,食中毒事例では臨床検体から検出した原因ノロウイルスのほぼ全長の塩基配列を明らかにした.
デングウイルス,衛生昆虫,狂犬病ウイルス,三類感染症起因菌,次世代シーケンサー,リアルタイムPCR,蚊の調査,モニタリング,MLVA,網羅的解析

 

健康危害要因となりうる食品中の化学物質に関する研究
 平成27~29年度に実施された重点研究「健康危害要因となりうる食品中の化学物質に関する研究」の概要について報告する.本重点研究はヒトに健康危害を引き起こす恐れのある化学物質について,迅速かつ簡便に検査可能な手法を確立して健康危害の原因究明と被害拡大防止に資することを目的とし,5題の個別研究課題から構成され研究が進められた.主な成果として「山菜と誤認しやすい有毒植物の鑑別方法に関する研究」では複数の有毒植物についてフローサイトメトリーや走査型電子顕微鏡を用いた迅速かつ簡便な鑑別法を確立した.「PCR法による有毒動植物鑑別法の検討」では,DNAシークエンス法やPCR-RFLP法等の様々な遺伝子学的手法を用いて有毒動植物の鑑別が可能となった.「有毒動植物中の有毒成分分析法の検討」では,LC-MS/MSを用いた有毒動植物中の有害化学物質の分析法を確立し,検査体制の強化を図った.「食品中エリスリトール等の糖アルコール分析法の検討及び低カロリー食品中の含有量調査」ではHPLC及びLC-MSを用いた食品中の糖アルコールの分析法を開発し,市販の加工食品119試料について糖アルコールの含有量実態調査を行った.「食品への農薬混入を想定した迅速検知法の検討」では,中毒量の農薬が存在するか否かを簡易迅速かつ安全に検査可能な手法を確立した.
有毒動植物,フローサイトメトリー,走査型電子顕微鏡,DNAシークエンス法,PCR,LC-MS/MS, シガトキシン,テトロドトキシン,ヒスタミン,アミグダリン,エリスリトール,マルチトール,ラクチトール,農薬,迅速検知法

 

論文Ⅰ 感染症等に関する調査研究

リアルタイムPCRを用いた髄膜炎菌の検出感度に関する検討
 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)はNeisseria属のグラム陰性双球菌であり,ヒトの上咽頭や鼻腔に存在し,髄膜炎を含む様々な感染症の原因菌として報告されている.国内での髄膜炎菌による「侵襲性髄膜炎菌感染症」は,2013年以降年間40例程度であるが,集団事例の発生も知られている.一方海外では,髄膜炎菌による感染症発生が非常に多い地域もあり,輸入感染症としても注意が必要である.東京都では,2019 年ラグビーワールドカップ,2020 年東京オリンピック・パラリンピックを控えており,これらの大規模なマスギャザリングにおける疾病対策の一環として,当センターが保有する髄膜炎菌(A,B,Y群)を用い,アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が公開しているリアルタイムPCR検出系の検出感度の検討を行った. その結果,ゲノムに対する検出限界が31.8~44.3genomes/μL,CFUに対する検出限界が898~6,374CFU/mLと高感度なリアルタイムPCR検出系であることが確認され,髄膜炎菌の迅速検査に本法が使用可能であることが示された.
髄膜炎菌,リアルタイムPCR ,検出感度

  

莢膜膨化法とMultiplex PCR法による肺炎球菌血清型別法の比較検討
 肺炎球菌は肺炎や中耳炎等の原因菌であり,感染症法における5類全数把握疾患に指定されている侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の原因菌である.肺炎球菌の主な病原因子は莢膜であり,肺炎球菌感染症の予防として,複数の血清型の莢膜多糖体がワクチンとして導入されている.したがって,肺炎球菌感染症の疫学調査やワクチン効果を把握する上で,肺炎球菌の血清型別は極めて重要である.今回,東京都で収集した肺炎球菌433株を用いて,Multiplex PCRと莢膜膨化法の2種類の血清型別方法を実施し,結果を比較した.その結果,莢膜膨化法では34種類に,Multiplex PCRでは30種類に型別された.Multiplex PCRで複数の血清型を含む血清群として型別された型は14種類で,全体の60%を占めた.Multiplex PCRで同一の血清群と判定された菌株に莢膜膨化法を実施したところ,さらに詳細な単一血清型として型別された.同一の血清群でも,ワクチン型と非ワクチン型の両方が含まれる場合があるため,肺炎球菌の血清型別には莢膜膨化法を用い,判定に苦慮する場合はMultiplex PCRを併用することが有効であると考えられた.

