研究年報 第56号(2005) 和文要旨

*記載内容

 

タイトル
和文要旨
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総説

東京都におけるウイルス感染症の発生動向

 1999年に施行された「感染症法」における「感染症発生動向調査事業」の位置づけとウイルス検査体制及び病原体検索情報を,1999〜2003年の5年間における各種ウイルス感染症における起因ウイルス検出結果と積極的疫学調査結果から述べるとともに,東京都が実施している感染症対策等について概説する.
ウイルス感染症,呼吸器感染症,発疹性疾患,無菌性髄膜炎,積極的疫学調査,感染症対策

  

東京都内湾の魚介類におけるダイオキシン類の生物蓄積
 福祉保健局健康安全室の食品監視課および環境保健課からの委託により実施した,平成11年度から平成16年度にわたる東京湾産魚介類のダイオキシン類等の化学物質汚染状況調査の結果に基づき,各魚介類のダイオキシン類濃度と経年変化,魚類と貝類から検出されるダイオキシン類の異性体組成の特徴などについて述べた.あわせて,東京湾に関する魚介類の食性と食物連鎖の順位,水環境中のダイオキシン類調査,魚介類のPCB調査など他の知見を含めて,魚介類におけるダイオキシン類の生物蓄積性について概説した.

ダイオキシン類,ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン,ポリ塩化ジベンゾフラン,コプラナーポリ塩化ビフェニル,生物蓄積,魚介類,東京湾内湾

  

Ⅰ 感染症等に関する調査研究

16S rRNA遺伝子及びrpoB遺伝子解析による非結核性抗酸菌の同定

 臨床検査における抗酸菌の検出と同定には,従来の培養による生化学的性状を検査する方法があるが, 同定までに時間がかかることから,一般の検査室では迅速性の高い核酸を標的とする市販のキットが繁用されている.市販のキットは, 同定可能な菌種が限られており, 非結核性抗酸菌のなかには,これらの方法では同定できない菌の存在が指摘されている.当研究室において,ヒトから分離された非結核性抗酸菌のうち,市販キットで同定できなかった株について, 16S rRNA遺伝子並びに poB遺伝子の解析を行い同定に成功した.
抗酸菌,16S rRNA遺伝子解析,rpoB遺伝子解析,DDHマイコバクテリア法

  

都内小児科定点病院において分離された黄色ブドウ球菌の型別成績(1993〜2004)
 1993年6月から2004年12月に,都内の6小児科定点病院由来の黄色ブドウ球菌について調査・解析した.MRSA 2,871株のうちコアグラーゼII型が88.2%であり,次いでI型の6.2%であった.II型の毒素産生性はSEC+TSST-1産生株が70%以上であり,次いでSEB+SEC+TSST-1産生が16.8%であった.MSSAは749株でVII型,V型,II型,IV型の順であり毒素非産生株が多かった.

黄色ブドウ球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ型,エンテロトキシン,トキシックショックシンドロームトキシン-1

   

東京都におけるHIV検査成績(1999年−2004年)
 1999年から2004年の6年間の都内保健所(区保健所と都保健所)におけるHIV検査数および陽性数は,ともにやや増加の傾向である.南新宿検査・相談室では2003年4月より土曜日および日曜日の検査が導入され,検査数および陽性数ともに増加し,2004年の陽性率は1%を超えた.東京都では他の地域に比べHIV感染者が数多く検出報告されており,さらにHIV検査体制を充実することが極めて重要である.
ヒト免疫不全ウイルス,検査数,HIV抗原・抗体同時検出キット,遺伝子増幅反応

 

Ⅱ 医薬品等に関する調査研究

アトピー治療薬を標榜する無許可医薬品の分析
 アトピー性皮膚炎治療を標榜した無許可医薬品から,副腎皮質ホルモンのプロピオン酸クロベタゾールと抗真菌剤ケトコナゾールを検出した.販売業者から収去した製品と購入者から任意提供された製品の同一性を検証するために,2成分同時分析のHPLC/PDAによるパターン分析を行い,主成分だけでなく,基剤由来成分,不純物からも各製品間の同一性を確認した.また,無許可医薬品に含有されているケトコナゾールとケトコナゾール標準品との光学純度に差はないことが認められた.
無許可医薬品,プロピオン酸クロベタゾール,ケトコナゾール,HPLC/PDA,パターン分析,光学異性体,旋光度,アトピー性皮膚炎

 

色素沈着治療剤中のヒドロキノンの安定性
 色素沈着症の治療薬として汎用されるヒドロキノン含有軟膏剤はヒドロキノンが容易に酸化され,褐色変化するなど安定性確保に配慮を要する製剤であると言われている.そこで今回,組成の異なるヒドロキノン軟膏を試作し,安定性試験(長期保存及び加速試験)を行った.その結果,いずれの製剤も通常設定される貯法である冷暗所では,24週でヒドロキノン含有量の低下や外観変化は見られなかった.しかし,温度(25°C,40°C)及び光照射による加速条件保存下では顕著なヒドロキノン含量の低下及び色調変化等が観察された.
色素沈着治療剤,軟膏剤,ヒドロキノン,安定性,長期保存試験,加速試験,高速液体クロマトグラフィー,赤外吸収スペクトル

 

4種の知事指定薬物の分析法とスペクトルデータ
 平成17年4月1日より,いわゆる「脱法ドラッグ条例」—東京都薬物の濫用防止に関する条例—が制定され,2C-I,MBDB,5-MeO-MIPT及び3CPPが知事指定薬物に指定された.これら知事指定薬物の融点,UV,IR,NMR,HR-TOF-MS,EI-MS,ESI-MSの測定データのほか,薬物のTLC,LC-PDA,イオンクロマトグラフィー,GC,GC-EI-MS,LC-ESI-MSの分析条件について報告する.
2C-I,MBDB,5-MeO-MIPT,3CPP,知事指定薬物

  

ダウナー系脱法ドラッグの分析
 ダウナー系ドラッグに用いられる薬物7種について,一斉迅速分析法を検討した.これらは,ガンマーブチロラクトン(GBL),1,4-ブタンジオール,ガンマーバレロラクトン,ガンマーヒドロキシ酪酸ナトリウム(GHB-Na,H.13.11麻薬指定),塩酸ケタミン,塩酸メチルフェニデート,臭化水素酸デキストロメトルファンで,向精神薬,麻酔薬及び麻薬類似薬物などである.脱法ドラッグの確認試験は,通常2種類以上の方法で行っている.そこでGC,GC/MS及びHPLCを用いて,有効な試験法が得られた.ただし,GHBは熱分解しやすいため,HPLCにより分析した.この試験法を用いて市販品を分析した結果を報告する.

麻酔薬,脱法ドラッグ,ダウナー系ドラッグ,ガスクロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー/質量分析法,液体クロマトグラフィー

 

知事指定薬物の純度測定及び不純物の推定構造
 平成17年4月施行の「東京都薬物の濫用防止条例」基づき,9月までに4種の知事指定薬物が指定された.知事指定薬物の検討段階での生体影響評価試験の際に,不純物が試験結果に影響を与えないような純度の高い標準品が必要であった.これらの薬物の純度及び塩類としての存在形態を明らかにするために,各種機器分析を行った.イオンクロマトグラフィーでは,塩類の存在形態が明らかになった.HPLC及びNMR分析では,すべての薬物で純度90%以上と算出された.また,微量の不純物について化学構造を明らかにすることを試みた.
知事指定薬物,純度,不純物,薄層クロマトグラフィー,イオンクロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー,高速液体クロマトグラフィー,核磁気共鳴スペクトル

 

平成15年・16年の脱法ドラッグ試買調査と検出薬物の同定
 平成15,16年度に都薬事監視部門が都内で買い上げた脱法ドラッグ100検体から31種のケミカル系脱法ドラッグを検出した.このうち21種は東京都では初めて検出した薬物であり,1H-NMR,13C-NMR,LC/PDA,LC/MS(ESI),HR/LC/MS(ESI),GC/MS(EI),TLCを適宜組み合わせて分析し,構造を同定した.最近,2,3成分を同時に含む製品が多くなり,今回20通りの組み合わせで,30製品が見出された.表示が不正確な現状も明らかになった.
脱法ドラッグ,化成品薬物,核磁気共鳴スペクトル,液体クロマトグラフィー/質量分析,ガスクロマトグラフィー/質量分析,薄層クロマトグラフィー,液体クロマトグラフィー/フォトダイオードアレー,同定

 

ダイエット健康食品中に含有される医薬品の検索法と健康被害を起こした「天天素清脂胶嚢」への適用
 ダイエットを目的とした健康食品に含有される可能性のある医薬品は,食欲抑制剤,代謝機能亢進剤,瀉下剤等様々である.こうした医薬品の検索法について,薄層クロマトグラフィー(TLC),液体クロマトグラフィー/フォトダイオードアレイ(HPLC/PDA)を用いて検討した.本法を,H17年6月に健康被害を引き起こした「天天素清脂胶嚢」に適用し試験したところ,良好な結果が得られたので,あわせて報告する.
健康食品,ダイエット,食欲抑制剤,代謝機能亢進剤,瀉下剤,利尿剤,薄層クロマトグラフィー,液体クロマトグラフィー/フォトダイオードアレイ,天天素清脂胶嚢

 

セントジョンズワートを含有する健康食品中のヒペリシン及びヒペルフォリン含量
 セントジョンズワート(SJW)中の抗うつ作用成分であるヒペリシン及びヒペルフォリンについて,HPLCによる定量法を検討した.これを用い,SJW含有健康食品40種を分析した結果,両成分とも大きくばらつき,特にヒペルフォリンで顕著だった.また,定量値をもとに成分の1日最大摂取量を算出したところ,製品の8割以上がヨーロッパで用いられる医薬品と同等又はそれ以上の含量を有することが判明した.成分含量のばらつきは,抗うつ作用や医薬品との相互作用の発現に差異を生じ,かえって健康被害を招く恐れがあると考えられる.
セントジョンズワート,ヒペリシン,ヒペルフォリン,含有量,摂取量,高速液体クロマトグラフィー,健康食品,抗うつ作用,薬物相互作用

 

多孔性ケイソウ土カラムカートリッジを用いた生薬残留農薬分析における迅速前処理法の検討
 生薬の農薬試験に際し,迅速に試験液を得る目的で市販ケイソウ土カートリッジを使用した抽出法(A)と液液分配法(B)を比較した.Aの溶出溶媒はn-ヘキサンとし,その量は200mLとした.今回Aの負荷溶液中の残存アセトンが測定値のばらつきの原因と判明したことから,この点に注意し,AとBの比較を実施した結果,回収率,含量,精度において同等であり,Aは良好な精度管理可能な分析方法であった.Aはエマルジョンが形成されず,多数の試料が迅速に処理できることから生薬の残留農薬試験に際し,有用性が高いと考察した.
迅速前処理,多孔性ケイソウ土カラムカートリッジ,生薬,残留農薬,有機塩素系農薬ピレスロイド系農薬,電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ,繰り返し精度

 

走査型電子顕微鏡によるサプリメント中のエキナケア属植物の鑑別
 健康食品として用いられるエキナケアは,国内では原料植物が知られていないため,エキナケア属植物3種を導入後育成し,走査型電子顕微鏡(SEM)による葉面上の毛状突起の観察を行った.国内で市販されている5種類のハーブサプリメント(ハーブティー)中の葉部をSEMにより観察したところ,そのうち4種類についてはエキナケア属植物の葉部であることが確認されたが,1種類は葉面上の形態が今回調査したエキナケア属植物とは異なったため,エキナケア属植物由来ではないことが明らかになった.
エキナケア,鑑別,走査型電子顕微鏡(SEM),ハーブサプリメント

 

化粧品及び医薬部外品中の紫外線吸収剤同時分析法
 医薬部外品及び化粧品に配合される紫外線吸収剤は製品の種類または使用目的により配合量が制限されている.紫外線吸収剤は種類が多いため,簡便な同時分析法が求められる.筆者らは紫外線吸収剤の分析法を以前に報告したが,今回新たなポジティブリスト掲載紫外線吸収剤を加えて,12種類の紫外線吸収剤の同時分析法を検討したので報告する.本法により市販紫外線吸収剤配合製品を分析したところ,妨害物質の影響もなく,高精度の結果が得られた.
紫外線吸収剤,医薬部外品, 化粧品, 同時分析

 

医薬部外品及び化粧品中感光素類の同時分析法
 医薬部外品,化粧品中の5種の感光素類,感光素101,201,301,401及びプラルミンの同時分析法を作成した.試料約1gにメタノールを加え,超音波浴で15分間分散後5mLとした.上澄液を0.45µmフィルターでろ過後,遮光保存した.HPLC条件はカラム:ODS,移動相(アセトニトリル-0.05molトリエチルアミン,0.1molリン酸):(25:75)から(80:20)のグラジェント,注入量:20µL,定量:フォトダイオードアレイ検出器.本法は汎用部外品,化粧品成分による影響を受けなかった.添加回収率は95.0〜102.0%,C.V.(%) 0.7〜3.8であった.