肺炎球菌,血清型,莢膜膨化法,Multiplex PCR

 

東京都内山間部において採取したマダニ類における病原微生物の検索(2017年度)
 我が国におけるマダニ媒介性の疾患としては,2011年に病原ウイルスが中国で特定された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や23年ぶりに北海道で患者が報告されたダニ媒介性脳炎(TBE)が注目されている.また,2017年には東京都近県で日本紅斑熱による死亡例が報告されるなど,ダニ媒介性感染症の重要度は高くなっている.今回,2017年度に東京都内山間部において採取されたマダニ類から,リアルタイムRT-PCR法及びnested-PCR法によるSFTSウイルス,TBEウイルス及び紅斑熱群リケッチア等の病原体検索を行った.その結果,SFTSウイル ス及びTBEウイルスの遺伝子は検出されなかったが,79件のマダニ検体より,紅斑熱群リケッチア遺伝子が27件, Borrelia japonica類似の遺伝子が3件,牛アナプラズマの遺伝子が1件検出された.以上の結果から,マダニの生息している地域に入る際は,マダニに刺咬されないような予防策を徹底する必要があると考えられた.

重症熱性血小板減少症候群,ダニ媒介性脳炎,紅斑熱群リケッチア,日本紅斑熱,ライム病,リアルタイムRT-PCR法,nested-PCR法

 

都内における麻疹の発生状況について(2018年4~6月)
 東京都では2010年から積極的疫学調査として麻疹の全数検査を実施している.2018年3月,沖縄県において台湾人観光客を初発とする麻疹集団感染事例が発生し,東京都内でも麻疹を疑う患者が急増した.健康安全研究センターには4 月~6月に138件の検体が搬入され,うち15件(患者13例)から麻疹ウイルス遺伝子が検出された.遺伝子型別の結果,D8型が9例,H1型が1例,A型が3例であった.D8型は3つのグループに分類された.

麻疹,遺伝子型,D8,H1,A,ワクチン接種歴

  

論文Ⅱ 医薬品等に関する調査研究

危険ドラッグから検出された薬物に関する理化学試験結果(平成29年度)
 平成29年度に行った市販危険ドラッグ製品中に検出した薬物及び医薬品成分の理化学試験結果を報告する.薬物の理化学試験は,主にフォトダイオードアレイ検出器付液体クロマトグラフィー(LC/PDA),電子イオン化質量分析計付ガスクロマトグラフィー(GC/EI-MS)を用い,必要に応じて高分解能精密質量測定法(HR-MS),核磁気共鳴スペクトル測定法(NMR)及び単結晶X線構造解析法により構造解析を行った.危険ドラッグ133製品のうち,29製品から薬物及び医薬品成分を検出した.新たに検出した薬物は2種であり,構造解析の結果,25I-NBOH及び4-Methoxy-α-POPであった.また,規制薬物では指定薬物を18種,医薬品成分を5種検出した.新たに検出した医薬品成分はブプロピオンであった.
危険ドラッグ,指定薬物,LC/PDA,GC/EI-MS,25I-NBOH,4-Methoxy-α-POP,ブプロピオン

 

化粧品中の防腐剤一斉分析法の改良
 当センターでは,薬事監視員が収去・試買等を行った化粧品について,化粧品基準に基づき試験検査を行っている. その中で,衛生試験法の防腐剤一斉分析法の対象成分である,パラオキシ安息香酸エステル類等13成分について,高速液体クロマトグラフィーによりスクリーニング検査を行っている. 従来法は,移動相にイオンペア試薬を用いていたため,そのまま質量検出器に導入することができなかった.そこで,試験法を改良し,質量検出器導入可能な移動相を用い,より短時間分析が可能な超高速液体クロマトグラフィー による分析法を検討した.その結果,ギ酸系移動相で,フェニル-ヘキシルカラムを用いることにより,測定対象成分13種について良好な分離が可能な分析条件を確立した.
化粧品,防腐剤,一斉分析,液体クロマトグラフィー,化粧品基準,質量検出器

 

コンタクトレンズ承認基準に基づくソフトコンタクトレンズ試験の留意点
 ソフトコンタクトレンズの試験検査を行う上で,膨潤条件や装置が事業者の標準作業手順書に準拠していることが最適であるが,標準作業手順書が入手困難なため,各事業者が指定する条件と同一には実施できない場合がある.そこで,膨潤液の種類及び装置の違いによる試験結果への影響を調べ,通常の試験検査業務に適用できる試験条件の検討を行った.また,ベースカーブ測定条件の違いによる試験結果への影響を検討した. 膨潤液の種類では,生理食塩液,リン酸緩衝生理食塩液,ホウ酸緩衝液及び高浸透圧性ホウ酸緩衝液の4種類を用いて,直径,ベースカーブ,中心厚,頂点屈折力,視感透過率及び屈折率を測定した.その結果,ホウ酸緩衝液を用いた際に一部の試料で,直径及びベースカーブが適合範囲から逸脱した. 装置の検討では,異なる原理の装置を用いて,直径,ベースカーブ及び中心厚を測定した.その結果,中心厚の測定について,装置の違いにより結果に差が認められた. ベースカーブ測定条件の検討では,測定の際に使用する支持台が6mm,8mm,10mm,12mm及び各試料の直径になるようにして,それぞれ超音波法で測定した.その結果,支持台の外径が6mm及び8mmの場合,多くの試料が適合範囲から逸脱した. 各試験条件によって,結果に差が生じる場合があることを確認できたため,適合範囲を逸脱する場合には,各事業者指定の条件を確認するなどの注意が必要である.
ソフトコンタクトレンズ,直径,ベースカーブ,中心厚,頂点屈折力,視感透過率,屈折率,膨潤液