化粧品,医薬部外品,感光素,感光素101,感光素201,感光素301,感光素401,プラルミン,液体クロマトグラフィー

 

化粧品に配合される新規染毛用色素の分析法
 染毛用化粧品中の新規染毛用色素についてHPLCを用いた分析法の検討を行った.その結果,計20種の新規染毛料色素を40分以内に分析することが可能であった.各成分の検出限界濃度は0.25〜2.5µg/mL,保持時間の変動係数は1.6%以下であった.本法を市販製品の試験に適用したところ,剤型に関わらず簡便な試験溶液の調製で効率的に新規染毛用色素の分析が可能であった.本法を用い10種の市販毛髪用化粧品を分析したところ良好な結果を得た.市販品には日本ヘアカラー工業会の自主基準リストに収載されていない色素が含有されている製品もあった.
高速液体クロマトグラフィー,化粧品,染毛用色素,セミパーマネントヘアカラー

 

蛍光X線分析法によるてんか粉中の酸化亜鉛の分析
 てんか粉中の酸化亜鉛の成分である亜鉛について,蛍光X線分析法を用いて測定した.てんか粉1gとセルロースパウダー2gを混和してブリケットを作成し,蛍光X線分析で分析した.蛍光X線条件は次のとおりである.ターゲット:ロジウム,電圧:50kV,電流:50mA,分光結晶:フッ化リチウム200,検出器:シンチレーションカウンター,スペクトル:亜鉛Kα.てんか粉に酸化亜鉛を加えた際の回収率は97.9〜100.9%で,定量限界は0.005%であった.本法により市販製品11検体を検査したところ9検体から2.0〜10.3%の酸化亜鉛を検出した.他の成分による妨害はなく,高精度に分析できた.
酸化亜鉛,てんか粉,蛍光X線分析装置,医薬部外品

 

Ⅲ 食品等に関する調査研究

タンパク質濃縮キットを応用した特定原材料の検査法
 食品衛生法により特定原材料(小麦,卵,乳,そば,落花生)の表示義務がなされ,その検査法が定められた.通知法におけるELISAスクリーニング法の試料液調製時に生物試料用のタンパク濃縮キットを応用したところ,100倍以上のタンパク濃縮ができ,特定原材料を低濃度含有する試料でも高感度で検出できた.食物アレルギー中毒等が発生した場合,あるいは特定原材料が低濃度含有する食品のスクリーニング法として期待される.本報では卵及び乳について,結果を報告する.
特定原材料,卵,乳,タンパク質濃縮キット,酵素免疫測定法

 

竹製割りばしに使用された亜硫酸の分析法の検討
 竹製割りばしに残留する亜硫酸について測定方法と溶出試験の条件を検討した.溶出試験は通知法(平成15年1月21日食監発第0121001号)どおり浸出用液に水を用いて95°Cで30分間行う方法が妥当であった.溶出液中の亜硫酸は,アルカリ滴定法,イオンクロマトグラフィー法HPLC法のいずれかで測定することができた.本法により市販の竹製割りばし12試料を分析した結果,9試料から二酸化硫黄として3.98〜25.8µg/cm2が検出された.また同一製品でも亜硫酸含有量に大きな差があることが判明した.
割りばし,亜硫酸,改良ランキン蒸留装置,アルカリ滴定,イオンクロマトグラフィー,溶出

 

TLC及びHPLCによるオイスターソース中のスダン色素の分析
 オイスターソース中のスダンI〜IV及びパラレッドについてTLC及びHPLC/PDAを用いた分析法を検討した.試料からの抽出にエタノールを用い,硫酸マグネシウムで脱水後,酢酸エチルに転溶し飽和食塩水で水洗して妨害物質を除去した.TLCではRP-18アルミニウムシートを用いアセトニトリル:水(85:15)で展開した結果,約10分で5色素を分離できた.HPLCではカプセルパックC18UG120カラムを用いアイソクラテックな条件下において25分以内に5色素を分離した.いずれの色素も添加回収率は70%以上,検出限界は2µg/gであった.

スダン色素,パラレッド,オイスターソース,薄層クロマトグラフィー,高速液体クロマトグラフィー

 

TLCとHPLCの併用による食品中合成着色料の一斉分析法
 指定外色素が疑われる場合や含有量が少ない場合にも対応できる簡易で確実性の高い着色料の分析法について検討した.TLCとHPLCを併用して,指定外色素を含めた45種類の合成着色料の一斉分析法を試みた.その結果TLCでスクリーニングを行い,Rfと色調をパターン化し,それを基にHPLC一斉分析を行い,その保持時間を比較することにより効率よく確認する方法を確立した.HPLCは最もシンプルな装置を用いて行ったが,保持時間の再現精度はイオンペアーを使ったアイソクラティック法で行えば良好であり,確認試験に活用できる.
合成着色料,食用タール色素,指定外色素,一斉分析法,高速液体クロマトグラフィー,薄層クロマトグラフィー

 

電気伝導度検出器付きHPLCによる食品中サイクラミン酸の直接分析と7種甘味料の系統的分析
 電気伝導度検出器(CD)付きHPLCを用いたサイクラミン酸分析法の実際の加工食品への適用性について検討した.加工食品からのサイクラミン酸の抽出には透析法を用い,透析外液からは酢酸エチルを用いて抽出し,精製,濃縮した.シリカゲルNH2カラム,移動相に1%リン酸−メタノール(6:4)混液を用いたHPLCによりサイクラミン酸を分離し,CDにより測定した.8種の食品にサイクラミン酸を0.2g/kg添加した場合の本法による平均回収率は90.1%で,定量限界は0.0025g/kgであり,サイクラミン酸の分析法として十分使用できるものと考える.
サイクラミン酸,電気伝導度検出器,高速液体クロマトグラフィー,非誘導体化,甘味料,系統的分析

 

HPLCによる農産物中のカルベンダジム,チオファネートメチル及びベノミルの分析
 HPLCを用いた農産物中のカルベンダジム(MBC),チオファネートメチル(TM)及びベノミル(BM)3農薬の分析法の開発を試みた.試料からメタノールで抽出し,酢酸エチル・n−ヘキサン(1:1)混液に転溶した.TMは酢酸銅存在下で閉環反応処理してMBCに変換した.また,BMはメタノール抽出時にMBCに変換されるため,3農薬の総和をMBCとして測定できた.本法を用いて添加回収試験を行ったところ回収率は一部の作物を除いて,ほぼ70%以上であり,定量限界は0.01µg/g(茶は0.05µg/g)であった.
カルベンダジム,チオファネートメチル,ベノミル,農産物,高速液体クロマトグラフィー

 

茶葉中のN-メチルカルバメート系農薬の分析
 茶葉及びその浸出液について,N-メチルカルバメート系農薬(NMC)9種の分析法を検討した.アセトニトリルで抽出後,C18とシリカゲルの2種のミニカラムを用い精製したところ,GC/MS及びHPLCのいずれも妨害のないクロマトグラムが得られ,添加回収率も概ね良好であった.本結果から,茶葉のNMCは茶葉及び浸出液中についてHPLCにより定量値を求め,GC/MSを併用することにより高精度に分析できると考える.本法に従い煎茶6試料を分析した結果,いずれの試料においても,茶葉及び浸出液中にNMCは検出されなかった.
N-メチルカルバメート系農薬,アセトニトリル抽出,茶葉,浸出液,ミニカラム,高速液体クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー/質量分析法

 

にんじん中BHCの調理による消長

 β-BHCが検出されたにんじんを用いて,BHCの調理による消長を検討した.ボイルでは同一濃度の場合ボイル時間が長い方が多く減少した.また,BHC濃度が高いと減少率が低下する傾向がみられた.油で5分間炒めた時の減少率は51%であり,BHCの油への溶出が考えられた.にんじんの皮を除いてもBHCの濃度に差はほとんどなく,皮むきによるBHCの除去は困難であった.β-BHCは過去にBHCを使用した畑地で栽培されたにんじんから検出され,にんじん中のBHCは土壌に残留したBHCに由来すると推定された.

有機塩素系農薬,β-BHC,にんじん,土壌,調理,国産農産物,消長

 

食品添加物一日摂取量調査 −スクラロース及びパラオキシ安息香酸エステル類について−
 食品添加物の一日摂取量調査の一環として,平成14年度は加工食品中の合成甘味料であるスクラロース,平成15年度には加工食品中の保存料であるパラオキシ安息香酸エステル類について調査を実施した.スクラロースについては初めての調査実施検査項目であり,一日摂取量は0.31mgで一日許容摂取量の0.04%に相当する値であった.また,パラオキシ安息香酸エステル類については検出されなかった.
食品添加物,一日摂取量,マーケットバスケット方式,スクラロース,パラオキシ安息香酸エステル類

 

ミネラル補給を目的とした健康食品に用いられるミネラル素材の品質調査
 カルシウムを主成分とする既存添加物6種類11製品及びミネラル強化酵母3種類8製品について主成分ミネラル及び不純物を分析した.主成分ミネラルの含有量は公表値又はメーカーが呈示している値によく近似していた.有害性不純物の鉛,カドミウム,ヒ素の含有量も食品衛生上問題となるような値ではなかった.ミネラル強化酵母は,ミネラルが酵母のアミノ酸や蛋白質と結合した有機ミネラルであるといわれているが,性状が多様で,製造に用いられた無機ミネラルの残留量を正確に把握することが困難であった.
サプリメント,既存添加物,ミネラル強化酵母,カルシウム,亜鉛,クロム,セレン,鉛,カドミウム,ヒ素

 

伊豆諸島産クサヤ・ウツボ加工品の栄養成分
 伊豆諸島産アオムロのクサヤ(ソフトタイプ),トビウオのクサヤ,ウツボ(干物及び鮮魚)について成分分析を実施した.その結果,従来のムロアジのクサヤに比べ,ソフトタイプのクサヤは水分含量が高く,塩分含量が低い値であった.また,トビウオのクサヤは脂質及び鉄含量が低かった.ウツボ鮮魚の分析値は,カレイやヒラメなどの白身魚とほぼ同等であった.また,ウツボ干物は鮮魚に比べ,脂質含量が高かった.
クサヤ,ウツボ,栄養成分,トビウオ,ムロアジ,干物,ミネラル,伊豆諸島

 

国内産野菜・果実類中の残留農薬実態調査 (平成16年度)
 2004年度に東京都内に入荷した国内産野菜及び果実19種66作物の残留農薬を調査した.野菜では5種類の農薬が8種9作物(検出率:17.6%)から検出された.その検出量は痕跡(0.01ppm以下)から1.74ppmであった.果実では15種類の農薬が5種12作物(検出量:80.0%)から検出された.その検出量は痕跡から1.77ppmであった.これらの農薬残留量はいずれも日本の残留農薬基準値を下回った.
残留農薬,国内産農作物,野菜,果実,殺虫剤,殺菌剤,有機農産物

 

多摩地域産農産物中の残留農薬実態調査(平成15年度〜平成16年度)
 平成15年度から16年度に多摩地域で市販された多摩地域産105試料及びその他の地域産62試料,計167試料の農産物について,有機塩素系,有機リン系など106種の農薬成分について残留実態調査を行った.その結果,多摩地域産105試料のうち,18試料から延べ23農薬成分が検出された.また,その他の地域産62試料のうち,17試料から延べ22農薬成分が検出された.最も検出率の高かった農薬は,多摩地域産,その他の地域産ともに有機塩素系であった.食品衛生法の残留基準値を超えたものはなかった.

残留農薬,多摩地域,農産物,有機リン系農薬,有機塩素系農薬,カルバメート系農薬,ピレスロイド系農薬,含窒素系農薬

 

輸入農産物中の残留農薬実態調査(有機リン系農薬及び含窒素系農薬) −平成16年度−
 2004年4月から2005年3月までに都内で入手した輸入農産物259作物中の有機リン系及び含窒素系農薬について残留実態調査を行った結果,25種58作物から有機リン農薬15種類及び含窒素系農薬9種類が検出された.有機リン系農薬は51作物から痕跡(0.005ppm以上0.01ppm未満)〜0.33ppm,含窒素系農薬は17作物から痕跡〜0.18ppmの範囲でそれぞれ検出された.我が国の食品衛生法で残留基準値のある19種類の農薬が21種53作物から検出され,メタミドホスが中国産及びタイ産ライチ3作物から基準値を超えて検出された.
残留農薬,輸入農産物,有機リン系農薬,含窒素系農薬,最大残留量

 

輸入農産物の残留農薬実態調査 (有機塩素系農薬,N-メチルカルバメート系農薬及びその他) −平成16年度−
 2004年4月から2005年3月に都内に流通していた輸入農作物89種259検体について残留農薬実態を調査した.有機塩素系農薬(殺虫剤3種類,殺菌剤5種類)は14種24作物から,N-メチルカルバメート系農薬(殺虫剤1種類)は2種3作物から,ピレスロイド系農薬(殺虫剤6種類)は12種21作物から,その他(殺菌剤3種類,除草剤1種類,殺虫剤1種類)は8種30作物から検出された.残留量は痕跡(0.005ppm以上0.01ppm未満)〜6.6ppmで,いずれも食品衛生法の残留基準値,Codex国際残留基準値および原産国の残留基準値以下であった.
残留農薬, 輸入農産物, 有機塩素系農薬,カルバメート系農薬,ピレスロイド系農薬,殺虫剤,殺菌剤,除草剤,収穫後使用

 

輸入農作物中の残留臭素の実態調査
 平成15年4月から平成17年3月の期間に都内で流通する輸入農産物183件について,残留臭素の実態調査を行った.食品衛生法で残留基準値が設定されている農作物は穀類と果実のみである.基準値がある農作物では149件中41件から1〜22ppm検出されたが,いずれも基準値を超えるものはなかった.基準値の設定されていない農産物では34件中14件から1〜17ppm検出された.これらの検出値は,ポジティブリスト制度導入にともなう暫定基準値案の基準値を下回っており,特に問題となる値ではないと判断した.今後も継続的な調査が必要である.