  

偽造が疑われる医薬品の検査事例について
 東京都では,いわゆる健康食品や無承認医薬品等に含まれる医薬品成分等の検出を目的とした検査を行っている. この検査手法を基に平成29年に検査した偽造が疑われる医薬品2例について報告する. 事例1 ハーボニー®配合錠(有効成分レジパスビル及びソホスブビル)の偽造医薬品が奈良県で発見された.流通過程に東京都の卸売販売業者が関わっていることが判明し,当該業者が在庫していた偽造が疑われる製品が当センターに搬入された.有効成分の有無の確認と医薬品成分のスクリーニング等を行ったところ,ビタミン含有のサプリメントであると推定された. 事例2 アミノ酸を主体とするヒト胎盤由来製剤が非医療機関で発見され,当センターに搬入された.事例1と同様の手法を用いて医薬品成分のスクリーニング等を行ったところ,偽造医薬品と推定された. 偽造医薬品は患者が期待する治療効果を得られないばかりか,国民の医薬品に対する信頼を損なう重大な問題である.偽造医薬品の脅威に備え,日ごろから検査技術の向上や体制整備を図っていくことが重要である.
偽造医薬品,無承認医薬品,ハーボニー®配合錠,ヒト胎盤由来製剤

 

東京都におけるめっき廃水中の「シアン」試験検査結果及び各試験法の検証について (平成24年度~平成29年度)
 東京都では昭和45年から,「毒物及び劇物取締法」に基づき,都内の電気めっき業者及び金属熱処理業者を対象としたシアン廃水指導取締事業を行っている.平成24年度から平成29年度の6年間で816試料の検査を実施した.その結果,シアンとして1mg/L以上を検出した試料は8件であり,そのうち最も高い値は69mg/Lであった. 本期間における検査結果に関して,スクリーニング法として採用しているイオンクロマトグラフ法とキットを用いた簡易テスト法について,精度の確認を行った.イオンクロマトグラフ法の測定値と,公定法又は微量拡散法の結果を基にした検査結果値との相関性について,McNemar検定を行ったところ相関性が認められた.また,回帰分析においても,相関性が認められた. 現場で迅速に行える簡易テスト法の結果にカットオフ値を設定し検査結果との相関性についてMcNemar検定を行ったところ,相関性を認めた.特に低い検査結果値における信頼性が高く,良好な相関性を認めた一方,違反等となった試料のうち3試料については,簡易テスト法で0.2mg/L以下と相違ある結果であったため,結果の解釈には注意が必要であることが確認された. 現在、事業者数は本事業開始時に比べて減少しており,違反率も大幅に改善しているが,依然として,ほぼ毎年基準違反が出ている.今後も監視部門と連携し,継続的な試験検査が必要である.
毒物及び劇物取締法,めっき廃水,シアン化ナトリウム,シアン化カリウム

 

論文Ⅲ 食品等に関する調査研究

食品細菌自動検査システムDOXを用いた簡易・迅速試験法の検討
 食品細菌自動検査システムDOXは,酸素電極法により一般生菌数,大腸菌群等を定量する簡易・迅速な検査機器である.レトルト食品及び生理食塩水に供試菌を接種し,DOX及び公定法により,大腸菌群,黄色ブドウ球菌,サルモネラの定量値を比較した.その結果,大腸菌群及び黄色ブドウ球菌のDOXによる定量は良好であったが,サルモネラでは困難であった.また,実際の食品及びふき取り検体を対象に,定量値を比較した結果,DOXによる一般生菌数の測定では,公定法の定量値より2オーダー以上低値を示した検体が30%に認められた.大腸菌群では12検体のうち11検体はDOXの方が高値に定量され,大腸菌群以外の菌種による混合汚染が認められた場合に,DOXによる定量値が高くなると推察された.さらに,一つの検体をDOXで3回測定したところ,サルモネラを除き,一般生菌数,大腸菌群, 黄色ブドウ球菌は同等に定量され,測定値の再現性が確認された.本研究において,DOXはいくつかの注意点をふまえることで,利用可能な簡易・迅速試験法であると考えられた.
食品,簡易・迅速試験法,AOAC PTM,DOX,衛生指標菌,一般生菌数,大腸菌群,大腸菌,黄色ブドウ球菌,サルモネラ

 