輸入農作物,残留臭素,臭化メチル,くん蒸剤,電子捕獲検出器付ガスクロマトグラフ

 

輸入サケ類の残留有機塩素系農薬の実態調査
 サケ類30検体及び養殖用飼料5検体を対象に有機塩素系農薬17化合物の残留実態を調査したところ,総DDT(ND〜0.014ppm),総クロルデン(ND〜0.009ppm),ディルドリン(ND〜0.002ppm)及びHCB(ND〜0.001ppm)が検出された.輸入の養殖サケ類ではチリ産などに比べ北欧産で高い濃度の残留が認められた.また食品衛生法の暫定基準(案)を超えるものはなかったが,調査した農薬は残留性が高くPOPs(残留性有機汚染物質)に指定され,内分泌かく乱化学物質として取り上げられたことから,今後もその残留実態の把握が必要である.
有機塩素系農薬,残留,サケ,ゲル浸透クロマトグラフ,ガスクロマトグラフ/質量分析計,選択イオン検出,残留性有機汚染物質

  

輸入サケ類のダイオキシン類残留レベル
 近年輸入量が増加している輸入サケ類を対象として,ダイオキシン類の残留レベルを調査した.調査試料中のダイオキシン類濃度は0.38〜5.2pg TEQ/gで,産地による濃度差が見られたものの,通常の摂取では問題のないレベルであると考えられた.養殖サケ類への曝露経路は主に養殖用の餌と考えられ,試料による残留レベルの差異は,主に餌中のCo-PCBs量の差に起因するものと考えられた.今後も養殖魚の輸入量は増加が見込まれており,継続的かつ詳細な調査が望まれる.
ダイオキシン類,ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン,ポリ塩化ジベンゾフラン,コプラナーポリ塩化ビフェニル,サケ,マス

 

東京都民の食事からのノニルフェノール一日摂取量調査
 東京都民の食事からのNP一日摂取量を把握することを目的とし,マーケットバスケット方式による一日摂取量調査を行った.大人食において,平成14年度では74ng/kgbw/day,平成15年度では67ng/kgbw/dayと推計された.平成16年度は検出限度以下であった.平成14年度に行った幼児食の調査では,140ng/kgbw/dayと推計された.また,平成15年度に行った離乳食の調査および平成16年度に行った「調理済み食品を含む大人食」の調査では,NPは検出限度以下であった.これらのことから,食事からのNPの摂取は極めて少ないものと考えられた.
ノニルフェノール,一日摂取量,食品,含有量,ガスクロマトグラフィー/質量分析法

 

魚介類中のトリブチルスズ及びトリフェニルスズ化合物の含有量(2002−2004)
 2002年度から2004年度の3年間,魚介類(対象数480検体:東京中央卸売市場より購入)中のTBT及びTPTの汚染調査を行った.各年のTBT平均はそれぞれ0.007ppm(2002年),0.008ppm(2003年),0.005ppm(2004年)で,TPT平均は各年とも0.004ppmで推移した.調査期間(3年間)の平均はTBTが0.007ppm,TPTが0.004ppmで,これらは1999から2001年にわたる前回の3年間の調査の平均よりともに約3/5に減少していた.これらの調査結果から,1991年に我が国で化審法により有機スズ化合物の製造・使用の規制が定められた後,直ちに日本の海洋環境におけるTBTとTPT汚染がかなり減少し,次いで徐々に減少していることが明らかである.日本海洋環境の汚染の改善は法によるTBT,TPT使用規制の有効な結果である.
トリブチルスズ化合物, トリフェニルスズ化合物,防汚塗料,魚介類,含有量,環境汚染

 

輸入食品中の放射能濃度(平成16年度)
 チェルノブイリ原発事故に由来する放射能汚染食品の実態を明らかにするため,平成16年4月から平成17年3月までに都内で流通していた輸入食品等249試料について放射能汚染実態を調査した.放射能濃度が暫定限度値370Bq/kgを超えるものはなかったが,キノコ9試料から50Bq/kgを超えて検出された.その内訳は生鮮シャンテレル2試料,生鮮ピエ・ド・ムトン,冷凍セップ,乾燥トランペット,冷凍ジロル,乾燥ポルチーニ,乾燥セップ及び生鮮ジロル各1試料であり,それぞれ350,200,120,124,130,120,108,95及び75Bq/kg検出された.
チェルノブイリ原発事故,放射能汚染,輸入食品,調査,セシウム,キノコ,ヨウ化ナトリウム(タリウム)シンチレーション検出器

  

スズキ中の総水銀及びメチル水銀の含有量とセレン分析のための灰化法の検討
 スズキ27検体中の総水銀及びメチル水銀について含有量調査を行ったところ,最高値はそれぞれ,0.22及び0.20ppmと暫定規制値以下であった.さらにセレンのメチル水銀にたいする濃度比は最低,平均値及び最高値,それぞれ,2.8倍,6.3倍及び11.0倍であった.別に,セレンを分析対象とする灰化法として用いられることが多い硝酸−過塩素酸法の作業環境上の危険性を再認識したため,セレン分析を目的とした灰化法についても検討したので併せて報告した.
総水銀,メチル水銀,セレン,スズキ,灰化法

 

化学物質及び自然毒による食中毒等事件例 −平成16年−

 平成16年に発生した化学性食中毒等の事例のうち,1. スイセンをニラと誤認して摂食し,吐き気,発熱,しびれ等の症状を呈した食中毒,2. 界面活性剤が混入したタレにより,舌の刺激,寒気,吐き気等の症状を呈した食中毒,3. カジキマグロのピリ辛漬により,顔面紅潮,発疹,しびれ等の症状を呈したヒスタミンによる食中毒,4. サンマピリ辛揚げのヒスタミンによる食中毒,5. クサウラベニタケをホンシメジと誤認して摂食し,吐き気,おう吐,下痢等の症状を呈した食中毒の5事例について報告した.

化学性食中毒,スイセン属植物,リコリン,界面活性剤,ヒスタミン,マカジキ,サンマ,クサウラベニタケ

 

食品の苦情事例−平成16年度−
 平成16年度に搬入された苦情検体の件数は53件と,平成15年度と同程度であった.発生した苦情原因の内訳は,昨年以上に異物混入が多く,32件と6割を占め,ついで臭いに関するものが10件(19%),味に関するものが7件(13%),変色に関するもの,その他が各2件であった.これらの苦情事例のうち,ビーフン炒め中の甲イカの甲羅,トースト中の竹串,カプセル剤の混入したペットボトル入り緑茶,にがり製剤が付着した豆腐,肉片の混入したドリップ式コーヒーについて,概要,試験内容,結果,考察について紹介する.
食品,苦情,異物,給食,イカ,イカの甲羅,串,緑茶,カプセル,豆腐,にがり,コーヒー,肉,横紋筋

 

東京都多摩地域における食品の苦情事例 −異物および異臭−
 多摩地域の保健所から搬入された苦情食品の中から,異物1事例および異臭2事例,計3事例を報告した.異物については「鶏卵中の紐状異物」を取り上げた.紐状異物は卵殻膜と同じ構造と成分であることが判明し,鶏の生理作用に起因した事例であることが分かった.また,異臭については環境からの酵母の混入による「もろみ酢の異臭」事例及び鶏の鶏舎に木酢液を使ったことによる「卵の殻の薬品臭」事例を紹介し,これらの解明にいたる検査の経緯について報告した.
苦情,異物,異臭,卵殻膜,コラーゲン,もろみ酢,酵母,木酢液,消毒

 

Ⅳ 生活環境に関する調査研究

水性フロアーポリッシュ(ワックス)清掃による室内空気中VOC濃度の変化
 水性フロアーポリッシュは,児童等が学校内で健康被害を受ける原因の一つで,これによる床清掃後の室内空気中VOC濃度を調査した.その結果,清掃時はジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)が4.0〜5.0mg/m3以上に急増した.DEGME及びDEGEEは皮膜形成助剤としてフロアーポリッシュに添加されており,吸入毒性については,ラットにおける上気道の炎症等が報告されている.したがって,作業時は特に十分な換気と保護具の着用を徹底し,暴露量低減に努める必要がある.
フロアーポリッシュ,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,室内空気,揮発性有機化合物

 

一般住宅における半揮発性有機化合物による室内空気汚染 −ホットカーペットより放散される半揮発性有機化合物−

 一般住宅6軒の室内空気汚染を調査した.DBP,DEHP,リン酸トリス(2-クロロエチル)及びリン酸トリス(2-クロロ-1-メチルエチル)が高濃度で検出された.次いで,有機リン酸エステルの発生源と推察されたホットカーペットより放散される物質による室内空気汚染を調査した.平成15年製のものより,眼,鼻,呼吸器等を刺激するTBP,BHT,及びN,N-ジエチル-m-トルアミドが放散され,高濃度(990-5,100ng/m3)で室内空気を汚染した.

室内空気汚染,半揮発性有機化合物,ホットカーペット,リン酸トリ-n-ブチル,リン酸トリス(2-クロロエチル),N,N-ジエチル-m-トルアミド,2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノ−ル,2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン

 

遊泳用プール水中の二酸化塩素,亜塩素酸イオン及び残留塩素測定用携帯型水質計の評価
 二酸化塩素,亜塩素酸イオン及び残留塩素測定に関する簡易測定器の性能を調査した.測定器には携帯型デジタル水質計ハイドロクオント501を用いた.二酸化塩素及び残留塩素は既定の方法で測定できたが,亜塩素酸イオンは操作方法を変更することで精度良く測定できた.二酸化塩素測定用のCLE液は遊離残留塩素が1.5mg/L以上ではその影響を受けたためグリシン溶液に変更した.プール水を測定した結果,本器による測定値はDPD吸光光度法による測定値とよく一致した.本器はプール水中二酸化塩素等の簡易測定器として十分実用できると考えられた.
携帯型水質計,簡易測定器,二酸化塩素,亜塩素酸イオン,残留塩素,DPD吸光光度法,遊泳用プール,プール水

 

市販抗血清に反応しない水試料由来レジオネラ属菌の遺伝子プローブ法による確認と分類
 平成16年度中に検出された計163株のLegionella属菌のうち19株が免疫血清に反応しない株であった.これらをDNAプローブ法による検査キットであるVITを中心にして検討し,1株がL. pneumophila,15株がその他のレジオネラ属菌と判定され,この15株のうち7株について菌種を同定し得た.残り3株は非ジオネラ属菌のMoraxella spp.と同定された.本法は免疫血清に反応しないレジオネラ属菌の迅速な判定に有効と判断された.
レジオネラ属菌,遺伝子プローブ,VIT-レジオネラ,DDHレジオネラ

 

藻類による水及び水辺の変色事例について
 水や水辺の変色は異常現象として苦情や問い合わせ事例となる.本報告では水及び水辺が「赤くなった」という4例の変色現象が藻類の増殖によるものであることを明らかにした.4例の原因藻類と発生場所及び色調は,藍藻1例(公園の池:褐色),紅藻1例(渓流の水際:紅色),緑藻2例(プール水,アスファルトの水溜まり:紅色)であった.これらの現象による健康被害はない.藻類は時間の経過とともに急速に変遷・消滅することがあるので,住民の不安や苦情に答えるためには迅速な試料採取と専門家による検鏡が必要である.
変色現象,藻類,水,水辺,藍藻,紅藻,緑藻

  

東京都における大気中微小粒子(PM2.5)と浮遊粒子状物質の週平均濃度(平成16年度)
 都内の5地点,青梅・立川・小平・大島・新宿において,2004年6月1日から2005年5月31日までにわたり,大気中微小粒子(PM2.5)と浮遊粒子状物質(SPM)の週平均濃度を測定した.32週の全地点における完全データを解析すると,PM2.5・SPMの順に,大島は10.6±4.2・20.2±7.0µg/m3,青梅は15.4±5.0・22.5±7.1µg/m3で,残る3地点は平均が17–18・25–26µg/m3であった.年間の全データを得た新宿では,19.1±6.2・27.9±8.2µg/m3であった.PM2.5/SPM比は,大島0.52に対し残り4地点はすべて0.7に近く,大島と他の4地点では大気汚染の特性が異なることが推察された.
大気中微小粒子,浮遊粒子状物質,週平均濃度,粗大粒子

 

液体クロマトグラフ−タンデム質量分析計による東京都島しょ及び奥多摩地域における水道水中の女性ホルモン類の分析
 LC/MS/MSによるエストロゲン及びその抱合体10化合物の一斉分析を行った.固相抽出はEDS-1を用い酢酸エチル,次いで5mmol/Lトリエチルアミン/メタノール溶液で溶出した.これら画分のうち妨害ピークが認められた酢酸エチル画分はフロリジルカラムを用い,溶出液40%アセトン/ジクロロメタンでクリーンアップを行う方法が回収率がよかった.この一斉分析法は特に抱合体の測定に優れていた.東京都の簡易水道事業体における実態調査においては,いずれも定量下限値未満であった.
液体クロマトグラフタンデム質量分析計,女性ホルモン,水道水,固相抽出,クリーンアップ,実態調査