はちみつの細菌学的調査(平成18年度~平成29年度)
 ボツリヌス菌が混入したはちみつを摂取した場合,1歳未満の乳児で乳児ボツリヌス症の原因となることが知られている.ボツリヌス菌を含む細菌汚染状況の把握を目的に,平成18年度から平成29年度に東京都内で流通したはちみつにおける細菌数,好気性芽胞菌数および嫌気性芽胞菌数の衛生指標菌の検査を実施するとともに,食中毒起因菌であるセレウス菌,ウェルシュ菌およびボツリヌス菌の検出状況について調査を行った.その結果,細菌数はほぼすべての検体(98.3%)で定量され,<10 – 104 cfu/gオーダーに分布し,中央値は2.1×102 cfu/gであった.好気性芽胞菌数は<10 – 105 cfu/gオーダーに分布しており,嫌気性芽胞菌数(クロストリジウム属菌)は36.1% (26/72) の検体で1 – 1.4×101 cfu/g検出された.ボツリヌス菌,ウェルシュ菌は検出されなかったが,セレウス菌が66.5% (115/173) の検体から検出された.はちみつから検出されたセレウス菌が直ちに食中毒に直結するわけではないが,細菌の存在を認識し使用する必要がある.
はちみつ,細菌数,好気性芽胞菌数,嫌気性芽胞菌数,セレウス菌,ウェルシュ菌,ボツリヌス菌

 

食品中の放射性物質の検査結果(平成29年度)
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故を受け,東京都では,平成23年度から都内で流通している食品の放射性物質検査を実施している.平成29年度は,国産食品1,100検体及び輸入食品70検体,計1,170検体について放射性セシウム及び放射性ヨウ素の検査を行った.検査には,ゲルマニウム半導体核種分析装置及びヨウ化ナトリウム(タリウム)シンチレーションスペクトロメーターを用いて測定した.その結果,国産品はすべて検出限界未満であった.また,輸入品ではベリー類3検体から放射性セシウム(Cs-137)が検出されたが, いずれも基準値未満であった.

放射性物質,核種分析,放射性セシウム,ゲルマニウム半導体核種分析装置,ヨウ化ナトリウム(タリウム)シンチレーションスペクトロメーター,食品

 

化学物質及び自然毒による食中毒及び有症苦情事件例(平成29年)
 平成29年に東京都内で発生した化学物質及び自然毒による食中毒及び有症苦情事例のうち,当センターで検査した ものは15件であった.その内訳は,ヒスタミンが疑われたものが3件,フグ毒が疑われたものが4件,その他の化学物質が疑われたものが8件であった.いずれも中毒の疑いもしくは有症苦情事例として検査依頼されたものであったが, 最終的に食中毒とされたものはなかった.本報では,今後の食中毒検査の参考とするために,原因物質の異なる4物質6事例について報告する.ヒスタミンが疑われた有症苦情2事例は,マグロの寿司やブリの照り焼きを喫食し,発疹や発赤,下痢などの症状を呈した事例で,ヒスタミンの定量を行った.その結果,参考品からはヒスタミンは検出されなかった.フグ毒が疑われた有症苦情2事例は,フグの刺身等を喫食して痺れや嘔吐,下痢などを呈した事例で,フグ毒についてマウス単位法により分析を行ったがフグ毒は検出されなかった.LEDキューブライトが関与した有症苦情事例は,氷型のLEDキューブライトが使われていたカクテル風飲料を喫食して吐き気や嘔吐,下痢などの症状を呈した事例で,腐食した電池からの電解液や陽極から溶出した金属などの分析を行った.その結果,有害性のある金属の 溶出は認められなかった.異臭を感じた牛乳による有症苦情事例は,学校給食で提供された牛乳から薬品臭などを感じ,腹痛などの体調不良を訴えた有症苦情事例で,官能試験と乳の成分規格試験を行った.その結果,官能試験に異状は認められず,成分規格にも適合するものであった.
化学性食中毒,ヒスタミン,マグロ,ブリ,フグ,テトロドトキシン,LEDキューブライト,ボタン電池,牛乳,酸度

 

食品の苦情事例(平成29年度)
 平成29年度に検査を実施した食品苦情に関わる33事例から,検査によって食品中の異物を同定することができた 5 事例について報告する.(1) 焼き菓子中に付着した黒カビ様物は,官能試験(外観),顕微鏡観察,簡易化学試験及び蛍光X線分析を行った結果,焼き菓子に添付されていた脱酸素剤の内容物であると推察された.(2) 海鮮ピラフに混入していた白色物は,官能試験(外観),簡易化学試験及び蛍光X線分析を行った結果,炭酸カルシウムを主成分とする貝殻と推察された.(3) スパゲッティナポリタンに混入していた種子様物は,官能試験(外観)及び種の鑑別 試験を行った結果,カボチャの種子と推察された.(4) ドーナツに混入していたプラスチック片様物は,官能試験(外観),顕微鏡観察及びFT-IR 分析を行った結果,ドーナツが入っていたプラスチックトレーの一部であると推察された. (5) 饅頭に混入した白髪様物は,官能試験(外観),FT-IR 分析及び顕微鏡観察を行った結果,麻類の繊維であると推察された.
食品苦情,異物,脱酸素剤,炭酸カルシウム,カボチャ,麻,顕微鏡観察,蛍光X線分析,FT-IR 分析, 種の鑑別

 

食品中の9種保存料分析における迅速な透析法の検討
 透析を用いた食品中の保存料検査の迅速化を検討した.保存料として安息香酸,ソルビン酸,デヒドロ酢酸,パラオキシ安息香酸エステル類(エチル,イソプロピル,プロピル,イソブチル及びブチルエステル)及びパラオキシ安息香酸メチルの9種について,透析膜の有効長を50cm,透析液を30% 2-プロパノール,試料採取量5g,透析液と試料の総量100mL,4時間の透析で74%以上の回収率を得た.保存料使用の市販食品を用いて,水蒸気蒸留法,透析液に30%メタノールを用いた24時間の透析法,本法での定量値を比較したところ,蒸留法に比べて透析法の定量値が高くなる傾向があった.本法では,透析時間を4時間に短縮,試料採取量と透析液総量の減量により効率化を達成した.
保存料,安息香酸,ソルビン酸,デヒドロ酢酸,パラオキシ安息香酸エステル類,透析,HPLC,食品, 食品添加物

 

食品中のサッカリンおよびアセスルファムカリウムのHPLC分析における疑似ピークの傾向と条件検討
 HPLCを用いてサッカリンおよびアセスルファムカリウムの検査を行った行政検体で再分析が必要であった検体の検査データについて疑似ピークの出現する傾向を解析し,分析条件の検討を行った.その結果,魚肉ハム・魚肉ソーセージ,魚肉ねり製品,食肉製品,そうざい類およびソース由来の疑似ピークは保持時間の長い条件で分析を行うと判定可能であることが分かった.また,大根由来の疑似ピークは移動相のメタノールと1%(w/v)リン酸の割合を変化させることでアセスルファムカリウムのピークとの分離が可能であり,昆布由来の疑似ピークには固相カラムによる精製が適していた.食品の種類によって適した条件を選択することで検査業務の正確性向上と効率化を図ることができた.
食品添加物,甘味料,サッカリン,アセスルファムカリウム,透析法,固相抽出,HPLC

 

食品中のカルシウム塩類およびマグネシウム塩類試験法

 マイクロウェーブ,ICP-AESを用いた食品中のカルシウム塩類およびマグネシウム塩類の試験法の検討を行った.試料0.5g又は1gに濃硝酸4mL,水4mLを加え,機器のアプリケーションに従いマイクロウェーブにより酸分解した後, 水を加え50mLに定容した.その分解液をICP-AESにより測定した.種々の食品について添加回収試験を行ったところ, 回収率はカルシウムで88.7±2.6%~109.6±9.3%,マグネシウムで84.5±6.0%~108.4±2.2%と良好であった.以上の結果から,本試験法は,カルシウム塩類およびマグネシウム塩類試験法として適用できるものと考えられた.

食品添加物,カルシウム塩類,マグネシウム塩類,マイクロウェーブ,ICP-AES

 

輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成29年度) -果実類-
 平成29年4月から平成30年3月に東京都内に流通していた輸入農産物のうち果実18種151作物について残留農薬実態調査を行った.その結果17種103作物(検出率68%)から殺虫剤及び殺菌剤合わせて48種類の農薬(有機リン系農薬9種類,カルバメート系農薬2種類,有機塩素系農薬5種類,ピレスロイド系農薬7種類,含窒素系及びその他の農薬25種類)が痕跡(0.01ppm未満)~5.5ppm検出された.イスラエル産のグレープフルーツからイマザリルが食品衛生法の残留農薬基準値5.0ppmを超えて5.5ppm検出された.そのほかに残留農薬基準値及び一律基準値を超えて検出された農薬は無かった.
残留農薬,輸入農産物,果実,殺虫剤,殺菌剤,残留基準値,一律基準値

 

輸入農産物中の残留農薬実態調査(平成29年度) -野菜類及びその他-
 平成29年4月から平成30年3月までに東京都内に流通していた輸入農産物の野菜,きのこ類,穀類及び豆類39種198作物について残留実態調査を行った.その結果,22種85作物 (検出率43%) から残留農薬が痕跡 (0.01ppm未満)~1.3ppm検出された.検出農薬は殺虫剤,殺菌剤及び除草剤合わせて57種類 (有機リン系農薬8種類,有機塩素系農薬7種類,カルバメート系農薬2種類,ピレスロイド系農薬5種類,含窒素系及びその他の農薬35種類) であった.このうち,ポーランド産未成熟えんどう1作物からチアクロプリドが0.03ppm検出 (一律基準値0.01ppm) ,中国産未成熟えんどうからプロピコナゾール0.07ppmが検出 (基準値0.05ppm) され,食品衛生法で定められた基準値を超過した.これらの作物における残留量はチアクロプリドに設定された一日摂取許容量 (ADI) で約1/380,プロピコナゾールでADIの約1/320であった.
残留農薬,輸入農産物,殺虫剤,殺菌剤,残留基準値,一律基準値, 一日摂取許容量(ADI)