 

地下水を原水とする専用水道における管理目標設定項目の調査
 多摩地域の地下水を原水とする専用水道を対象に管理目標設定項目の調査を行った.専用水道の浄水30試料中27試料はいずれかの項目が目標値を超えていたが,ヒトの健康に関する項目は検出されないか,または検出されても目標値を超える項目はなかった.浄水で目標値を超過した項目(超過数)は残留塩素(1試料),硬度(5試料),マンガン(4試料),遊離炭酸(1試料),蒸発残留物(7試料),pH(26試料)および腐食性(22試料)であったが,残留塩素を除き,原水でも同様に目標値を超過していたことから,超過の原因は人為的なものではなく,原水である地下水本来の性状によるものと考えられた.
専用水道,多摩地域,地下水,水質

 

水道原水・浄水等における原虫類並びに糞便汚染指標細菌類調査結果(平成15年度,16年度)
 平成15年度と平成16年度に採取した多摩地区及び島しょの浄水場の原水と浄水について,原虫類並びに原虫汚染の指標となる糞便汚染指標細菌を調査した.すべての浄水からは原虫類不検出だった.しかし,表流水を水源とする水道原水からはこれまでと同様に原虫類が検出され,確実な浄水処理を継続する必要性が示された.糞便汚染指標細菌は一部の水源から多く検出され,井戸・湧水の水源で対応が必要と考えられた.北上川水系の水道原水では大腸菌数とクリプトスポリジウム数に弱い相関が見られたが,ジアルジアは指標細菌と相関しなかった.
クリプトスポリジウム,ジアルジア,原虫,水道水,水道原水,表流水,糞便汚染指標細菌

 

都市環境水におけるレジオネラ属菌の生息実態と共存生物調査−平成16年度−
 平成16年度に水質研究科に搬入された水試料469件についてレジオネラ属菌検査を行った.冷却塔水165件中62件,給湯水82件中8件,雑用水69件中11件,温泉浴槽水55件中30件,浴槽水51件中26件及び修景水8件中4件からそれぞれレジオネラが検出され,その他の都市環境水39件は検出限界以下であった.レジオネラと共存生物との関係について調査した結果,アメーバ類がレジオネラの増殖に関与していることが示唆された.それ以外の共存生物では特に原生動物の生息率が高かった.
都市環境水,レジオネラ属菌,冷却塔,給湯,温泉,アメーバ類

 

多摩地域における浴槽水及びプール水からのレジオネラ属菌検出状況(平成15〜16年度)
 東京都は,公衆浴場法,旅館業法に係わる条例及びプール等取締条例を改正し,レジオネラ属菌の基準値を定め,営業施設のレジオネラ症発生防止対策を強化している.多摩地域のこれら施設のレジオネラ属菌調査を行った結果,普通公衆浴場浴槽水5.3%,その他の公衆浴場浴槽水14.0%,旅館浴槽水27.6%,プール水0.4%,ジャグジー水25.7%で基準値以上のレジオネラ属菌が検出された.一方,現行基準は満たしているが,浴槽水の10.6%,プール水の9.3%から1〜9CFU/100mLの本菌が検出された.
レジオネラ属菌,公衆浴場,浴槽水,プール水,一般細菌,大腸菌群,遊離残留塩素

   

Ⅴ 生体影響に関する調査研究

生体試料中の臭素化難燃剤テトラブロモビスフェノールAの簡易分析

 臭素化難燃剤テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の,母体—胎児間分布や乳汁への分泌(排泄)を調査するに先立ち,生体試料中のTBBPA の液クロ分析法および試料調整法を検討した.逆相分析カラム,第一段階0−15分の分析(80% メタノール,1mmol/L 酢酸アンモニウム)及び第二段階15−22分の洗浄(100% メタノール),流速 0.8mL/分の濃度段階溶出法,紫外部検出波長295nm,検出限界1.0ngまで定量可能であった.サンプル調整は,マウス臓器はメタノールホモジネート法,血液はエーテル抽出で,検出限界20ng/gであった.

臭素化難燃剤,テトラブロロモビスフェノールA,液クロ分析,生体内分布,胎盤通過,母乳への分泌,マウス

 

有機リン酸トリエステル類のホルモン様作用 レポータージーンアッセイによる検討
 難燃剤として使用されている有機リン酸トリエステル類は室内空気中で検出され,健康影響が懸念されている.そこで,11種類の有機リン酸トリエステル類(OPT)のアンドロゲン及びエストロゲン様作用について,レポータージーンアッセイを用いて検討した.8種類のOPTがジヒドロテストステロンのルシフェラーゼ発現を阻害し,7種類のOPTが17β-エストラジオールのルシフェラーゼ発現を阻害した.いくつかの有機リン酸トリエステル類は抗アンドロゲン及び/またはエストロゲン様作用を持っていることが示唆された.

有機リン酸トリエステル類,抗アンドロゲン様作用,抗エストロゲン様作用,レポータージーンアッセイ

  

天然食品添加物のヒト乳がん由来 MCF-7細胞の増殖に与える影響

 21種類の天然食品添加物についてヒト乳ガン由来細胞MCF-7の増殖に対する試験を行い,ラック色素が細胞増殖を促進したことからエストロジェン様作用を有することが明らかになった.

天然添加物,内分泌かく乱物質,エストロジェン,ラック色素,MCF-7

  

2,4-di-tert-Butylphenolの卵巣摘出CD1マウスによる子宮肥大試験

 ポリ塩化ビニル製手袋に代わって,使用されているニトリルゴム製手袋から溶出する化学物質のうち2,4-di-tert-butylphenol(BP)のエストロゲン様作用の有無を調べる目的で卵巣摘出マウスを用いた子宮肥大試験を行った.BPを10,50,250mg/kg体重の用量で,3日間経口投与した.BPの各投与群とも体重及び子宮重量には対照群と差はなく,また内膜上皮の高さの計測値も対照群と差はなく,BPは250mg/kg以下の用量では明らかな子宮肥大作用はないものと考えられた.