 

国内産野菜・果実類中の残留農薬実態調査(平成29年度)
 平成29年4月から平成30年3月に東京都内に流通していた国内産野菜・果実類29種70作物について残留農薬実態調査を行った.その結果21種41作物(検出率59%)から殺虫剤及び殺菌剤合わせて27種類の農薬が痕跡(0.01ppm未満)~0.31ppm検出された.検出された農薬の内訳は,有機リン系農薬5種類,有機塩素系農薬4種類,ピレスロイド系農薬2種類,含窒素系及びその他の農薬16種類であった.食品衛生法の残留農薬基準値及び一律基準値を超えて検出された農薬はなかった.
残留農薬,国内産野菜果実類,殺虫剤,殺菌剤,残留農薬基準値,一律基準値

 

畜水産物中の残留有機塩素系農薬実態調査(平成29年度)
 平成29年4月から平成30年3月に東京都内に流通していた食肉,生乳,魚介類及びその加工品等畜水産物22種115食品について残留有機塩素系農薬の実態調査を行った.その結果,19種47食品(検出率41%)から6種類の有機塩素系農薬(DDT,クロルデン,エンドリン,ディルドリン,ヘプタクロル及びヘキサクロロベンゼン)が0.001~0.12ppmの範囲で検出された.食品衛生法の残留農薬基準値及び一律基準値を超えたものはなかった.食の安全性確保の観点から今後も調査を実施し,検出状況を把握していく必要があると考える.
残留農薬,畜水産物,有機塩素系農薬,残留基準値,一律基準値

 

論文Ⅳ 生活環境に関する調査研究

石英繊維フィルターの粒子捕集効率とフタル酸エステル類の粒径分布
 室内空気中フタル酸エステル類の測定に,粒子捕集効率の異なる3種の石英繊維フィルターを用い,捕集状況を比較した.各石英繊維フィルターを前段に,オクタデシルシリル化シリカゲルフィルターを後段にセットしたサンプラーを用いて室内で同時測定を行ったところ,フタル酸ジエチル(DEP),フタル酸ジイソブチル(DiBP),フタル酸ジ-n-ブチル(DnBP),フタル酸ブチルベンジル(BBP)及びフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)が検出され,いずれのサンプラーにおいても各物質の測定値は同等であった.この測定結果について,前段の石英繊維フィルターによるフタル酸エステル類の捕集割合を算出したところ,DEHP及びBBPはいずれも約100%で,フィルターによる差は見られなかったが,DEP,DiBP及びDnBPは13%~100%で,粒子捕集効率の大きいフィルターの方が捕集割合が高かった.次に,3種の石英繊維フィルターに室内空気を通過させ,フィルター通過前後の粒子個数濃度を電子式低圧インパクター(ELPI)により測定し,粒径別に粒子捕集効率を算出した.その結果,用いた石英繊維フィルターは,平均粒径0.039μmの粒子を88%以上捕集可能であった.また,ELPIにより室内空気中フタル酸エステル類の粒径分布を測定した結果,DEHP及びBBPの粒径分布が明らかになり,これら2物質は平均粒径0.039μm以上に大部分が分布することが判明した.
室内空気,フタル酸エステル類,フタル酸ジエチル,フタル酸ジイソブチル,フタル酸ジ-n-ブチル,フタル酸ブチルベンジル,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル,石英繊維フィルター,粒径分布,電子式低圧インパクター

 

ヒト肺上皮由来A549細胞におけるナノシリカによる細胞傷害に関する研究

 6種のナノシリカを用いて,ヒト肺上皮由来A549細胞へ液相ばく露および気相ばく露し,A549細胞への影響を調べ, さらに,ナノシリカのA549細胞への取り込みを観察した.シリカ液相ばく露では,A549細胞の細胞増殖能力は,6種いずれのシリカも30μg/mLを超える濃度では,濃度依存的に抑制作用がみられた.6種全てのシリカは,乳酸脱水素酵素(LDH)活性を増加させた.6種中5種のシリカは,A549細胞の炎症因子インターロイキン-8(IL-8)産生を増強した.ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)については,6種中1種のシリカが10μg/mLで産生を増強したが,300μg/mL以上の濃度の全シリカは,産生を減弱させた.次に,シリカ気相ばく露では,A549細胞の細胞増殖能力は,対照群と比べ,差はなかった.6種中2種のシリカは,LDH活性を増加させた.6種中1種のシリカがIL-8産生を増強,別の1種の シリカがIL-8産生を減弱した.6種中3種のシリカは,HO-1産生を増強した.液相ばく露と気相ばく露とでは,A549細胞への作用の違いは見られたが,これは,ばく露量の違いに関連していると考えられた.シリカを液相および気相ばく露したA549細胞の透過型電子顕微鏡像を観察すると,細胞内へナノシリカが取り込まれたことが推察された.

ナノシリカ,ナノ物質,A549細胞,細胞増殖能力,インターロイキン-8,透過型電子顕微鏡

 

居住環境における酢酸及びギ酸の発生源に関する調査 水性形接着剤及び木材からの放散量測定
 室内環境における酢酸及びギ酸の発生源に関するデータを得るために,水性形接着剤である酢酸ビニル樹脂系接着剤(PVA),エチレン-酢酸ビニル樹脂系接着剤(EVA)及び木材について,酢酸及びギ酸の放散速度を測定し,湿度による放散量の変化を調査した.ガラス板に塗って3日間乾燥したPVA及びEVAを調査したところ,いずれも酢酸及びギ酸の放散が認められ,酢酸はPVA の方が大きく,ギ酸はEVA の方が放散速度は大きかった.また,高湿度条件下での静置時間が長くなるにつれて,酢酸及びギ酸の放散速度が増加した.次に,同上の試料をガスサンプリングバッグ に入れ,バッグ内の酢酸及びギ酸の濃度変化を13日間調査したところ,1日目に比べて13日目の酢酸はPVA,EVAとも約2倍に増加し,ギ酸はPVAで2.8倍,EVAで0.91倍となった.また,PVA及びEVAから発生したガスを別のガスサンプリングバッグに移し,同様に調査したところ,酢酸はPVA,EVAともに約1/2に減少したが,ギ酸はPVAで1.9倍,EVAで0.87倍となった.次に,6種類の無垢材から放散する酢酸及びギ酸の放散速度を測定した.各木材から放散される主な有機酸は酢酸であり,放散量が多かったのは松及び桐,少なかったのはラワンであった.また,5種の合板から発生する酢酸及びギ酸の放散速度を測定したところ,それらの放散速度は製品によって大きな差があった. 以上の結果から,水性形接着剤のPVA,EVA,無垢材及び合板はともに酢酸及びギ酸の発生源となることが判明した.
室内空気,酢酸,ギ酸,水性形接着剤,酢酸ビニル樹脂系接着剤,エチレン-酢酸ビニル樹脂接着剤,桐, 松,ラワン,合板

 

東京都内の住宅におけるダニアレルゲン調査
 2016年10月から11月に,都内の一般住宅10軒の居間または寝室の床面,寝具から採取した塵中のダニアレルゲン量(Der 1量)を調査した.Der 1量は,コナヒョウヒダニフン由来ダニアレルゲン(Der f 1)量およびヤケヒョウヒダニフン由来ダニアレルゲン(Der p 1)量を合計した値である.すべての検体のDer 1量平均値は1,600ng/m2であり,Der f 1量の方がDer p 1量より存在比が高かった.採取場所別に見ると,Der 1量は,寝具>ジュウタン/畳>フローリングの順に多く,Der 1量が多かった上位4位までは寝具であった.寝具等におけるDer 1量は,掃除機がけや洗濯等の管理状況により大きく異なることが示唆された.
ダニアレルゲン,コナヒョウヒダニ,ヤケヒョウヒダニ,Der 1,Der f 1,Der p 1

 

東京湾産魚介類中の残留ダイオキシン類濃度調査結果(平成28年度)
 東京都では,東京湾産魚介類中の残留ダイオキシン類濃度を継続的に調査している.本報は,平成28年度の調査結果である.調査には,東京湾産のボラ,スズキ,マアナゴ,マコガレイ,アサリ,ホンビノスガイを用いた.平成27年度の結果と比較し,ボラでは高値を示したが,他の魚種では同様の検出値であった.平均残留濃度が最も高かった魚種はマアナゴで,3.96pg-TEQ/g-wetであった.マアナゴは総脂肪量が多く,ダイオキシン類が脂肪に蓄積されるという性質を反映していた.魚類では,残留濃度に占めるコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)の割合が概ね8割以上を占めていた.貝類では,Co-PCBの割合が5割弱であり,魚類との差がみとめられた.ホンビノスガイは,平成28年から調査に用いたが,アサリと比較し検出値に大きな差はなかった.ダイオキシン類は環境中に長期間残留することから,今後も引き続き残留濃度を調査する必要がある.
ダイオキシン類,東京湾,ボラ,スズキ,マアナゴ,マコガレイ,アサリ,ホンビノスガイ

  