使い捨て手袋,ニトリル−ブタジェンゴム,溶出物,2,4-ジ-tertブチルフェノール,子宮肥大試験,卵巣摘出マウス

 

2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(紫外線吸収剤)は中間代謝物を介してのエストロゲン様作用を誘導する
 2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(HMB; 紫外線吸収剤/合成樹脂光安定剤)は,ラット肝細胞において2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(DHB),2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(DHMB)の異性体を介してグルクロン酸抱合体に代謝された.また微量代謝物として2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン(THB)とDHMBが生成した.未抱合型の中間代謝物によるエストロゲン様活性をin vitroの実験系で比較したところ,DHMB<THB<DHBの順に作用が強くなったが,親物質HMBには同作用がなかった.これらの結果は,HMBのエストロゲン様活性がO–脱メチル化体及び水酸化反応を介して生じた代謝中間体に起因することを示唆している.
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン,紫外線吸収剤,代謝,エストロゲン様作用,細胞毒性,肝細胞,MCF-7細胞

 

健康食品中に混入を想定した下剤ピコスルファートナトリウムのマウスにおける生体作用の検討
 いわゆる健康食品に混入が想定される医薬品成分や無許可医薬品の生体作用を実験動物で検出し,ヒトへの影響を推察することが可能であるか検討した.一例として,ダイエット食品に下剤として混入が予想されるピコスルファートナトリウムをマウスに経口投与して,症状や行動観察,体重及び摂餌量,肉眼的解剖所見,臓器重量測定,血清生化学的検査を行った.その結果,迅速に生体影響を評価するには,ヒトでの常用量の100倍量を最高濃度と設定し,症状や行動の観察が医薬品や無許可医薬品のヒトへの生体作用を推察するのに重要であることが分かった.
ピコスルファートナトリウム,健康食品,生体作用,マウス

 

中国製ダイエット用健康食品から検出されたN-ニトロソフェンフルラミンの経口投与試験 −病理学的検索−
 中国製ダイエット用健康食品から検出されたN-ニトロソフェンフルラミンを,ICR雄マウスに0.52(ヒトの常用量)〜52mg/kgの投与用量で7日間経口投与し病理学的に検索した.投与群マウスに食欲低下,体重減少及び神経症状は観察されなかった.肝臓重量は投与群でやや高い値を示したが統計的に有意な差ではなかった.肝臓の組織観察では,投与群マウスの中心静脈周囲の肝細胞に軽度な腫大が用量相関性に認められた.リンパ球,好中球及び好酸球の浸潤を伴った肝細胞の壊死は,対照群と投与群に同程度の発現であった.
中国製ダイエット用健康食品,N-ニトロソフェンフルラミン,マウス,経口投与,病理学的検索

 

チャイニーズハムスターを用いたパーラ茶の染色体異常試験
 市販健康茶であるパーラ茶の染色体異常誘発性の有無を検討するため,哺乳動物である,チャイニーズハムスターを用いた染色体試験を行った.パーラ茶の一回投与試験において,6,24,48および72時間目に染色体標本を作成し,染色体分析を行った結果,いずれの投与量,期間においても染色体異常誘発は見られなかった.同様に,1〜8週間の長期投与を行った結果においても,パーラ茶によると思われる染色体異常誘発は見られなかった.これらの結果より,パーラ茶のチャイニーズハムスター骨髄細胞における染色体への影響はないものと判断した.
パーラ茶,染色体分析,チャイニーズハムスター

 

Ⅵ 公衆衛生情報に関する調査研究

日本におけるスペインかぜの精密分析
 人口動態統計と内務省発行の「流行性感冒」を用い,日本におけるスペインかぜについて詳細に分析した.スペインかぜの1回目の流行は1918年8月下旬から9月上旬より始まり,10月上旬には全国に蔓延した.流行の拡大は急速で,11月には患者数,死亡者数とも最大に達した.2回目の流行は1919年10月下旬から始まり,1920年1月末が流行のピークと考えられ,いずれの時も大規模流行の期間は概ねピークの前後4週程度であった.
スペインかぜ,人口動態統計,世代マップ

 

東京都感染症発生動向調査において定点医療機関から報告された性感染症の現状と分析
 東京都感染症発生動向調査により2004年に性感染症定点医療機関(STI定点)から報告された患者報告数をもとに,性感染症6疾患の状況と定点医療機関別の報告状況について検討した.疾患別患者報告数では性器クラミジア感染症,淋菌感染症,性器ヘルペスウイルス感染症の3疾患で全報告数の83.1%を占めた.STI定点の配置を保健所別にみると,基準の4倍のSTI定点を有する保健所がある一方,STI定点のない保健所が9保健所あった(基準が0の保健所を除く).2次保健医療圏別でも基準が0の医療圏を除き2つの医療圏でSTI定点が指定されていなかった.
感染症発生動向調査,定点医療機関,性感染症

  

東京都感染症発生動向調査データの解析 −小児科定点医療機関と咽頭結膜熱−
 東京都感染症発生動向調査における小児科定点医療機関からの総患者報告数と咽頭結膜熱の報告数に関して検討した.2004年の総報告数が年間900人以上の定点は142カ所中24カ所あり,全定点からの総報告数の42%を占めていた.また保健所によって構成する定点の規模にばらつきがあり,咽頭結膜熱の定点当たり報告数の推移にも,季節変動や経年変動の違いがあった.総報告数の多い定点は流行の兆しを敏感に捉える感度のよい定点といえ,逆に少ない定点がごく少数しかない場合は,地域での流行を見逃す危険性があることが示唆された.
感染症発生動向調査,定点把握対象疾患,咽頭結膜熱,小児科定点医療機関

 

Ⅶ 精度管理に関する調査研究 

平成16年度東京都食品衛生検査施設GLP内部点検調査報告
 東京都食品衛生検査施設に対する信頼性確保部門の業務として,平成16年度は健康安全研究センター,市場衛生検査所,芝浦食肉衛生検査所,東京都保健所,産業技術研究所の合計40施設を対象にGLP内部点検を実施した.検査実施施設では各標準作業書の整備状況や検査記録簿及び生データの検証を,収去実施施設では試験品の搬送時間の管理状況と改訂された収去証の使用状況を中心に点検した.全施設のうち,9施設に対して改善措置を要請し,1施設に対して確認点検を実施した.

適正検査基準,内部点検,信頼性確保部門,標準作業書

 

平成16年度東京都衛生検査所精度管理調査におけるリウマチ因子の調査結果
 平成16年度東京都衛生検査所精度管理調査にて,都内の28衛生検査所でのリウマチ因子の検査状況を調査した.検査は9所が免疫比濁法,19所がラテックス凝集法で実施され,前者で2社,後者で5社の試薬が使用されていた.全体の平均値は調製された30及び220U/mlとほぼ一致していた.しかし,方法間での差もあり,さらに同じ方法においても用いる試薬の製造会社による差のあることが確認された.本調査により,RF検査の標準化が急務であることが認められた.

リウマチ因子(RF),東京都衛生検査所,免疫比濁法, ラテックス凝集法

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