東京都水道水質外部精度管理調査結果(平成29年度) -亜硝酸態窒素及びトリハロメタン-
 東京都では,「東京都水道水質管理計画」に基づき,東京都健康安全研究センターが中心となり,水道事業者及び厚生労働大臣の登録を受けた水道水質検査機関を対象とした外部精度管理を実施している.本稿においては,平成29 年度に実施した亜硝酸態窒素及びトリハロメタンに関する外部精度管理の概要を報告する.参加した検査機関数は, 亜硝酸態窒素には41機関,トリハロメタンには39機関で,このうち評価基準を満たさなかった検査機関数は,亜硝酸態窒素で1機関,トリハロメタンで7機関であった.その原因は,不適切なピークの積分,結果報告書への桁数の誤記 入,検量線用標準液の調製における不具合,分析上の保持時間による項目順序と報告書の項目順序の違いによる誤記入及び報告書記入における実施要領の確認不足であった.また,各検査機関の水質検査実施標準作業書(SOP)が告示法に準拠していない機関が見られた.これらの機関は,SOPの改定とSOPを遵守した適正な検査を実施する必要がある.
外部精度管理,水道水,亜硝酸態窒素,トリハロメタン,告示法

  

東京都(多摩地域及び島しょ地域)における浴槽水及びプール水等からの レジオネラ属菌の検出状況(平成27年度~平成29年度)

 東京都におけるレジオネラ症の防止対策の一環として,平成27年度~平成29年度に多摩地域及び島しょ地域に所在する施設の浴槽水2,370件及びプール水等817件に対し,レジオネラ属菌の検出状況を調査した.水質基準である「検出されないこと」(10CFU/100mL未満)を超過した割合は,浴槽水で平成27年度4.7%,平成28年度5.3%,平成29年度4.7%,プール水等で同様に2.2%,3.3%,3.0%であった.一方,10CFU/100mL未満であるものの,レジオネラ属菌が検出された割合は,3年間で浴槽水の8.9%,プール水等の10.2%であった.浴槽水327件及びプール水等106件から分離されたレジオネラ属菌629株に対し,抗血清等を用いて菌種を同定した結果,浴槽水ではLegionella pneumophilaが93.7%(458/489)を占め,Legionella bozemanii及びLegionella dumoffiiが各2株検出され,プール水等でもLegionella pneumophilaが95.7%(134/140)を占め,Legionella bozemaniiが1株検出された.また,分離株のうちLegionella spp.につ いては,16SrRNA遺伝子の塩基配列を決定し,DNAデータベースの登録配列と比較した結果,浴槽水で15菌種,プール水等で4菌種のレジオネラ属菌を同定できた.

レジオネラ属菌,レジオネラ症,浴槽水,プール水,ジャグジー水,遊離残留塩素濃度,血清群

 

論文Ⅴ 生体影響に関する調査研究

透過型電子顕微鏡による培養細胞の観察手法

 透過型電子顕微鏡を用いて,培養細胞やその内部に取り込まれたナノサイズシリカ粒子を観察するために,セルカルチャーインサートのメンブレン上に培養した細胞のみを包埋樹脂に転写させ,続いて,培養細胞を完全に樹脂に包埋する手法を考案した.この手法により,切り出した薄切片が破れることなく,培養細胞およびナノサイズシリカ粒子を明確に観察でき,またエネルギー分散型X線分光分析によって細胞内に取り込まれたシリカ粒子に由来するケイ素のピークも確認することができた.

透過型電子顕微鏡,培養細胞,ナノ粒子,エネルギー分散型X線分光分析

  

論文Ⅵ 公衆衛生情報に関する調査研究

人口動態統計からみた日本における肺炎による死亡について
 疾病動向予測システムを用いて日本における肺炎とその関連死亡要因であるインフルエンザや誤嚥性肺炎による死亡の歴史的状況を分析するとともに今後の動向について考察した. 1899年における肺炎による死亡は,男子23,379人,女子19,934人の合計43,313人であり,総死亡者数932,087人の4.6%を占めていた.スペインかぜの流行時の急増はあるものの,1945年以降は,死亡者数は大幅に減少し,1964年には男子12,186人,女子10,468人と最低を記録する.2016年には男子65,636人,女子53,664人になっている. 肺炎による死亡者は,2030年には男子54,000人,女子42,000人程度まで減少すると予測される.また,誤嚥性肺炎に よる死亡者は,2030年には男子77,000人,女子52,000人程度まで増加すると予測される.
肺炎,インフルエンザ,誤嚥性肺炎,推移,世代マップ,人口動態統計

 

MLVA(VNTR)情報の集計・可視化システムMLVA-mateの開発
 Multiple Locus Variable-number tandem repeat Analysis(MLVA)法やVariable-Number Tandem Repeat(VNTR)法は菌株の遺伝子型を数値の配列として表す方法である.この手法においては,菌株の同一性の判断に数値配列の一致を利用する. MLVA法やVNTR法で得られるデータについて専用ソフトウェアを使用することなく,一般的に入手可能なソフトウェアのみでデータを集計し,解析結果を可視化する独自システムを開発した.本システムを利用することにより,MLVA法やVNTR法における一致例の検出や,集積データにおけるクラスタの傾向をminimum spanning tree(MST)法により解析可能であることが示された.
MLVA,VNTR,腸管出血性大腸菌,結核菌,minimum spanning tree

 

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